秋の叙勲 旭日小綬章 塚越寛さん(74)
伊那食品工業(株)会長
3日に発表された秋の叙勲。伊那ケーブルテレビ放送エリア内では、4人が授章しました。
授章者の喜びの声を、シリーズでお伝えします。
初日の4日は、旭日小綬章を授章した、伊那食品工業(株)会長の塚越寛さんです。
寒天の用途拡大、製造の近代化などに功績があったとして旭日小綬章を授章した塚越寛さんです。
1958年に、伊那食品工業に入社、83年に社長に就任。2005年から会長を務めています。
年輪のように、少しずつだが確実に成長する「年輪経営」を行い、創業以来48年間、増収、増益の記録を達成しました。
授章について、塚越さんは次のように話します。「社員と一緒に喜びたい気持ちでいっぱい。授章は、私一人でできることではないので社員一人ひとりの努力の結果という風にとらえています。当社に「伊那食ファミリー」という言葉があるように、家族経営を旨としてやっていますので、余計にそういう思いが強いですね。」
若い頃を振り返って、塚越さんは次のように話しました。「学生時代に、肺結核で、3年の闘病生活をしましたから、人生のどん底をなめているわけです。就職した時の伊那食品工業は、日本一汚くて貧乏な会社でした。今は、きれいだからと、当社の掃除が素晴らしいと、見学に来てくださるようになった。更には、こうして表彰されるようになった。つまりは末広がりできています。私としては昔を思い出すと、本当に感慨深いですね。人間というのは、スタート地点では、苦労があったほうがいいんじゃないでしょうか。最低からの出発というのは、むしろ喜ぶべきことで、人生の若いうちは、なるべく最低のほうがいいんじゃないでしょうかね。」
会社経営の根幹については、「最も根幹なものは、会社のファン作りだと思います。そういう人が一人でも多くなれば、会社は順調に行くだろうと。そのために会社は限りなく美しくなくてはならないし、ホスピタリティも良くなければならない。会社のあるべき姿もそこから出てくる。みんなが好きと言ってくださる会社になるために、では何をするかという答えがそこから出てくる。」と話していました。
また、東京に本社を移転しようと思ったことはないのかという問いに次のように答えました。「国家のあるべき姿として、東京に集中することは良くないというのは私の持論なんですよ。震災のときでも、インフラでも、全てにわたって過疎と過密が存在するような国は良くない。田舎でもこんないいことができるよ、というのを立証しなければいけないという思いがあります。都会の人が来たときに『広々としていいですね』『緑があっていいですね』と言われる会社をつくろうというので、つくったのがかんてんぱぱガーデンなんです。」
「創業5年位は別として、それ以外は会社としての不況は一度もないです。いつでも夢いっぱい、という会社ですから、それも評価の対象になっているかもしれないですね」