南アルプス国立公園指定50周年記念特集④
2008年に撮影された南アルプス仙丈ケ岳の馬の背の様子です。 山肌が見えてしまっています。 原因は、ニホンジカが植物を食べてしまったから。 ニホンジカの食害から高山植物を守ろうと、南アルプスを構成する伊那市などの4市町村や3つの地方事務所、信州大学農学部などにより2007年に南アルプス食害対策協議会が発足しました。 南アルプスの植物を守ろうと、奔走し続けている人たちがいます。 信州大学農学部食料生産科学科の竹田謙一准教授。 南アルプス食害対策協議会発足当時から、その一員として研究を続けています。 竹田准教授は、「南アルプスにはもともとニホンジカがたくさん生息していた。それで里に下りられなくなったニホンジカが、上に上がってきた」と話します。 協議会では、2008年から、仙丈ケ岳の馬の背のお花畑に防護柵を設置しています。 2009年には、ボランティアを含め44人が参加しました。 シカの侵入を防ぎ、食べられてしまった花を復元させるためです。 防護柵を張った直後のお花畑です。 その2年後のお花畑です。 シナノキンバイや、ミヤマキンポウゲなどの貴重な植物が戻ってきました。 竹田准教授は、「柵の中と外では植物の量が全く違う。残念ながら、多様な植物が一度に戻ってはいないが、1年に1種類ほどのペースで戻ってきている」と話しています。 しかし、根本的な対策には、ニホンジカの個体数を減らすことが必要です。 協議会では、猟友会に委託して個体数調整を行っています。 南信森林管理署の発表によりますと、昨年度は南アルプスの国有林で1,771頭のニホンジカが捕獲されました。 竹田准教授は、「これからは、被害にあっている場所で捕獲をしていくことが必要になってくる」と話します。 長谷猟友会の北原幸彦会長。 地元の猟友会として、ニホンジカの捕獲に取り組んでいます。 狩猟歴60年のベテランです。 北原さんは、「罠にいっぱいかかってればいいと思うけれど、かわいそうだなあと思って処理してくる」と話していました。 長谷猟友会は、山梨県側の猟友会と協力して、南アルプスでニホンジカの捕獲を行っています。 長野県側は、2011年に初めて高山帯での捕獲に踏み出しました。 標高2000メートルの大平山荘付近でくくりわなを設置しました。 また、昨年度は、環境省が初めて高山帯で銃による捕獲実験を行いました。 北原さんは、「一人では守れない。みなさんの協力が必要なこと」と話しています。 竹田准教授は、「高山帯でできること、里でできることをそれぞれやっていくことが求められる」と話していました。 ニホンジカの食害から、貴重な高山植物を守るための地道な取り組みが続きます。