南アルプス国立公園指定50周年記念特集⑥
3,000メートル級連なる南アルプス
旧長谷村公民館は、南アルプスの紹介や登山事故防止を目的に、国立公園に指定された昭和39年に八ミリ映画「南アへの道」を制作しました。 3,000メートル級の山がつらなる南アルプス国立公園は、甲斐駒・鳳凰山系、白峰山系、赤石山系の3つの大きな山系により構成された日本を代表する山岳公園です。 公園の範囲は山梨県、長野県、静岡県の3県にまたがり、東西はおよそ15km 南北は50kmに及び総面積は35,000haあります。 南北に長いこの山脈は、富士山に次いで日本高い北岳をはじめ、仙丈ケ岳、塩見岳など3,000メートル級の山が10、2,500メートル以上は36あります。 南アルプスの森林限界より上の高山帯にはお花畑が分布していて、キタダケソウ、タカネビランジなどといった固有種など貴重な植物が群生しています。 また、ニホンカモシカなど30種類以上の哺乳類が確認され、なかでもライチョウの生息地としては世界で最も南に位置する場所で、重要な地域となっています。 南アルプスの多くの山はもともと海の底にあった地層でできていて、中央構造線を中心とした長野県内では、日本列島の土台を作ったプレートが作り出した貴重な地質を観察する事ができ、平成20年に日本ジオパークに認定されました。 国内に30か所ある国立公園。 南アルプスは昭和39年6月1日全国で23番目に指定されました。 伊那市長谷総合支所の中山晶計総合支所長。 旧長谷村役場職員だった中山さんに当時の事を伺いました。 中山さんは「指定以前の昭和36年頃から登山道の整備や山小屋修復など、国立公園指定に伴い増加が予想される登山者の受け入れの準備が役場を中心に行われていた」と話ます。 国立公園指定により、全国的に名前が知られるようになった南アルプス。年間に訪れる人は、年々増加傾向にあり、ここ10年は約60万人となっています。 昭和55年 南アルプス林道が開設し北沢峠まで行けるようになると登山が楽しめる山へとなりました。 登山客が集中する夏山シーズンは、高山植物の踏みあらしや、排泄物による環境悪化が問題となっています。 また、気候変動による高山植物の衰退、ニホンジカによる食害など課題は少なくありません。 伊那市などは、増加する登山者に対して環境負荷軽減に向け登山客に持ち帰る事ができる携帯トイレの普及を目指しています。 公園を管理する南アルプス自然保護官の中村仁さんは「自然の変化を細やかにとらえながら、みんながこの環境を次の世代にいかに残していくか行動し、活動していくことで、次の50年に南アルプスの自然が残せる」と話します。 国立公園指定から50年の節目を迎えた南アルプス 先人たちが残してくれたこの自然を、次の50年に向け守り伝えていく事が私たちの役割かもしれません。