観光産業の今後の展望は
「アルプスがふたつ映えるまち」をキャッチフレーズに掲げる駒ケ根市は豊かな自然と歴史を核とした観光文化都市を目指している。しかし、観光目的で市を訪れる利用客の数は1992年の170万人をピークに年々緩やかな減少傾向にあり、近年は約130万縲・40万人前後で推移する頭打ちの状態が続いている。
伸び悩んでいる観光産業の現状を打開するきっかけにしようと市は05年、もてなしのまちづくり計画(観光振興基本計画)を策定した。製造業、農業、商業と並んで市の重要な産業となっている観光の今後の展望についてアンケートやワークショップなどを通じて探ったものだが、具体的な提案はいくつか示されているものの、将来に向けての明確な方向性を導き出すまでには至っていない。
市が擁する観光資源には中央アルプス駒ケ岳、家族旅行村、光前寺、早太郎温泉などのほか、キャンプ場、スキー場やゴルフ場などがある。いずれもそこそこの集客力を持ってはいるが、関東や中京など大都市圏での知名度はさほど高いとはいえず、さらなる集客アップのためには観光客を強力に引きつけるアピール戦略の充実が必須の課題だ。
権兵衛トンネルの開通で木曽谷とのアクセスルートが新たに開けることにより、利用客の増加が望める竏窒ニ期待する向きもあるが一方では、楽観的過ぎるとその効果を疑問視する人も多い。駒ケ根駅前商店街のある店主は「車で来た観光客はインターチェンジから上(西)に行くだけでこっちには来ない。うちには何の恩恵もないよ」とあきらめともいえる不満の声を漏らす。竜東地区に客を呼び込もうと建設されたシルクミュージアム、ふるさとの家などの集客力も今のところ期待を上回っているとは言い難い。
市町村合併が白紙となったことで市の財源見通しはさらに厳しいものになり、新たに大規模な観光資源の開発に乗り出す余力はありそうもない。ならばこそ、行政主導型でなく、地域を巻き込んだ民間参画型の新たな発想の登場が待望されている。地元が潤うためにはただ観光客を呼び集めるだけではなく、いかに財布のひもを緩めさせ、消費させるかが求められる。魅力的な特産品などの開発も含めた市民挙げての活動が今後の駒ケ根観光の行方を左右するだろう。