尺八大師範
南箕輪村北殿
両角忠幸(粋山)さん
「尺八は自分の出す音色、音程は全部自分で作らないといけない。これを出せるようになるのがおもしろい」
小学生でダブルベース、中学生でフルート、高校生でクラリネット、大学生で尺八。ずっと音楽に親しんできたが、大学のクラブ活動でプロに師事した尺八が趣味として残った。
諏訪市出身。仕事で南箕輪村に移り住み14年になる。「邦楽グループうつぎ」に誘われ尺八の演奏を再スタート。これが縁で伊那市の県伊那文化会館の名物演奏会「邦楽サラダ」に第2回から参加。10縲・5回まで実行委員長を務め、06年1月15日公演の「邦楽サラダ16th コラボレーション」も実行委員になっている。
邦楽サラダは、プロのゲスト演奏に加え、地元の邦楽家がプロと一緒に演奏。伊那文化会館が音響、照明、演出をする。「ゲストとの交流や皆で一緒に舞台を作り上げる楽しさが魅力」。公演まで3週間とせまり、「今はがむしゃらに練習。1月に、本番に向け仕上がっていくところがおもしろい」という。
メーン活動に位置付ける邦楽サラダ。公演を終えると2、3月は反省、音源確認、写真現像に時間を費やし、6縲・月は翌年の曲やゲストの選定、9月に練習が始まる。週2回の練習は1月に週4回に増え、邦楽サラダ一色の生活になる。
雪が降って当然の季節の公演だが、毎年800人近くが訪れる。「最低20回まではやりたい」と夢を抱いている。
諏訪三曲協会に所属し、県内外の演奏会にも出演する。今年は「国民文化祭ふくい2005邦楽の祭典」(福井県敦賀市)に県代表で参加。演奏曲は「信濃の抒情」。前日のリハーサルが思わしくなく、当日朝、海岸で仲間と尺八で一番低い音「乙のロ」を吹く練習をし息を整えて出演。結果は「最高の仕上がり」。今年最も印象に残る演奏会になった。
筝(こと)、三絃、尺八の奏者3人だけの古典の会「指月の調べ」では、諏訪市文化財指定庭園「指月庵」で庭園を背に演奏。生の音がわずか1メートル先の客に音質、音程、リズム、強弱の全てが聞こえる。「120%くらいの技量が求められるので一番緊張するけど、自分の勉強になる」と年1、2回出演。県内で年1回、持ち回りで演奏会をする尺八だけの「竹竹の会」も、来年6月に村公演を計画中だ。
活動は幅広く、村内2小学校での演奏会のほか、村文化団体「尺八・筝の会」でも活動。太鼓グループ「鼓龍」にも参加し、子どもの太鼓グループ「CoCo龍」で育成にも関わる。今年は南部小学校で篠笛作りから演奏までの指導もした。
2年前、村の大泉地区に伝承されしばらく途絶えていた「大泉ばやし」を有志で復元した。おはやしの篠笛を子どもに吹かせたい-との思いがあり、子どもが地域から伝承するものの一つとしての活用を模索する。
「外から村に来た人間のほうが、伝承してほしいと感じるのかもしれない。伝統文化を取り上げることに理解を頂きたい」。尺八を主軸に邦楽と深く関わる中で、伝承の大切さを考えている。