高校改革プラン(1)
9月、県教育委員会のたたき台では統廃合の対象外だった諏訪地域でも、削減1校とすることを決定した第3通学区高校改革プラン推進委員会(池上昭雄委員長)は、そこから急速に具体的再編案の検討を進めてきた。当初は「全日制高校削減2校」を突きつけられた上伊那だったが、削減校数が1となり、廃止する箕輪工業への多部制・単位制設置が決定した今、全日制高校存続の願いは叶わなかったものの「地域に高校を残す」という意味で、得た意味は大きい。
しかし定時制高校については、多部制・単位制を箕工に設置する代わりに、箕輪工業、上伊那農業の両定時制が廃止される。
上伊那の場合、現在の定時制高校へ通う生徒らの受け皿となりえる制度を、多部制・単位制の中に充実させる必要があるが、定時制高校関係者や生徒には「多部制・単位制は定時制高校の代替にはならない」とする声もあり、こうした人たちの懸念材料を払拭できるよう、内容の充実が図られなければ、不登校経験のある生徒など、なんらかの問題を抱えた一部の生徒の、進路選択の幅を制限してしまう危険性もある。
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諏訪地域でも、削減1校とすることを決めた第3推進委は、地域の実情に配慮した案を作成するため、各地区の委員で構成する小委員会を編成。それぞれに対し、地域試案の提案を求めた。
試案を示すことに難色を示した下伊那や、地域の動揺が大きい諏訪地域に比べ上伊那は、比較的落ち着いて地域案を受け止めたといえる。
上伊那小委員会が提案したのは▼箕輪工業の全日制・定時制を廃止▼その上で同校を多部制・単位制に転換すること竏秩B同校への多部制・単位制設置に合わせて「上伊那農業定時制の廃止もやむをえず」という方向も示した。魅力ある高校づくりに配慮した結果であることを強調したが、他地域に比べ県教委案と一致する部分が多かった。
廃止・転換の方向性が示された箕輪工業関係者でさえ、比較的冷静に
上伊那案を受け止めたのは、多部性・単位制への転換が、全日制過程に近い高校を地域で存続させていくための唯一の手段だと認識したためだろう。
箕輪町長や箕輪工業PTA、同窓会でつくる「箕輪工業高校の未来を育てる会」(会長・平澤豊満箕輪町町長)の方向転換は、そんな思いを最もよく表している。
当初、未来を育てる会は、箕輪工業全日制の存続を求めて署名活動をしたり嘆願書提出をしてきた。しかし、上伊那小委員会は改めて地域案の中で同校の廃止と、多部制・単位制への転換を求めた。廃止の方向性が濃厚となる一方で、未来を育てる会は、多部性・単位制高校の研究会や視察を実施。その中で参加者たちは「多部性・単位制は限りなく全日制に近い学校にもなり得る」という認識を持つ。12月に開いた会合で、会として多部性・単位制への共通の認識を固め「県教委案をそのまま受け入れるのではなく、地域に即した魅力ある多部性・単位制にする」という条件付で、多部制・単位制の設置を積極的に求める姿勢へ方向転換した。地域に高校を残すことを一義的な目的とした決断だった。
多部性・単位制
多部性・単位制は、午前部、午後部、夜間部など1日のうちで学ぶ時間帯を選択することができ、履修科目も、必要単位を満たすように生徒自身がカリキュラムを組む。午前部の生徒が午後部の授業を受けるなど、自分の所属する部以外の単位も選択できるため、卒業まで4年を要する従来の定時制に比べ、3年で卒業することも可能となる。しかし、クラスという枠がなく大規模化する傾向にあるため「小規模で家庭的な定時制を望む生徒たちの受け皿にはなり得ない」とする声も聞かれる。
多部性・単位制につき県教育委員会は「4通学区で1校ずつ配置することが望ましい」として、独立校舎をもった1校を設置することを提案。それは削減枠と別で設けられており、多部性・単位制を学区内に1校設置すれば学校数は1校プラスとなる。
第3推進委は「総合学科と共に、それぞれ1校を学区内に設置する方向で検討する」として話し合いを進めてきた。
削減に伴う影響を最小限に抑えたいという思いもあり、下伊那などからも多部性・単位制を望む強い要望があったが、設置については多くの生徒が通えることなどにも配慮することを求めており、地理的条件を備えた上伊那への配置が委員会で決定した。
県教委は当面、多部性・単位制を地区内に2校配置する予定はないとしている。