祝・伊那 - 木曽権兵衛峠道路2月開通
木曽側7市町村首長に聞く【上】
新年明けましておめでとう
トンネルも開きましておめでとう
06年2月、伊那と木曽を結ぶ権兵衛峠道路が開通する。地図の上では境界を接しながら、峻厳な中央アルプスに隔てられ、何か遠い地域のように感じてきた木曽。そこに住む人々が、本年からすぐに行き来のできる隣人になる。
いったい、どんな町や村があり、どんな人が住んでいるのか?木曽郡の6町村と、権兵衛トンネルの反対側出口がある塩尻市(旧楢川村)の首長、合計7人に聞いた。
塩尻は木曽の入口、伊那の入口
塩尻市長 小口利幸さん(54)
塩尻市は05年4月の楢川村との合併によって、伊那と地図の上での隣人になりました。本年2月にトンネルが開いて、名実ともに隣人になります。
木曽には国道19号線しかなく、事故の時には交通が完全に止まるなど苦労がありました。権兵衛道路ができて、命綱が2本になったという思いです。この交通の面と、木曽の森林や漆器、塩尻・桔梗ケ原のブドウやワイン、それに伊那の製造業や豊かな農産物などが相互交流できるようになるという経済の面と、2つの面で大きな転機になるでしょう。
伊那側から言うと権兵衛トンネルの出口は塩尻市になります。そのまま奈良井川に沿って鳥居トンネルの北側に出る道路も整備していますから、ぜひ、遊びに来てください。
街道で一番栄華を誇った奈良井宿、漆器職人の街平沢、それに木曽の入口にあたる贄川宿竏窒ヌこも素晴らしい観光スポットです。桔梗ケ原のブドウとワインにも力を入れています。トンネルが開いたら、この観光資源と伊那の温泉や高遠の桜をセットにして、協力して集客に力を入れられたら良いですね。
実は、現在でも塩尻の人はけっこう良く辰野のかやぶきの館や、伊那のみはらしの湯に温泉行脚に行っているんですよ。これからはそういう人がもっと増えるでしょうね。
塩尻は位置的に、木曽、伊那、諏訪、安曇野への入口にあたるので、それらの広域の橋渡しになれるよう、頑張っていきたいと思っています。
木曽の「祖」をもって木祖と名付ける
木祖村長 栗屋徳也さん(57)
木祖村は木曽川の最源流部。木曽川の水がうまれる「源流の里」です。昔の人が、木曽の「祖」だということで、木祖村と名付けたのです。
わが村は04年6月に住民意向調査を通じて自主自立の道を選びました。人口約3500人、中山間地の村ですから、財政難や少子高齢化などの悩みを抱えていますが、特徴ある村、個性ある村として自力で生きていこうと頑張っています。
産業の1つの柱は木材木工業。木材関係の仕事はどこでも厳しい状況ですが、油絵のキャンバス生産で全国の50縲・0%のシェアを誇るという特色があり、これを生かして行こうとしています。伝統工芸、お六櫛・ねずこ下駄・サワラの桶などにも力を入れています。
農業は、中京・関西圏でブランドとして認められてきた「おんたけ白菜」の栽培、木曽牛の名で知られる肉牛の肥育などです。
あとは観光ですが、国道19号から15分のところにあるやぶはら高原スキー場は素晴らしいところなので、ぜひ、伊那の皆さんにも滑りに来て欲しいですね。春から秋にかけても、味噌川ダム周辺の水の道、水木沢天然林を歩く森の道、鳥居峠を歩く峠の道竏窒ネど「源流の里」にふさわしい豊かな自然が満喫できます。味噌川ダムは愛知県の名古屋市や日進市などの水がめで、その縁でこの地域との交流も進めています。
権兵衛道路の開通で、若者の雇用の場が広がると思うので、ぜひ、伊那の皆さんと協力して、信州の山里からの素晴らしい発信をしていきたいですね。
歴史と伝統文化の街。観光振興に大きな期待
木曽町長 田中勝已さん(68)
05年11月1日付で、木曽福島町・三岳村・日義村・開田村の旧4町村が新設合併し、新木曽町が誕生しました。トンネル開通で伊那とは30分で結ばれるので、ぜひ協力して両地域の交流と振興を進めたいと思います。
最も期待することは首都圏からの観光客の増加です。従来は70%が中京・関西圏からの客でしたが、権兵衛が開通すれば新宿から3時間半。大幅増を期待しています。
中仙道きっての要所木曽福島と、源義仲で名高い日義を中心に、歴史と伝統文化が誇りです。福島は、昭和の大火で昔の街並みこそ焼失しましたが、関所資料館や山村代官屋敷など史跡ばかりです。そうした観光資源を生かすために、「まちづくり木曽福島」という組織を作り、100人のボランティアを募って各種取り組みを進めています。
日義には義仲館はじめ縁りの名所旧跡がいたるところにあり、歴史・文化には事欠きません。これに開田・三岳に広がる御嶽山麓の素晴らしい高原。日本有数の景勝地です。冬のスキー、グリーンシーズンの行楽と、今でも素晴らしいが、これからまだまだ開発できると思います。
「日本のふるさと木曽町」をキャッチフレーズに、観光立地を目指し、農業・林業・地場産業を結合していこうと考えています。
トンネルが開通すると、木曽の人が伊那に就職してそのまま住み着いてしまうのではないかという不安もありますが、要は町づくり。伊那の皆さんとも協力してお互いの地域づくり・町づくりを進められたらと思います。
「ひのきの里」上松町をよろしく
上松町長 田上正男さん(53)
2月4日には懸案の国道361号権兵衛トンネルが開通し、伊那地域と木曽地域が飛躍的に近くなることは誠に喜ばしい限りです。
上松町は中央アルプス木曽駒ケ岳のふもとに位置し、日本三大美林の1つでもある赤沢自然休養林をはじめ、寝覚ノ床、木曽の桟ならびに小野の滝などの風光明媚な観光地を有する自然と共生する町であります。
銘木「木曽ひのき」の産地で、平成17年6月には第62回伊勢神宮式年遷宮にともなう御杣始祭、並びに御神木祭が盛大に行われました。伊勢神宮には内宮と外宮があり、20年に1回式年遷宮が行われます。その時に新たに神殿が建てられますが、その用材が当地から斬り出されます。その奉祝行事が上松町の伝統文化として引き継がれているのです。
このことに象徴されるように、上松町は歴史と伝統に育まれた木材工業の町です。町内には1万5780ヘクタールの森林が広がり、そのうち1万917ヘクタールは国有林です。
また自動車関連のプレスや電子部品などの先端技術産業も基幹産業の1つで、こちらの方は、土地柄、愛知県のメーカーとのつながりが強いです。
伊那は、空が広く、農地も肥沃で、魅力溢れる地域だと思っていました。今までは木曽駒ケ岳で往来が阻まれていましたが、権兵衛トンネルの開通で、本当にごく身近な隣人になります。経済的・文化的な交流を深め、ともに発展できればと思っております。