祝・伊那 - 木曽権兵衛峠道路2月開通
木曽側7市町村首長に聞く【下】
新年明けましておめでとう
トンネルも開きましておめでとう
06年2月、伊那と木曽を結ぶ権兵衛峠道路が開通する。木曽郡の6町村と、権兵衛トンネルの反対側出口がある塩尻市(旧楢川村)の首長、合計7人に聞いた。その2回目。
御岳山麓の奥深い自然と伝統を味わって
王滝村長 小林正美さん(68)
権兵衛道路の開通は、観光立地を目指す木曽にとって大きな転機になるでしょう。
特に王滝村の場合、伊那の皆さんもご存知と思うが、おんたけスキー場の再生という大きな課題がある。昭和38年に村民が村の発展のために自力で作ったスキー場ですが、平成4縲・年には60万人いた利用客が、現在は20万人を割っています。なんとしてもお客さんに来てもらわないといけない。今までのお客さんの大半は中京・関西・静岡なので、トンネル開通で首都圏からの誘客に徹底して力を入れようと思っています。
夏は、御岳山という山岳信仰の地を抱えていますから、その奥深い歴史と伝統を生かす観光も大事だ。とにかく一度来ていただければ分かるが、それはそれは素晴らしい景観ですよ。信仰の有無に関わらず、登山や森林浴などに足を運んでいただきたいですね。
権兵衛道路が開くと、伊那が通勤圏になるという声もあるが、小さな村だから人口流出は困る。むしろ交通の便が良くなるのだから、この自然環境の良い村に工場を誘致できないか竏窒ニ思うんですよ。インターネットもあるし、それに向いている産業があるはずだ。伊那の企業で何かありませんか?
村の牧尾ダムは、愛知県知多半島の水がめで、飲料水・農業用水・工業用水として使われています。それで、その地域の人々との交流が前からあるが、伊那の人は気がやさしくて、案外、もっと木曽の人間と合うかもしれない。広いお付き合いをしたいですね。
注、小林正美王滝村長は05年12月28日に辞意を表明しました。任期は06年1月末日までです。
製造業・木材木工業の交流と発展を
大桑村長 長岡始さん(68)
大桑村は中央アルプスをはさんで飯島町に隣り合わせています。木曽でもかなり南の方ですから、国道361号開通についても北の方とはやや住民の意識に温度差があるのは事実です。しかし、私は、経済産業の面で大きな影響があると思う。特に、人・もの・技術の交流に期待を寄せています。
大桑村には石川島汎用機械さんの工場があります。自動車のターボエンジンを作っていますが、じつは世界最大の規模です。410人もの従業員がおり、村にとって大きな存在です。ところで、06年の夏頃までに、辰野町の同社工場にもターボエンジン製造部門が新設されることが決まっています。361号が、まさに大桑村と辰野町の工場をつなぐ重要な道路になる。頻繁に、人・もの・技術が行き来するようになるわけで、これは村にとっては大きな影響を与えるでしょう。
村のもう1つの基幹産業である木材木工業の発展にとっても重要なことです。木材産業は全体としては斜陽ですが、大桑村では「木曽のひのき」を使った住宅産業に力を入れており、361号の開通は、伊那の方に市場を開拓する絶好の機会になる。製材屋から大工さんまでをまとめて、大桑村木造住宅推進協議会というのを作っているのですが、素晴らしい素材と伝統技術を活かした村の産業が大きく発展できるかもしれないと期待しています。
とにかく、伊那と木曽が産業で結びつくことが重要で、そこに力を入れたいと考えています。
中ア周回ルートで木曽竏宙ノ那の魅力を強く
南木曽町長 宮川正光さん(57)
木曽の南端、妻籠宿のある町です。山口村が岐阜県になってしまったので、本当に最南端です。伊那の人は妻籠は知っているだろうけど、南木曽と言ってもイメージがわかないのではないですか?
南木曽の人は良く高遠の桜を見に行くけれど、伊那の人は余り南木曽には来ない。権兵衛が開くのを機会に、ぜひ足を伸ばしてみて欲しいですね。
これまでの南木曽までの観光ルートは、圧倒的に昼神温泉経由。あるいは妻籠を見て昼神温泉に泊るとかですね。年間70縲・0万人が訪れますが、ほとんどが中京・関西・東京のお客さんです。権兵衛トンネルが開いても、このルートはあまり変らないと見ています。
むしろ面白いのは、中央アルプスを周回するルートができること。特に、花とか紅葉とかは、木曽でも南北で1ヶ月くらい時期がずれる。伊那もルートに入るとかなり長い期間にわたって、春は花、秋は紅葉が楽しめる。それに各地に点在する温泉をセットすれば、集客力も上がると思っています。
南木曽町としては、重要伝統建造物群に指摘されている妻籠宿が観光立地の柱。街並みだけで90軒がありますが、街並みだけでなく地域全体が指定されているので、近代的な建物は建てられない。統制委員会を作って、住民の足並みをそろえています。それに、町内の各地区に花桃街道・桜街道・ツツジ街道・水仙街道などを作り、花で人々を迎える取り組みも強めています。 同じく花のきれいな伊那と連携して、木曽竏宙ノ那の魅力をアピールしたいですね。
伊那竏猪リ曽連絡道路の概要
開通する伊那竏猪リ曽権兵衛峠道路は、伊那市与地から塩尻市の姥神トンネル入口までの全長約9・9キロ。姥神トンネルから木曽町日義の国道19号までの姥神峠道路は既に供用されており、権兵衛峠道路が開通すれば、伊那市から木曽町までを延長約33キロ・45分でつなぐ伊那竏猪リ曽連絡道路の大半が出来上がる。さらに整備が進むと、所用時間は約30分に縮まる。
伊那竏猪リ曽連絡道路は自動車専用道路並みの機能も持つ地域高規格道路。80年代初頭から幹線道路整備計画調査が始まり、92年からアクセス道路の工事着手。94年に地域高規格道路計画路線に指定された。権兵衛トンネルは98年9月の起工式以来5年の歳月をかけて貫通し、さらに2年をかけて整備された。
中央アルプスを穿(うが)つトンネル工事は、もろい地質と大量の地下水のために困難を極め、当初は予定していなかった水抜坑を掘削するなど工事計画を変更して完成させた。本坑・水抜坑合わせて4回の切羽崩落にも見舞われている。