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2211/(金)

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新春・経済対談
06年、伊那谷商工業の行方を探る【中】

【出席者】
■伊那商工会議所会頭 向山公人さん
■駒ヶ根商工会議所会頭 渋谷敦士さん
□司会・毛賀沢明宏

新春・経済対談<br>06年、伊那谷商工業の行方を探る【中】

 06年、伊那谷の産業・経済はどのように展開するか?上伊那経済をリードする伊那と駒ヶ根の商工会議所の会頭に話し合ってもらった。その2回目。

新伊那市誕生竏柱o済界の評価と課題は?

新春・経済対談<br>06年、伊那谷商工業の行方を探る【中】

司会 これまで(前号)のお話で、上伊那にも製造業を中心に「景気回復の兆し」が出てきており、06年はさらに希望が見えること。その中で、権兵衛トンネル道路の開通をインパクトにして、伊那と木曽の一体的経済圏としての発展の道が探られるべきであることが述べられてきたと思います。ところで、06年のもう1つの地域の大きな変化として、伊那市・高遠町・長谷村の広域合併による新伊那市の誕生があります。地域の経済界としてこれをどう見ておられるか?また経済界から考える課題は何か?いかがでしょうか。
向山 今回の3市町村合併は、嫌が上でも現伊那市がその中心になります。これに桜と観光の高遠町と、広大な山を抱えた長谷村が一緒になるわけです。でも、行政区画が1つになっても、何もすべてを同じようにする必要はないでしょう。高遠ゾーン、長谷ゾーンと特徴ある「街づくり」を進め、それを有機的に連携させていくという発想が重要だと思います。これは、新伊那市に限らず、上伊那全体の広域的発展に関しても同じだと思います。3月31日に合併するわけですが、こうした有機的連携を保った新市づくりには、首長や議員の強力なリーダーシップが必要であり、市民がぜひ適任者を選んで欲しいという気持ちです。
渋谷 経済人としては、新伊那市の誕生は歓迎すべきことです。過去のいきさつはいろいろあるが、国が「三位一体」改革を進める中で、どうやれば地方は生き残っていけるか?そこの問題で、伊那市・高遠町・長谷村は大人の選択をした。そういう意味で、良い合併だと思いますね。今まで違ったものが1つになるのだから、それぞれの歴史・個性を活かした新伊那市にならなければいけない。それぞれの産業・文化・教育を共有できるということは素晴らしいことです。
司会 産業・経済的にはどういうメリットが考えられますか?
渋谷 産業開発や企業誘致が広域的に計画・遂行できるということでしょう。企業を誘致する場合でも、いろいろな候補地ができる。例えば長谷の環境の良いところに進出したいという企業なども、新伊那市の大きくなった力で積極的に迎え入れることができる。ああいう場所に大企業が出てくることも充分考えられます。このことは行政サイドから見れば課税対象が増えるということですから、財政的支えにつながっていくでしょう。
向山 合併したのは自治体、つまり行政ですよね。行政は、市町村の境界で責任分野の線引きがはっきりしていた。ここからこっちは高遠町の責任、あっちは伊那市の責任というように。でも、これだけ生活圏・経済圏が広域化している中では、この行政の線引きが、経済・産業にマイナス作用を与えていたことも多かったわけです。例えば、伊那の会社が新工場を作るのに、高遠だったら余計な手続きがかかるとか。だから、行政の線引きが変るという変化は、産業界の活気付けになる。いや産業界の動きを加速するようになって欲しいわけです。いずれにせよ「合併してよかったな」と言われる方向に進めなければいけないでしょうね。

合併する・しないで自治体間格差は出るか?

新春・経済対談<br>06年、伊那谷商工業の行方を探る【中】

司会 合併したところとしなかったところでどんな違いが出てくるでしょうか?
渋谷 長期的にはかなり格差が広がると思います。「自立」という言葉は聞こえが良いが、合併しなかった自治体は「三位一体」改革の中で、〈人・もの・カネ〉の削減しか選ぶ道がない。縮小均衡の考え方ですが、これでは早晩限界に行き着かざるをえないでしょう。不必要なものは削らなければいけないが、一方では、力を生み出し・力をつけていくことが必要です。グローバル化した競争社会の中では、自治体といえどもこれに耐えられる体格・体力を持たなければいけないわけで、新伊那市の誕生は、地域を生み出す広域的経済力発展のきっかけになると思います。
向山 私は、県政、とくに田中知事の「自立」についての考え方が間違っていたと思うんですよ。知事は合併しないところだけを「自立」志向と評価して、後押しするようなことをしたが、真剣に「自立」の道を探っていないのに、なりゆきで合併しなかった自治体もあれば、自分たちで「自立」してやっていくという強い気持ちを持ってよそと合併した自治体もある。合併は手段なのだから、何のために・何を目指しているのかという内容面を抜きにして、合併するかしないかで「自立」かどうかと線引きしたのは誤りですよ。要は、自分たちの地域をどのように作って行くかということだと思いますね。

地場産業活性化のための企業誘致の現状は?

新春・経済対談<br>06年、伊那谷商工業の行方を探る【中】

司会 いま触れられた「三位一体」改革の中で、合併するにせよしないにせよ、各自治体の財政的基盤の確立が焦眉の課題になっている思います。そのカンフル剤として、どの市町村も企業誘致に力を入れていますが、その現状と展望はどうでしょうか?
渋谷 駒ヶ根市は05年にトーハツが移転・操業を始めました。船外機のエンジンが中心ですが、岡谷市からトーハツマリンの消防ポンプエンジン部門が全部移ってくると、従業員数で約400人、派遣がさらに150人いますから、大きな影響を与えます。年商では160億円くらいですかね。現在は一部がバスで岡谷から通ってきていますが、マンションに住んだり、住宅を建てて移ったりする人が徐々に増えてきている。税収増や商業の活性化につながるでしょう。地場の企業に下請けの仕事も出し始めてもらっているので、経済効果もしだいに広がると思います。合併できない自治体としては、なんとしても課税対象を増やさないといけないですからね。
向山 駒ヶ根市はいろいろと企業を誘致していて、伊那市も負けてはいられないという感じですが、トーハツのほかにどんな企業を誘致されたんですか?
渋谷 宇宙航空産業の平和産業が駒ヶ根インターの西側に来ました。それから、12月には新光機器の駒ヶ根工場が竣工し、いよいよ操業します。溶接用電極で国内シェアの35%を誇るトップ企業です。またトヨセットというオフィス家具やストーブをつくる会社も、愛知県からそっくり移ってくることになっています。230人ほどの従業員数で、年商が150億円位です。プレス関連の下請けの仕事も地場の企業に出てくると思います。やはり誘致用の用地があったこと、それに伊南バイパスが開通して運搬の便が良くなることなどが良い結果につながった。商工会議所としては、下請け企業用に相談窓口を作って、円滑に仕事が回るよう努力して行きたいと思っています。
司会 伊那市の方はいかがでしょうか?
向山 伊那市も小坂市長を先頭に、工場立地に熱心に取組んでいます。企業受入れのための補助システムの整備を進めていますが、これは県内でも先駆的なものになると思います。日本電算サンキョーも整備を進めているし、NECも新工場を建設します。企業誘致を進めるときに問題になるのは道路網整備で、権兵衛トンネルのような地域間をつなぐ幹線道路も重要なのだが、地域内の産業道路の整備も大きなウェイトを占めてくる。まぁ、伊那市の場合は、合併も終えて、いよいよ新たな企業誘致に挑戦する年になるという感じではないでしょうか。(続く)

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