上伊那で直まき進む
作業軽減や刈り遅れ防止への効果が期待される水稲の「直(じか)まき」が、上伊那で着々と進んでいる。農業者が高齢化し、国の新方針に伴い集落・団体の協業が進む今後、作業受託にも有用な直まきは、一層普及していくと考えられる。
直まきは、上伊那農業協同組合(JA上伊那)や県農業改良普及センターなどが99年ころから本格的な普及を進めてきた。02年度には約70ヘクタール、05年度には約250ヘクタールまで拡大。現在は作付け全体の約5%を占めるまでになった。面積は県内の10広域行政地域の中でも最大で、関係農業機関は将来的に25縲・0%まで普及したいと考えている。
直まきのメリットは、育苗、苗運びなどの作業がないため、労働負担を軽減できること。また、苗植えより収穫期が遅くなるため、1品種を大規模栽培する場合に苗と直まきを組み合わせれば、収穫時期をずらすことができる。個々人で機械を保有する無駄を省き、作業の効率化を図ることも目的だった。そのため、地区営農組合などの作業受託組織が中心となり、導入が進んだ。
直まきの場合、苗植えよりも収穫量が1割程度減少する。しかし、その分を金額にすると、苗の植え付け作業にかかる費用の割増分と同じ程度。採算は十分取れるという。
除草剤の散布時期など、技術的な問題は8割方解決してきたが、今後の課題は、低温の影響を防ぎ、安定的な生育を実現させることだ。直まきは苗の場合より低温の影響を受けやすい。種をまいた後に低温が続くと発芽しにくくなる。高冷地の場合、種まきが遅すぎると生育期間が十分に確保できなくなる危険性も出てくる。
関係農業機関などは現在、早生品種の導入などで高冷地対策を講じている。また、発芽を容易にするための技術開発にも積極的で、加温処理した種子もみの発芽実験なども進めている。
安定的な生育方法が確立すれば、普及は一層進むものと考えられる。