企業の昼食支えた組合 60年の歴史に幕
上伊那地域の工場や事務所に昼食用の弁当を配達している伊那市工場福祉事業協同組合、通称「伊那べんとう」が、今月末で解散しおよそ60年の歴史に幕を下ろします。 26日は、注文を受けた弁当2000食が車に積み込まれ、上伊那地域のおよそ250社に向けて出発していきました。 伊那べんとうとして知られる「伊那市工場福祉事業協同組合」は、昭和37年に伊那市西町に設立されました。 高度経済成長により地域で電子部品工業などが急成長する中、昼食を供給する仕組みがなかったことから、地元企業の経営者らが立ち上げました。 事業所からの注文を受けて昼食用の弁当を配達するほか、春の高校伊那駅伝や伊那まつりのスタッフ用の弁当なども供給しています。 施設の老朽化が進み、現状の設備では継続が難しいこと、また、コンビニエンスストアなどが増え、昼食を供給するという当初の目的を達成したことから、22日に開かれた理事会で解散が決まりました。 矢澤克明専務は「なくなってしまうのは残念だが、事業所の皆さんの昼を支えるという当初の目的は達成できた。派手ではないが、健康のことを考えた弁当でみなさんの昼を支えたという自負はある」と話していました。 この日は、昭和43年から35年間勤めた元社員の中村憲雄さんが訪れ、写真を見ながら当時を懐かしんでいました。 中村さんは「忙しい時は1日に6,000食を配っていた。少し遅れてしまったりすると授業員の皆さんが待ち焦がれた様子で迎えてくれた。組合の役目はしっかり果たせたのではないかと思う」と話していました。
「ともに歩んできた」地元企業からは感謝の声
弁当は昼前には注文のあった企業に届けられます。 伊那市上の原に本社を置く、電子部品製造の㈱赤羽電具製作所は、これまで40年以上弁当を注文してきました。 この日のメニューは、ビーフメンチカツに餃子のピリ辛あん、インゲンの胡麻和えと餅巾着煮です。 石川賢一営業部長は「値段の安さが良かったし、毎日違う料理を味わえるのも楽しみだった。昼に午後のエネルギーを注入する―という感じでした。これまで共に歩んでこれたな、という思い」と話していました。 伊那市工場福祉事業協同組合は、30日をもって全ての業務を終了する予定です。 上伊那地域の中小企業の昼食を支えてきた組合は、惜しまれつつもその役目を終え、60年の歴史に幕を下ろします。