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伊那市西箕輪
松岡みどりさん

羽広の獅子舞でお囃子(はやし)を演奏する

伊那市西箕輪<br>松岡みどりさん

 雌雄2匹の獅子が共に舞う「羽広の獅子舞」は、400年の歴史を持ち、地元の男たちが継承してきた。その男たちに混じって紅一点、3年前からお囃子の笛を吹いている。
 ◇ ◇
 東京都出身。もともと好きだった植物のことを神奈川県の大学で学んだ後、植物に携わる職に就いた。その中で樹木への関心が強くなり「どうせ学ぶなら自然が豊かなところで」と、信州大学農学部に編入。その時から羽広に下宿するようになる。
 はじめは獅子舞があることも知らなかった。しかし、時々笛の音が聞こえてきた。「なんだろう」と、畑作りのアドバイスなどをしてくれる近所の男性にそれとなく尋ねた。「その時に質問した三ツ橋さん(屋号)は、獅子舞のお囃子をしている人で『練習だけで本番には出られないかもしれない。男ばっかりだけどやってみるか』と誘ってくれたんです」。
 ◇ ◇
 出身地には伝統的なものがあまり残っていなかったため、地域に根ざしたものへのあこがれが強かった。地域に密着した生活を送ろう竏秩B伊那へ来て決意した。南アルプスを縦走したり、諏訪太鼓を習ったり。自分の畑でカブを栽培し、「羽広かぶ」のつけ方を大家さんに習ったりもした。
 「なんでそんなに必死になってきたかって今になって思うと、私は地域の風景の一部になりたかったのかなって。地元との関わりを通して、地元風景の中にいる自分を確認していたんだと思うんです」

伊那市西箕輪<br>松岡みどりさん

 
 獅子舞を支える人たちは皆、仕事を持っているため、練習は本番前の1週間に集中して行う。しかし、その間で覚えなくてはならないことは山のようにあった。笛の音は、音階にはない微妙な音もある。そうした音は、人の音を聞いて覚える。熟練者になるほどコロコロと変化する素晴らしい音色を放つが、それを覚えるのはかなり難しい。また、最初は息の使い方も分からず音が続かなかった。教えてくれる人たちからは「歴史を守っていこう」という熱意や気迫もひしひしと伝わってきた。とにかくどんどん練習して覚えるしかない竏秩Bついていくことに精一杯だった。
 しかし、それにこたえるかのように、本番で吹くことを許された。女性が参加するのは初めてだという。どんなやり取りがあったかは測りしれない。しかし、一生懸命やっている自分を受け入れてくれる地域の人たちと出会えたことがありがたい。
 「3年目になってようやく吹けるようになってきました。でも、やっぱりまだまだ。きっと最終的な到達点があるものじゃなく、年々熟練していくものなんだなって。いつまで続けられるのかわからない。だからこそ、1年1年が大切なんです」。

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