【特集 権兵衛開通】木曽高速は山を越えるか?(3)
どうなる?伊那側交通事情(3)
幻の道・ス竏窒ンはらし誘客構想はどこへ?
権兵衛トンネル工事が始まった直後の2000年、伊那市は、県道与地竏鋳C野線とは別に、西箕輪に市が開設した体験型農業観光施設みはらしファームに抜ける道路開設を計画していた。権兵衛トンネルを利用する観光客を、市が観光の目玉とする施設に誘うことが目的だった。
だが、この計画は経ヶ岳周辺の自然環境・生活環境の保全を主張する地元住民の反対に合い、棚に上がった。・ス幻の道・スとなったのだ。
地元住民に説明しないまま、林道「みはらし線」などと名称までつけて県に要請、長野県地域森林計画に盛り込ませるなどしたことが、住民の反発に油を注いだ。経ヶ岳山ろくには絶滅危惧種のオオタカが営巣し、ハチクマやクマタカなど貴重な猛きん類の姿も確認され、「観光客誘致よりも豊かな自然を守ろう」との気運が高まった。
この住民の動きは、その後も権兵衛開通にともなう乱開発に歯止めをかけるための、西箕輪地区の景観保護条例の締結や、自己用広告物ガイドライン制定へと引き継がれた。
では、みはらしファームへの誘客方法・誘導ルート計画は、その後どのように見直しが掛けられてきたのか?そもそもトンネル開通による観光客の増加をあてこんで西箕輪の地に作られた施設。トンネルと結ぶ道路計画を変更した以上、その位置付けにまで戻って再考するべきとの声も上がったが、そうした議論はどこまで煮詰まったのだろうか?
伊那市は06年1月の臨時議会で、県道与地辰野線以東の権兵衛道路沿いに、8億円以上をかけた「伊那市の出入り口にふさわしい地域情報発信交流施設」を建設するのが適当とする、コンサルタント会社に依頼した調査結果を報告した。そこには「観光情報の発信」という視点から「既存観光地」との関係が触れられているが、車でわずか5分の地に立つみはらしファームとの共存の方法などには言及されていない。
権兵衛開通にともなう地域振興と、自然・生活環境の保全のあり方は、今後もますます重要な意味を持つだろう。・ス幻の道・スをめぐる2000年当時の市と住民との議論は、その先駆的な位置を占めるものとなろうが、その議論の道筋は、まだ定かではない。
=毛賀沢明宏=