長衛の藪沢小屋
「山はどこにも行かねえ」
伊那谷から望むことができる南アルプスには北岳や仙丈ケ岳、東駒ケ岳、鋸岳など3000メートル級の山々がそびえます。
伊那市と南アルプス市の県境に位置する峠にはテント場と3つの山小屋があります。
そのうちの一つ長衛小屋の上空からドローンを使って峠を見てみましょう。
木々のすき間の平らな場所に小屋が建てられテントが張られている
様子がよくわかります。
峠にある山小屋の一つ長衛小屋は2013年に建替えられました。
2階には56人分の宿泊スペースが確保されています。
1階には1930年昭和5年にこの小屋を建設した竹澤長衛の
写真やゆかりの品が飾られています。
長衛は1889年明治22年に今の黒河内村に生まれました。
山案内や狩猟を生業とし、山小屋建設や登山道整備に尽力しました。
当時、登山が一般大衆化し南アルプスにも多くの登山者が訪れるようになりました。
それにともない山で遭難し命を落とす人を目の当たりにした長衛は
安全に登山ができるよう山小屋建設を決意したといいます。
「やい、誰え。この雨の中、山にへえってくるやつわぁ!
何でこんな日に無理して登ってきた。こん小屋があったもんで
よかったけえど無かったら おめえさん遭難しとるとこえ。
まさか仙丈は はじめてかぇ まあず どうにもならんなえ
近頃はおめえさんみてえにあぶなっかしいのが山に へえるもんで どうにもならねえ
いいかえ 山ではなあ 何がおきるかわからねえ
決して甘く見ちゃあならん」
「やい、誰え。この雨の中、山にへえってくるやつわぁ!
何でこんな日に無理して登ってきた!こん小屋があったもんで
よかったけえど。やえ!またおめえさんかえ
あれほど雨の日はくんなちゅうたに。わからん人だなえ。
おめえさんみたいな人がいるもんで、山にゃ小屋が必要なんじゃ。
わかったかえ おめえさま よう 覚えとかし。
山はどこへも行きゃしねえ。
雨がやんだら また来るさ。」