画家・伊那アルプス美術館館主
垣内カツアキさん
「描きたい」情熱を絵筆に込めて
「絵を描ける喜びは年々増すばかり。描きたい気持ちは今のほうが強い」
箕輪町富田の伊那アルプス美術館が97年の開館から10周年を迎えた。冬期休館を終え20日から、意欲的に制作した新作の油彩画40点を紹介している。
「マンネリ打破」と意を決して取り組んだ『名画ポスターシリーズ』は、マチス、セザンヌ、ルノー、ピカソらの名画ポスターを画面の一部にモチーフの一つとして取り入れた。「シャガール『誕生日』のポスターのある静物」「セザンヌなどのポスターのある静物」と題した作品で、ポスターはあくまで静物の一部で脇役だが、ポスターを入れることでどんな効果が生まれるか、果物や花などほかのモチーフとどのようにマッチできるか-などのテーマに挑んだ。
長い間構想を練っていた今回のシリーズ。「見る人に、垣内の絵のイメージがある程度できているのが怖い。変化しないといけない」。そんな思いもあった。「少しずつ中身を深め、ますます不思議な雰囲気、詩情がある絵ができれば。まだまだ境地が100%出てないですけど、自分の考えている雰囲気が表現できればいいなと思う」という。
1953年12月、高校3年生のとき、独学で学んだ油絵の10号と20号の作品2点を持ち、母と中川紀元宅を訪ねた。あれから50年以上が過ぎた。
20歳で第8回長野県展に、25歳で第5回一陽展(東京都美術館)に初入選し、その後もさまざまな賞を受賞。現在は、一陽会員、ル・サロンフランス芸術家協会永久会員。ひまわり絵画教室を主宰する。
昨年、長年の夢だった画集を発刊。古稀・画道50周年・画集発行を記念した「垣内カツアキ近作展」を伊那市の県伊那文化会館で開いた。近作の中から自選した色彩豊かで詩情あふれる大作が人々の心をひきつけた。
「絵は描きたいから描く。幼児のときにクレヨンで描いた、50数年前に油絵を始めた、そのときと全く同じ無心ですね。絵に没頭できる幸せ。夢中になれるって素晴らしい」
節目を機に一層、創作意欲が増している。「自然から何かを学び筆を取る」テーマは変わることなく、スケッチで訪れた自然の空気を吸収し、アトリエで残像をキャンバスにぶつける。独自のスタイルで作り上げる世界。「そこにどういうリアリティがあるか。『絵は心を映す鏡』という。超現実的でいい」という。
「科学技術が進歩した今、人間の心の世界を追求して創造に結び付けるのはますます大事。淡々飄々と絵に向いたいと思っても俗人の私にはできないけれど、子どものように純粋に物を見る目を養って、魅力的な絵を描きたい」と熱く語る。
(村上裕子)