伊南行政組合消防本部北消防署長
米山覚さん
4月1日付の異動で新たに署長の任に就いた。モットーとして「人の和」を挙げる。「和のない人間関係は駄目ですね。消防は命令系統で動いているが、和がないと現場に出た時に上司や同僚の間のどこかに溝ができる。それでは消防の使命は果たせないですからね」
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高校卒業後、飯島農協(当時)に就職したが「どうも仕事が性に合わない」と数年で退職。辞めるに際して当ては何もなかったが、知人の誘いもあり、取りあえずタクシーの運転手をしながら将来への道を探ることにした。
1年ほどたったある日、たまたま町の助役が客として乗ってきた。内心(これはいい機会だ)と思い、唐突だったが思い切って尋ねてみた。「役場職員の中途採用の予定はありませんか?」駄目でもともと竏窒ニ思っていたが、思いのほかあっさりと答えが返ってきた。「今度採用試験があるよ」
思わぬタイミングに喜び、早速準備勉強に取り組んで受験。首尾よく合格して職員に採用された。運命の計らいか、最初に配属された部署が消防担当。その後、署に派遣され、本格的に消防士として働くことになった。
初任科訓練を受けるため、県消防学校に入校。厳しい救助の訓練でロープが足に食い込み、ひどいあざができた。休日に家に帰った時、母親がそのあざを見て顔をしかめた。「その時は何も言わなかったが、後になって『大変な仕事をするんだなあと思って心配だった』と言っていましたね」
見様見まねで夢中で仕事に取り組んだが、慣れない仕事は思ったよりずっと大変だった。「でも中途で入った私に対し、周りの皆さんはいやな顔もせず、親身になって助けてくれた。今でも本当に感謝しています」
一貫して警防畑を歩き、火災のほか水害や工事現場の事故、土石流災害による死亡事故など数え切れないほどの現場に出動してきた。「仕事として取り組んでいるためか、大出血を見ても気後れしたり気持ちが悪くなったりするようなことはなかったですね」
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「『泥棒は命までは奪わないが火事は何もかも持っていく』と昔からいうが、今は昔と違って火事の質も変化してきているんですよ」住宅は防災構造になったが、火災の時にはかえって火元が見つけにくいという問題があり、加えて恐ろしい有毒ガスが出るため、呼吸器は欠かせない。
「同じ現場は二つとない。だからこそ経験がものを言うんです。現場では冷静さを失いやすいが、若い人たちにはそこをよく自覚して行動してほしいと思いますね」
(白鳥文男)