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注文靴「銀河工房」
北川哲生さん(50)

注文靴「銀河工房」<br>北川哲生さん(50)

 「生まれて初めてです! こんなにぴったり合う靴は」既製の靴が足に合わずに苦しみ続け、一生我慢するしかない竏窒ニあきらめていた人たちが思わず感動の言葉を口にする。
 「ヒールの高い靴や不必要につま先のとがった靴は作らない。気持ち良く歩けない靴には興味がないんです」歩くための靴、履き心地の良い靴、足が喜ぶ靴作りに徹底的にこだわり、採寸から仕上げまですべての工程を一人でこなす。精魂込めてこつこつと、注文主の足に合った世界に1足だけの靴を作り続ける。
 「足は形も体重のかかり方も千差万別で、一人として同じ人はいません。左と右でもかなり違う。大量生産の靴が合うはずはないんですね」
 靴作りは足の各部の寸法を正確に測ることから始まる。足の形は幅広や甲高などのほか、指先のパターンも親指が長い『エジプト型』、人差し指が長い『ギリシャ型』など実にさまざま。
 体重のかかり方も重要な要素だ。測定紙に乗ってもらうと、強く圧力がかかる部分には色がより濃く表れるので、偏平足なども一目瞭然=写真(1)。
 これらのデータを基に樹脂製の基本型に革を貼るなどして注文主の足の形を忠実に再現した型を作り=写真(2)、これに合わせてサンプルの中から選んでもらった好みの革を使って希望のデザインに仕上げる。時間と手間のかかる職人の仕事だ。
 柔らかい靴は足になじむ良い靴と一般的にいわれるが実は違う。「長距離を歩くと分かるが、ただ柔らかいだけの靴は疲れる。足には関節がなくて動かない所もあるのだから、その部分は柔らかくする必要がない。ポイントを押さえて作ることが大切なんです」
 靴の一部としてのインソール(中敷き)も併せて製作する。「多くの日本人が体重が外側にかかる不合理な歩き方をしているんです。インソールで外側を高くすると体重が内側にかかるようになり、O(オー)脚の人も自然で無理のない歩き方に近づきます」
 ◇ ◇
 茨城県に生まれ、東京近郊で育った。高校から大学時代にかけてロックに夢中になり、ギターを弾き、作曲も手掛けた。一時はプロのミュージシャンとして生活していたが「自然が好きで、地に足のついた生活がしたかった」ため、一人でもできる物作りを竏窒ニパン職人に転身。3年やったが「売れ残ったパンを毎日捨てなきゃならないのが忍びなくて」悩んでいた。そんなある日、新聞に靴職人の紹介記事を見つけ、これだ、とひらめいて弟子入り。「厳しい人でしたがよく分かるように教えてくれた。初めての靴作りは楽しくて充実感がありました」
 修行を終え、山の近くに住みたくて伊那市に移住。その後、駒ケ根市に移って赤穂小学校前に現在の工房を構えた。
 「弟子入りしたころは、靴って意外と簡単に作れるんだな竏窒ニいう印象を持ちました。でも作れば作るほど難しさを感じる。靴という物が生活の中でどうやってできてきて、どうして今の形になってきたか竏秩Bそんなことを考えるとこれでいいのかなって思う。でも靴を履いて喜んでくれているお客さんの顔を見ると本当にやりがいを感じるし、心の底からうれしくなります」
 価格は1足3万2千円から。納品は状況により1縲・カ月。問い合わせは銀河工房(TEL81・4089)へ。
 (白鳥文男)

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