龍水社跡地から化学物質
駒ケ根市赤穂町四区の龍水社赤穂工場跡地の井戸水と土壌の一部から環境基準を超えるトリクロロエチレンが検出されていたことが28日までに分かった。同地への企業誘致に伴い04年10月、当時の所有者だった上伊那農業協同組合(JA上伊那)が敷地内に3つある井戸の水質調査を行ったところ、1つの井戸の水から1リットル当たり0・44ミリグラムを検出。国が定めた環境基準の0・03ミリグラムを大きく超えていることが分かり、同年11月に駒ケ根市に報告したが、市はこれまで住民に対し、一切説明してこなかった。理由について中原正純市長は28日開いた議会全員協議会で「企業誘致の事情もあり、報告が遅れた。分かった時点で住民に直ちに知らせなかったことは反省している」と述べた。市とJA上伊那は同日夜、周辺住民に対しての説明会を行って謝罪し、理解と協力を求めた。
04年の調査で基準を超えるトリクロロエチレンが検出されたことを受けてJA上伊那は06年1月から3月にかけてさらに数回の詳しい調査を行い、地下水から最高8・9ミリグラム(1リットル当たり)土壌から最高1・4ミリグラム(同)のトリクロロエチレンを検出した。
この間、05年12月にはオフィス家具、石油ストーブなどの大手製造企業トヨセット(本社愛知県安城市、富岡靖明社長)が新工場建設用地として同地を取得したが、市によると同社には契約前の交渉段階で事情を説明し、06年秋に見込んでいる工場棟着工までに土地の浄化対策を取ることで了解を得ているという。JA上伊那は、今後責任を持って土の入れ替えなどの浄化対策を行うとしている。
トリクロロエチレンはドライクリーニングの染み抜き、金属・機械の洗浄などの用途に使われる有機塩素系溶剤の一種。人体に対しては皮膚や粘膜への刺激、頭痛や倦怠感などの症状を生じさせ、高濃度の暴露では死亡することもある。