わらべうた指導
箕輪町
千葉芳子さん
わらべうたはファンタジー
「わらべうたは、空よりも広く海よりも深いファンタジーの世界。音楽だけでなく、人をはぐくみ心の栄養になる」
自宅で音楽教室を開き、ピアノとソルフェージュを教える。ピアノ導入の前に歌うことが大切-と、年少からわらべうたを取り入れている。
わらべうたは、子ども自身が作り、何百年という伝承のなかで磨かれてきたもの。“声”という楽器があればどこでも歌える。方言や今では無くなった言葉も多くあるが、子どもはその言葉に興味を示し響きを楽しんで歌うという。
東邦音楽大学の教授が音楽の先生を対象に開いたわらべうたの講座に、恩師に誘われて参加。月2回東京に通い、100曲以上を専門的に学んだ。
受講後、年少児5、6人に音楽レッスンを始めた。「わらべうたはただ歌うだけでなく遊びがついているので、ものすごく自然に子どもの中に入っていく」。子どもたちは楽しみながら常に頭を使い、遊びのルールを守りつつ発展させる。協調性が生まれ、集中力が育ち、想像力が豊かになる。音楽も体の中に入る。何年もやるうちに、「これはすごいすてきな音楽教育だ」と思うようになった。
音階はミレドラソのみ。「日本人の血の中にある音だから自然に歌える。日本語がきれいだし日本の文化、伝承。0歳から大人まで魅力のあるものだと思う。何も知らないで習いに行ったけど、本当に勉強してよかった」
さわったり、手をにぎったり、体を使って遊ぶわらべうた。ピアノを教えるだけではできない子どもとの関係が生まれ、深い付き合いができるという。
司書の依頼を受け、南箕輪村図書館の「ちいさなおはなしむら」でも親子にわらべうたを教え、4年になる。
現代は静けさがなく、自然の音に耳を傾けることが少ない。そのため静かな環境を作ることを心がけ、子どもにだけ聞こえる自然な優しい小さな声で歌ってほしいと話す。
母と子が真正面で向かい合い、目と目を合わせてわらべうたを歌ってあげる。「0歳児がすごくいい反応をする。そしてそれを見るお母さんが柔らかい反応になる。大人も子どもの笑顔にいやされる」。母子の変化を見てきて「わらべうたのすごさを実感。初めは感動ばかりだった」。
最近は、司書やボランティア活動をしている人が、ちいさなおはなしむらを見学に来るようになった。今年4月からは箕輪町公民館と子どもセンターが始めた講座「わらべうた」でも指導している。
「わらべうたを始めて『音楽ってこんなに楽しいんだ』と思った。もちろん音楽が好きでピアノの先生になったんだけど、歌をうたうことがこんなに楽しいと思ったのは、わらべうたを始めてから。清潔に歌うことのすばらしさも実感した」
わらべうたの良さがお母さんたちの間でじわりじわりと広まっている。「どうしてこんなすばらしいものが廃れてしまったのだろうと思う。だから、良さが認識されてきていることがうれしい」。指導者が育つことも願いながら、たくさんの人に知ってもらいたい-と温かくやさしい声でわらべうたを歌う。(村上裕子)