シカゴでインディペンデント映画制作に取り組む
伊那市美篶出身
梶野純子さん(32)
映画には、多くの人の心を動かしたり、何かを訴えたりすることができると信じているんです竏秩B
米国シカゴで、大手映画会社に依存しないで制作・配給する“インディペンデント映画”を撮影している。ハリウッド映画などと異なり、監督の感性や個性がそのまま表れた作品が多く、最近は注目を集めている。
現在は、沖縄の米軍基地問題を扱った作品の制作準備をしている。日本では常に関心を集める深刻なテーマだが、米国では問題の存在すら知らない人も多い。深刻なテーマを形にするまではかなり時間がかかった。現地、沖縄では「そんな映画作らないほうがいいんじゃないか」と言う声もあったが、「作ってほしい」という強い要望もあった。そんな人たちの思いが制作を後押しした。
「映画を通して、多くの人がこの問題を知ることができる。認知されなければ、問題はずっと起こってしまうと思うんです」
高校を卒業後、日本の大学へと進学したが「何かやりたいものを見つけたい」と1年ちょっとで中退。シカゴへと渡った。そこで出会ったのがインディペンデント映画だった。
ある日の大学の講義に、インディペンデント映画の監督が招かれた。その監督の作品は、“おじさんと子ども”をテーマとした静かな物語だったが、登場人物の人間性をありのままに表現したストーリーは、制作した監督の人柄や誠実さまで映し出していた。自分もこんな作品を撮りたい竏秩B強い思いが込み上げ、すぐにその監督に弟子入りを申し出た。「でも『まずその前に英語を勉強した方がいいんじゃないか』って言われたんです」と笑う。
しかし、熱心な訴えに折れた監督は「映画も英語も勉強できてちょうどいい」と、日本語が分かる別の監督を紹介してくれた。ほぼ押しかけの状態だったが、その監督のもとへ弟子入りを果たした。
しかし、もともと弟子入りという制度のない米国では、自分から欲して動かなければやれることもない。英語もろくに話せない中、できることといったら雑用程度だったが、とにかく自分にできることをやろうと必死だった。それでも、そこに出入りする映画関係者と接触し、さまざまな話ができることは何よりも楽しかった。
「何もないところから1本の映画をつくるにはすごくエネルギーが必要だから、一人ひとりが真剣でなければできない。でも、映画を作るということはたくさんの人の心を分けてもらうことなんだって実感しました」。
弟子入りの傍ら、大学でも映画製作の技術を学び、どこかで撮影があるという話を聞けば、どこへでも飛んでいく毎日だった。
「壁に当たることは毎日ですよ。でも、映画は死ぬまで作っていきたい。それしかできないですから」