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294/(月)

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アンサンブル伊那のアウトドア班担当
南箕輪村沢尻
井田直也さん(26)

アンサンブル伊那のアウトドア班担当<br>南箕輪村沢尻<br>井田直也さん(26)

 臨時職員として勤めた上田養護学校での任期3年を終え、昨年5月にオープンした知的障害者の通所授産施設「アンサンブル伊那」に就職した。担当はアウトドア班。利用者と共に試行錯誤を繰り返しながら、無農薬野菜の栽培、薪作り、ウサギの飼育、焼き芋販売など、さまざまな事業に取り組んでいる。
 「学校にいた時は、職員も生徒も守られていた。ここでは自分たちが考えてさまざまなものを作り上げていかなければならないので、厳しさはあります。でも、日々成長していく利用者さんを間近で見ていられるのは嬉しい」と語る。

アンサンブル伊那のアウトドア班担当<br>南箕輪村沢尻<br>井田直也さん(26)

 新潟県出身。長野県内の大学へ進学し、福祉を専攻したが、児童福祉が中心だったため、障害者福祉に携わることはほとんどなかった。就職活動をしていた時、就職課から上田養護学校の話を持ちかけられた。それまで全く関係してこなかった世界だったため、悩みもしたが「これも経験」と飛び込んだ。
 養護学校では、寄宿舎で生活する生徒たちの身の回りの支援に当たった。最初は、自分の伝えたいことがうまく伝わらず、戸惑いを感じることもあったが、一生懸命に生きる子どもたちの姿に惹かれ「自分ができることは何かないか」と考えるようになる。
 3年目に担当した生徒は、重度の行動障害がある自閉症の生徒だった。体を動かすだけでもパニックを起してしまうため、音楽会、運動会などの行事ごとに参加することもなかった。ストレスからかご飯すら食べてくれない時もあり、日々を悩んだ。「でも、その子との出会ったことで、自分一人の世界では解決できない問題があることを知ることができました。だからこそ周囲のみんなでサポートしていく必要があることも」。自分では解決できない問題は、医療機関や外部の相談センターなどして、方向性を見出した。
 そんな3年目を経て迎えた離任式は、一生忘れられない。一切の行事に参加したことのなかったその生徒が、離任する自分の後を追って、会場に現れた。何を話すわけでもなかったが、式が終了し、退場しようとすると、再び自分の後をついてきた。
 その子にとってそれは、自分がいなくなることへのせつなさを伝える最大の自己表現だった。ぼろぼろと溢れる涙が止まらなかった。「本当にやっていて良かった」実感した。
 ◇ ◇
 クッキー作り、カフェレストランでの接客、野菜づくりなど、利用者それぞれが仕事を持ちながら、生活を共にするアンサンブルでは、自分の力で生活することへの価値を見出し、更なる向上心をもって日々に励む利用者の姿がある。優しい雰囲気の流れるカフェレストラン、本格的な味わいのクッキーなどは、地元リピーターも出てきた。
 「今はまだ、色んなことを模索している段階。でも、やれることをやっていきたいと思っているんです」

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