上島泰芳(74)・上島松男さん(67)、伊那市美篶
2人展を開催
今年4月、兄弟で初めて、飯島町七久保の道の駅、花の里いいじまで2人展を開催。2人は「日本でただ1人、それぞれのオリジナル作品を広々と飾り、多くの人に鑑賞していただいた」と成功を喜ぶ。
上島泰芳さんは井月や一茶の俳句や芭蕉の「奥の細道」「信濃の国」、各宗派の本尊と般若心経を記した銘竹彫刻を並べた。手製本会社美篶堂代表で、紙の断面で絵を描く、上島松男さんは「雲上の富士」「赤富士」や抽象画など断面アートのほか、美篶堂が製本した書籍など合わせて300点余展示した。
◇◇
泰芳さんは20代の頃から、祖父、上島不六さんの見よう見真似で、小刀で竹に絵や字を彫って楽しんでいたが、定年退職後、本格的に銘竹彫刻に道に。「竹は固く、滑りやすい。彫刻刀以外で何か彫れる工具はないものか」と研究し、ドリルで彫ることを思いつき試した。しかし、ドリル彫りには危険はつきもの「滑ってけがをし、親指をなくした。痛さよりも、この後、ドリルが握れるどうかの方が心配だった。退院後、執念でけがを治し、復帰した」という。
数多い作品の中で、特に苦労したのは「歴代横綱の一覧」。「独特の相撲字で太字のため、ドリルが使えず、半年ががりで制作し、国技館相撲博物館に寄贈した」。
「竹の良さは温かみ、割った瞬間の快感。苦労した作品が完成し、依頼主に喜ばれることが1番うれしい」。
◇◇
製本業を営み様々な色紙を扱う松男さんは、色とりどりの裁断屑を利用し、何かできないかと考え、最初はきれいな色紙を重ねたグラデーションを額に入れて「グラデーションアート」として楽しんでいた。10年前、東京銀座で開いた製本展に、10数点を並べたところ、著名なデザイナーの目に止まり「断裁アート」と名付けてもらった。以後、さらに発展させ、絵や写真を参考にして「屋久杉」「赤富士」「雲上の富士」など具象的作品、抽象的作品も手掛ける。 「1枚1枚の紙の美しさが何10枚も重なり、絵の具でも出させない、新鮮な色が生まれる。今後はマーブル技術によるアートづくりにも挑戦したい」と意欲を。
2人は「本格的な合同展ができるとは、夢にも思わなかった。多くの人が来場していただき、うれしかった」と口をそろえる(大口国江)