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俳優
黒河内雅子さん

伊那市高遠町出身
劇団前進座

俳優<br>黒河内雅子さん

 6月22日に駒ケ根市文化会館で行われる前進座公演『銃口』(三浦綾子原作)に愛国教師・杉野恵子役で出演する。
 「原作には出てこない役です。でも3年前の初演から同じ役を演じているので思い入れは深い。戦争をテーマにした重い作品と思われがちですが、先生と生徒のやり取りの中にはほのぼのする情景や笑いのある場面などもあります。実は地元での子ども向けではない一般公演は初めて。秋には伊那市で『出雲阿国』の公演もあって、今まで全然なかったのに急に地元公演が2回。誰に会うか分からないのでバカはできないですね(笑)」
 ◇ ◇
 「俳優を志したのにはこれというきっかけはないんです。流れに乗っているうちにここに行き着いたという感じ」
 仙醸で知られる高遠の造り酒屋に生まれた。高校生の時、駒ケ根で劇団四季の『ジーザス・クライスト・スーパースター』を見て感動。
 「女優ってテレビに出ているきれいな人たちで、自分とはかけ離れた存在だと思っていたし、なろうとも思わなかった。でも舞台の世界では役者がそれぞれの個性を発揮しているように見えた」
 獨協大外国語学部に在学中、夜間俳優学校に通って演劇を学び、卒業と同時に前進座に入団。
 「初舞台は大阪道頓堀の中座でしたが、もう必死。歌舞伎ものだったんですが、かつらをつけることだけでも精いっぱいで、演技がどうこう以前の問題でした」
 「舞台であまり失敗はしたことはない」というが、かけていた眼鏡をはずみで床に落としてしまったことがある。「さりげなく拾ったつもりだったけれど、お客さんにはきっと失敗だって分かっただろうな」
 公演当日にインフルエンザにかかったこともある。「それでもやらなければならないのが俳優のつらいところ。でもやめようと思ったことは一度もない」と断言する。
 ◇ ◇
 年間平均100縲・50ステージをこなす。昨年は200ステージに出演した。入団以降女優として十数年がたつが「中堅女優なんてとんでもない。まだまだです。何しろ周りにいるのがすごい人たちばかりなので…」。
 「まじめで、何かに夢中になると周りが見えなくなるタイプ。もともと器用な方ではないので、どの役を演じても自分にぴったりしない気がするんです。だから本当に自分に合った役に出合ってみたい。あと、一度やってみたいのは極悪人の役かな…」
 「うれしいのはお客さんが笑ってくれること。私の演技を見ているお客さんがどう感じているかが分かる瞬間がある。そんな時は最高の気持ちですね」
 (白鳥文男)

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