天竜川決壊の恐れ 避難場所で不安な時
伊那市は14カ所に1800人
天竜川堤防の決壊に備え、同河川沿岸の地域住民が避難した。伊那市は小中学校の体育館など14個所へ避難所を設置し、合計1884人が身を寄せ合った。
自主避難などの発令で住民らは飲料水や貯金通帳、印鑑などを小さなバックへ詰め、近くの小中学校などへ避難。伊那北小には避難の人が溢れ、市民体育館、県勤労者福祉センター体育館へ分散した。
硬い床の上に寝床をつくるが、時折屋根を激しく叩く雨音にそわそわと眠れない様子。家が浸水していたら竏窒ニ、一夜明けても降り続く雨に、市民らの表情は暗かった。
天竜川から約5メートルの近くの所に住む、久保田勇子さん(64)=中央区北町=は「30年間ここにいるがこんなに水位が増えたのは初めて」と驚きの表情。「家の中にいても水の音がいつもより大きく聞こえて怖かった」と話した。
区長会役員、消防団員、伊那署員らは、避難勧告、指示が出ても自宅から離れない人の元を訪ね歩いた。なかには「オレは行かない」と、家族だけ避難所へ向かわせ、自分は家を守ると残る40縲・0代男性もいたという。
野底の40代女性は小学4年の息子と避難。「おじいちゃんが家に残っていて心配。車に乗れるからいつでも逃げれると言って聞かなかった。頑固な人だから」と不安げ。翌朝、父が避難所を訪れ「少し安心した」と目を細めた。
山寺区は伊那北地域活性化センター「きたっせ」へ集まった住民たちを避難勧告後、高台にある伊那小へ搬送するため、区内各町で用意した車で迅速に対応した。
伊藤萬喜区長は「町役員が動いてくれて比較的スムーズに避難ができた」と喜ぶ。しかし「市からの防災無線のなかで、堤防決壊に関する具体的な情報がほしかった。避難所にはテレビなかったりと、住民は目に見える情報をほしがっていた」と課題を上げた。