二極化する集落営農組織の立ち上げ(2)
水田面積の占める割合が大きい地区は比較的迅速に集落営農組織の発足準備を進めている一方、畑作面積の占める割合が大きい西箕輪地区、伊那地区などは、協議が難航している。これらの地区は、畑作農家が参加しなければ面積要件を満たす担い手組織がつくれない。しかし、新しい経営所得安定化対策の恩恵が少ない畑作農家には、組織に参加することにメリットを見出せない人も多く、地区の合意形成が図れずにいる。
伊那地区では、耕作面積の約4割が牧草地と畑。地区で一つの組織立ち上げることを目指してきたが、畑作、牧畜農家の反応が鈍い。
土地の相続税を危惧する人もいる。農地の相続については、細分化防止などの目的で相続税を猶予する制度があり、猶予された個人は、その土地を原則として20年、農業用地で使用した場合に免除される。しかし、組織に参加した場合、土地の所有権が個人から団体へと移るため「その後、相続税は猶予されるのか」と懸念する。
西箕輪地区の場合、遊休農地の管理方法も課題となっている。
同地区は、高齢化、若手農業者の減少に伴い、約7%以上の農地が荒廃している。任意組織は、これら遊休農地も面積集積する予定だが、現在地区で農業を営む人のほとんどが、自分自身の農地を耕作するのに手一杯で、荒廃地を耕作する余裕がないのが現状。まして、何の助成もない畑を耕作していく余裕もないという。
しかし、JA職員は「組織に参加しなかった人たちが今後高齢化した時、その人たちの農地を耕す後継者がおらず、一層荒廃が進んでしまう事態を招きかねない」と危惧する。
畑作面積が大きいわりに、比較的スムーズに協議を進めてきたのが西春近地区。約4割が畑作で占める同地区は、地区で一つの組織を発足し、法律の位置付ける「特定農業団体」としする。すでに85%の基本合意を得ており、加入申し込みに向けた準備が進んでいる。発足は9月を目途としている。
西春近の場合、地域の実情に熟知した関係者が中心となり、3年間かけて組織のあり方を検討してきた。地区で一つとしたのは、認定農業者を除いても任意組織が担い手の面積要件を満たせるため。また、特定農業団体とすることで土地の利活用を円滑に図れるようにした。関係者は「個人で担い手となれる大規模農家だけでなく、小規模にやっている人も一緒に地域で農業を続けていけるような組織にしようとみんなで話し合ってきたんだよ」と経緯を話す。
西春近には、すでに田植えや刈り取りを共に行う協業組織があるが、これらは全て任意組織に統合していく。