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【筝、三味線演奏家 大庫こずえさん】

駒ケ根市経塚

【筝、三味線演奏家 大庫こずえさん】

 91年から駒ケ根市で教室を開く傍ら、3年前から昼神温泉の舞台で月5回の定期演奏をこなす。一方で筝、三味線、尺八から成るユニット「まいまい」のメンバーとして各地で演奏活動を行うほか、中学、高校で邦楽器の実技指導も行っている。
 4月、霊犬早太郎伝説700年を記念する独演会を光前寺で開いた。同じ演目で7月には京都芸術センターでも公演を開催。演奏家としての方向性を模索し、追求し続けながらもつかめずにいたこれまでの自身とは一線を画す演奏に、新境地への確かな手応えを感じている。
 「聴いて楽しんでもらうことはうれしいのだけれど、自分が音楽に求めているものはただそれだけではなくてもっと本質的な何か。筝でなければできないこと、自分だけにしかできないこと竏秩Bそれが今回の試みで少し見えてきた気がします」
 ◇ ◇
 東京都豊島区生まれ。邦楽とは特に縁のないごく普通の家庭に育った。中学3年生の時「思い当たるきっかけもないのに、なぜか筝を弾いてみたいという思いが強くわき上がってきて」進学した高校で筝のクラブに入った。初めて弾いてみた筝は「すごく楽しかった」。指導に当たっていたのがたまたま山田流筝曲の師匠で、クラブと並行して、浅草にあるその師匠の教室にも通い始めた。
 「1人だけでなく、ほかの先生の教えをもっと受けてみたい」と東京芸術大邦楽科の別科筝曲に入学。「素晴らしい先生に出会えて」2年間の課程を修了したが…。
 その後結婚して夫の仕事の都合で駒ケ根市に転居。子育てに没頭する生活が10年近く続いた。
 「子育ては楽しかった。筝や三味線は思い出したように年に1回ぐらい触れてみる程度で、特に弾きたいとも思いませんでした」
 子どもが成長したのを機に再び演奏を始めると、長かった空白を埋めるようにさまざまな活動に挑戦した。ビートルズの曲、ピアノやギター、インドの楽器との共演竏秩B東京、名古屋などの大都市でも公演した。
 「楽しんで演奏することは新鮮な経験でした。可能性を求めていろんなことを試してみたんですが…」何かが違う。やればやるほど伝統的な演奏に魅力を感じ「こういう演奏でいいのか」と疑問は募るばかりだった。
 光前寺の公演の話が舞い込んだのはそんな時。心機一転を期して臨んだ演奏は重なった欲求不満を吹き飛ばすものだった。
 「やっと気がついたんです。無理して新しいことをやらなくてもいい。自分自身が本当にやりたいことをやればいい。それがほかの人にはない、自分を100パーセント生かせる道だってことに竏秩v
 ◇ ◇
 「この道に終わりはない。一生勉強です」
 今も月1回東京に通い、師匠に教えを受けている。
 「先生は『教えることはもうない』と言う。でも何かしら得るものは必ずあります。以前弾いた曲をまた弾いてみると、もっと深いものを感じることがある。感性が深まったというか竏秩Bそれが自分を成長させることでもあるんです」
 演奏の依頼、教室の申し込みはTEL83・0863へ。
 (白鳥文男)

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