前田英司さん(53)
飯島町田切
田切クリーンセンター社長(前田産業専務)
「法律を遵守するとともに、地元のみなさんとの交流を大切に、地域に貢献する企業でありたい」-。
1954年飯田市生まれ。明治学院大学経済学部卒業後、父が経営する前田産業(飯田市)に入社。製鉄・製紙・非鉄金属原料の営業に励んだ。
20年前、大量生産型から循環型の産業構造への変革する時代の流れの中で、「周辺の汚水が流入する諏訪湖の水質の現状に触れ、環境問題に強い関心を持った」。当時、前田産業は産業廃棄物の収集運搬も手掛け、収集した廃棄物は県外施設に持ち込んでいた。環境保全という視点で、産業廃棄物を扱う仕事の重要性を認識すればするほど、自社処分場の必要性を痛感した。
前田産業の社長である兄、隆さんも同意見で、用地探しをした。産廃業といえば、違法行為や地元住民とトラブルなどイメージは悪く、用地探しも難航したが、飯島町田切の理解が得られ、ほっとし、地元の信頼を裏切らないように、強く心に誓ったという。
93年、田切クリーンセンターを設立し、安定型最終処分場を建設に着手。安定型には義務付けられていない遮水シートや排水処理施設を設置するなど、安全と環境負荷の軽減を図り、その年の12月に営業を開始した。同時に町や地元住民による環境保全委員会を立ち上げ、施設視察や情報交換を始めた。続いて、97年には管理型最終処分場を建設、6月に営業開始。05年伊南行政組合から汚泥中間処理場を買収。施設、設備を全面的にリニューアルし、2重、3重の環境保全、安全対策を講じた上で、営業を開始した。
地元最優先や法律の遵守、地域貢献、環境負荷の低減-を基本とする同社の姿勢は、地元や行政の理解を得て、8月7日、町を立会人に、第3の処分場建設に向けた地元との環境保全協定を調印、まもなく建設に着手する。
「親会社の前田産業はあらゆる資源のリサイクル業。当社も、ただ埋める、燃やすだけでなく、再資源化できる技術の開発を」と、汚泥や燃え殻、汚染土壌などをセメント原料、泥土改良材料に提供する廃棄物再資源化(マテリアルリサイクル)、木くず、廃プラなどを発電、発熱施設への提供など廃棄物有効活用(サーマルリサイクル)などに積極的に取り組んでいる。
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地域貢献の一環として、10数年前から、排水を放流する郷沢川に保育園児らとアマゴの放流を続けている。長姫ライオンズクラブのメンバーとして奉仕活動にも参加。自称「お祭り男」の前田社長は、町を挙げて盛り上げるお陣屋まつり、地元田切の日方磐神社の例祭などにも参加し、地域との交流と親ぼくを深めている。日本野鳥の会のメンバーで、朝早く、里山に入り、小鳥のさえずりを聞くのが何よりの楽しみという前田社長は、埋立が終了した処分場の上部を盛土し、桜や落葉樹を植栽、小鳥が集まる里山のようなミニパークに整備した。自宅は飯田市鼎、5人家族。大口国江