4月からみはらしぶどう生産組合長に就任
伊那市西箕輪
林正隆さん(66)
野菜は毎年考えて、いろんな作り方をしなければならないけど、ブドウは1年目にやったことを応用して、続けていくことができる。それに果物ってなんか、夢があるでしょ竏秩B
開園して5年目となる「みはらしぶどう園」。3年目から徐々に実がつき始め、4年目となった昨年は、これまでにない実りがあった。「今年は長かった梅雨の影響が心配だったけど、夏場の好天で持ち返した。ここは標高が高く、昼夜の寒暖差が大きいから糖度の高い果物ができる。まだ始めたばかりだから、ブドウの先進地に比べて来場者が少ないのは残念だけど」ともらす。
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退職後はゆっくりしようと考えていたが、古くからの友人に声を掛けられたことや、自宅近所でできることもあり、ぶどう園に参加することを決めた。それまで、手伝い程度に農業をすることはあったが、出荷までする本格的な農業は初めてだった。木を育てる1、2年目はそれほど手間もかからなかったが、実がなりはじめた3年目、ブドウづくりの大変さを思い知った。
6月から7月にかけ、作業は本格化する。木の剪(せん)定から始め、房作りのための摘果、種なしにするためのジベレリン処理、袋がけ、消毒竏窒ニ続く。ピオーネ、シナノスマイルなどの大粒種は、60粒を36粒ほどまで摘果し、粒が大きくなるように促すが、実が成長してしまうと摘果のはさみが入らなくなるため、作業は短期間に集中する。連日、ブドウを見上げ、腕を上げたままで作業を続けなければならないため、次第に体が悲鳴を上げ始める。また、暑さ寒さも我慢しなければならない。それまでの会社勤めと違うことばかりだった。その一方で、無事に果実が成長する姿を見続けることへの喜びも覚えた。「自分の場合、ほかに何かしているわけでもないから、ぶどう園のおかげでいつも必ず一つは楽しみがあるのはいい。こんなに手がかかるとは思わなかったけど」と苦笑いする。
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生産者のほとんどは、ぶどう園の開園と同時にブドウ作りを始めた人ばかり。専門家の技術指導を受けたり、土壌改良をするなどして試行錯誤を続けているが、味には絶対的な自信を持てるまでになった。「最初は小粒で甘味もあまり出ていなかったが、木も安定し、酸味と甘味のバランスも良くなった。これからまだまだ良くなっていくよ」と自信を見せる。だからこそ、より多くの人に来てもらいたいという思いも強い。
「より多くの人に楽しんでもらえるよう、品種を増やすことも考えている。若い人は大粒が好きだけど、お年寄りは小粒が好きな傾向にあるから、そういうことも考慮して。市内でも、ここにぶどう園があることを知らない人もいる。すぐに広めるのは無理でも、美味しいブドウをつくり続けて、徐々に知っていってもらえばと思ってるよ」