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故・河手禎さんより箕輪町に寄付
箕輪町出身で去年3月に亡くなった河手禎さんから箕輪町へ教育振興のために750万円と書籍7,000冊が寄付されていたことがわかりました。 教育振興のために使って欲しいという河手さんの遺言により去年末に寄付されました。 河手さんは箕輪町松島出身で、父親は元箕輪町教育委員長です。 伊那北高校から早稲田大学に進み、卒業後は株式会社学習研究社に入社しました。 定年退職後は、民俗学を生涯のテーマに全国各地に足を運び、その間に関連書籍を集めました。 遺言により民俗に関する書籍も寄贈されました。 河手さんの寄付は2月22日に開かれた記者会見で報告されたもので、町では「教育のために使って欲しいという故人の遺志に沿う形で活用を検討していきたい。」としています。
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【記者室】伊那毎日新聞最後の日に
「休刊は残念だ」「何とか存続できないのか」と多くのありがたい言葉をいただいた。中には「地域の損失だ」とやり場のない憤りをあらわにする方もいらっしゃった。
新聞は人々の役に立つためにこそ存在するのだが、私たち製作側が常にその意識を持っていたかといえば甚だ心もとない。日々の出来事を夢中で追い、記事にまとめることに汲々とするばかりで、本来の目的は見失いがちだったように思う。そんな私たちの新聞でも惜しんでくれる方がこんなにもいると知っていたなら、もっと良い記事を書き、もっともっと良い新聞をつくったのに…。
本紙は休刊となりますが、これまでいただいたご支援、ご厚情は決して忘れません。皆様の今後に幸多からんことを。(白鳥文男) -
【記者室】花火のごとく
花火は心躍る。祭り彩る盛夏の花火も、冬空に咲く恵比寿講花火も。花火は家の窓から眺めるものだったが、手筒花火を打ち揚げる「みのわ手筒会」との出会いで、間近で見る醍醐味を知った▼発足の年から取材させていただき、吹き上がる華に感動した。同時に地域に活力を-と願う会員の熱き思い、心意気を見せていただいた。打ち上げ花火も手筒花火も、わずか数秒に魂を込める。危険と隣り合わせなだけに、命を懸けた華。見る人の心を明るく照らし、潔く散る▼一瞬でもいい。花火のごとく人の心に明かりを届けることはできただろうか。感動なんて大それたものでなく、小さな小さな明かりでいい。そっと照らし、そして消える。そんな人生が送れたら幸せ。(村上裕子)
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記者室大口
突然廃刊が言い渡され、呆然自失のうちに1週間が過ぎた。約20年間、全力疾走し紙面を埋め、継続させる事に四苦八苦した時期もあったが、今の廃刊の憂き目に比べれば何ほどの事もない▼担当地区を転々とし、全地区を回り苦労もしたが、心を通わせる事のできる多くの友を得た。どこでも「一生懸命やっていれば、誰かが助けてくれる」を実感。思えば皆さんに助けられて仕事ができた、あり難く幸せな歳月。悲しいけれど、悔いはない▼唯一の心残りは花ろまん「ふるさとの原風景・花野の再現」が何ら形のない夢のまま終る事。どこかで夢の続きを見たい。長い間ご愛読ありがとうございました。おせわになりました。そして、万感の思いを込めて「さようなら」(大口国江)
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【記者室】全力疾走
ある期限のなかで一定の到達点を目指して努力するのと、日々を懸命に生きる過程で目標を達成するのとは大きな違いがある。中学校の恩師がそんなことを言った。伊那毎日新聞社の休刊が決まった日、初めてその意味が分かった。
後悔している。終わりがあることを知り、頑張っている自分がいる。恥ずかしいことだが、今はこれしかできないのも現実。入社した日から、もっと頑張れたはずだ。そのことが心残り。
さまざまな人との出会いと別れがあった約4年間。だが、まだ終わったわけではない。今、何かを振り返り、思い出し、感謝の気持ちを言葉にしようとは思わない。『ポンっ』と肩をたたかれる日まで、まだまだ全力疾走を続けたいと思う。 (布袋宏之) -
【記者室】新ごみ中間処理施設議論の行方
上伊那広域連合の新ごみ中間処理施設の建設用地に伊那市富県の天伯水源付近が選定されたのを受け、周辺地区で説明会が始まっている。市の担当者が出向いて説明するのだが、住民側の形相は親のかたきを迎え討つかのごとくだ。
同じ雰囲気は以前にも感じた。市町村合併の議論が盛んに交わされていた4年前、筆者が担当していた伊南地区の住民説明会の会場だ。住民側は声高に「データは信用できない」などと叫び、行政側は冷静に話を進めようとするが次第に物言いが強硬になる竏秩B
何しろまったく議論がかみ合わない。こんな時こそ客観的で冷静な判断が求められるのだが。こうなった以上、双方が納得するには住民投票などで決着をつけるしか道はないだろう。(白鳥文男) -
【記者室】忘れるな駒ケ岳の悲劇
毎年この時期になると上伊那のほとんどの中学2年生は集団登山で駒ケ岳(2956メートル)に登る。今でこそロープウエーの恩恵で誰でも気軽に登れる山だが、95年前に大惨事が起きたことを知らない人も多い。
登山は中箕輪尋常高等小学校(現箕輪中)が教育の一環として他に先駆けて始めたが3年目の1913(大正2)年、突如襲った台風のため教師、生徒など37人中11人が不幸にも亡くなった。一部始終は新田次郎の小説『聖職の碑(いしぶみ)』に詳しい。
小説は映画化もされ、多くの学校で登山前の生徒が見ている。登山の途中、遭難記念碑の前で説明する学校もある。朝に夕に眺める駒ケ岳で悲劇があったことをこの地域の史実として語り継いでいってほしい。(白鳥文男) -
【記者室】ソースかつ丼元祖論争の行方
伊那谷の名物の一つにソースかつ丼がある。伊那と駒ケ根にそれぞれの飲食店でつくる別の組織があるが互いの交流はなく、独自に活動を続けている。
周囲からは両者が対立しているように見えたためか、当事者を差し置いて両市の間で元祖論争が起きたこともあった。だが両方の会長に別々に話を聞いたところ、いずれも「どっちが最初か竏窒ネんてどうでもいいこと。ただおいしいかつ丼で喜んでもらいたいだけ」と異句同音に話していた。
県が今年策定した「観光立県長野再興計画」の中に、上伊那「どんぶり街道プロジェクト」(仮称)が新たに登場した。これを機会に同じ(少し違うかもしれないが)かつ丼を作る仲間として共同歩調を取るのもいいかもしれない。(白鳥文男) -
【なぜ進まない 伊那市の学校耐震化率】
文部科学省がまとめた全国公立小中学校の耐震化率(4月1日現在)で伊那市は31・4%と、全国平均の62・3%を大きく下回った。上伊那の市町村は悪い順に、辰野町35・7%、駒ケ根市64・0%、箕輪町73・3%、宮田村76・9%。飯島町、南箕輪村、中川村はいずれも100%だ。
伊那市は理由について、改築を集中して行った後の81年に耐震基準が強化されたため竏窒ニいうが、81年以前の建物にその後施した耐震補強の率は駒ケ根市の30・8%に対して伊那市はわずか6・7%。その差は歴然だ。
中国・四川大地震では校舎が倒壊し、たくさんの子どもたちが無残な死を遂げた。同じ悲劇を繰り返さないよう、若い命を守るための事業に最優先で取り組んでほしい。(白鳥文男) -
【記者室】戸草ダム「見送り」にみる国の姿勢
国は三峰川上流部に建設を予定していた戸草ダムの計画を見送る方針を明らかにした。洪水防止などに大きな期待を寄せていた住民からは一斉に反発の声が上がっている。
事業着手から20年がたつが、ダム本体工事は手付かずのまま。それがここへきて実質的な中止宣言だ。理由について国ははっきり言わないが、1千億円に上る巨額の事業費が足かせとなっているのは間違いない。
それにしても、これまでの経過を無視して突然「見送る」では話が少々乱暴だ。「あなたの声を生かします」として懇談会が開かれたものの、国の方針が覆る可能性は限りなく小さいことから、形式的の感はぬぐえない。大転換を打ち出す前に、地元住民の意見を聞く場を設けるべきだった。(白鳥文男) -
【記者室】労災減少の実現を
手に血の付いたタオルを巻いて病院を訪れた男性。受付で「労災」という言葉が聞こえた。病院に行くことは滅多にないのだが、その日は2人も「労災」と話す男性を見た。
過日開いた伊那地区産業安全大会。07年の労働災害は、長野県全体では減少したが、上伊那は増加したとの報告があった。休業4日以上の労働災害は前年より3人増加し、1人が死亡。災害発生状況は転倒、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれが多かった。今年はすでに3人死亡し、25%の増加だという。
懸命に働く人たちに、けがをしたり、命を落とすなんて悲劇はあってほしくない。全国安全週間は7月1日から。「つみ取ろう職場の危険」。スローガンが言葉だけで終わらないことを切に願う。(村上裕子) -
【記者室】住所表示変更の利点
対象区域が広過ぎて分かりづらいと不評だった伊那市の伊那、伊那部などの住所表示の変更に向け、6月市議会に関係議案が提出された。何事もなく進めば8月4日から「伊那○番地」は「御園○番地」などに、「伊那部○番地」は「日影○番地」などに変わる。
地名でおよそどの辺なのか見当がつく竏窒ニいう現実的な利点もさることながら、これまでの味も素っ気もない呼称に比べ、ほのかに温かく味わいのある地名が使えることがうれしい。
この問題は駒ケ根市も同様で、どこもかしこも「赤穂○番地」ばかり。中原前市長は変更に取り組まずじまいで引退してしまったが、杉本市長は検討課題として申し送りを受けているのだろうか。新リーダーの英断に期待したい。(白鳥文男) -
【記者室】園児の元気パワー
老人ホームを訪れた保育園児たちが、手遊びや歌を元気いっぱいに披露した。園児の発表を見ていつも思うことは、そこまで…と感じるほどの一生懸命さだ▼声が出なくなるのでは-と心配になるくらい大きな声で歌い、踊りも精一杯に手を振り足を振り、その頑張りが伝わってくる。たまには、ちょっと休憩しているのかなという子も見受けられるが、全体としては、やはり子どもの元気パワーに圧倒される▼お年寄りは、子どもと一緒に手遊びしたり、歌声に拍手したり。園児の姿に涙する姿さえあった。純粋な子どもたちの歌声、計算ではない一生懸命さが、お年寄りの心に響くのだと思う。世代を超えた交流、施設訪問は、子どもたちの元気お届け便なのだろう。(村上裕子)
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【記者室】伊那まつり公式Tシャツ審査員の祈り
今年の伊那まつり公式Tシャツのデザインが決まった。応募作品の審査会では祭りの実行委員のほか、報道各社も依頼されて選考に加わり、迷いつつようやく1点を選んだ。
デザインは十数年前から審査で決めているが、毎年「デザインが気に入らない」「年号を入れなければ毎年着られるのに」などの厳しい意見が寄せられるという。ことに昨年は地色が白だったため、女性には「透ける」と不評だった。担当者は「生地を厚い物にしてみたのだが、やっぱり駄目だったか」と反省しきり。
審査員の端くれに連なった者として、市民が採用デザインをどう見るかは非常に気になる。願わくば好意的に受け入れられ、祭りの盛り上がりに一役買ってくれることを祈りたい。(白鳥文男) -
記者室大口
中川東小6年は村内の池からすくってきた天然メダカを繁殖させ、元の池に戻すという活動を始めた。先日はその前段として、水槽で生れたメダカを自然に慣らしてから、放流しようと、手作りの池に放した▼南信さくらそうの会は絶滅寸前の辰野町産の桜草を会員が株分けなどで繁殖させ、自生地に150株を植栽した。貴重な動植物を絶滅に追いやるのも人間だが、戻し、復元させることができるのも人間しかできない▼同会の小林省吾会長は種で増やす事も試みたいと言っていたが、種なら株分けよりも、時間はかかるが何10倍も増やす事ができる。山野草は1人が1種類、種で増やして、元あった場所に百倍にして戻せば、かつての花野の復元も夢でないと思う(大口国江)
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【記者室】千円で飲み放題 収支は?
千円で伊那谷の銘酒やワイン50種類近くが飲み放題竏窒ニいうイベントが伊那市の通り町周辺の商店街で開催された。週末の夕方とあって多くの酒好きが訪れ、ほろ酔い加減の陽気な笑い声をあちこちで上げていた。
露天で飲む開放感も手伝ってか、どの顔にも一様に幸せそうな笑みが浮かんでいたから、飲む側は満足だったのだろう。だが一方で気になるのは収支勘定だ。主催者の一人は「飲み放題といったってそんなに飲めるもんじゃないよ」と高をくくっていたが、果たして…。
いつもは閑散としている商店街なのに、ぐい飲みを手に持った人たちが嬉々とした表情で群れ歩くのを見ていたら何だかうれしくなってしまった。多少赤字であってもどうか続けてください。(白鳥文男) -
【記者室】イチゴ交流の将来は
いちごジャム作りを学びたいと、伊那市のみはらしいちご園に韓国のイチゴ輸出営農法人が交流・視察に訪れた。交流は営農法人の昨年7月の来伊に始まり3回目。昨年11月には、みはらしいちご園の関係者が韓国を訪問している。
営農法人は東南アジアへの輸出用イチゴを栽培する。みはらしいちご園と市場競合がないためか、双方とも技術交流に前向きで、来日した関係者は「もっと縁を結んで交流したい」とし、将来的に農家での民間交流にも期待している。
イチゴが結んだ今回の交流。パスポートが必要なだけに行き来はそう簡単ではないが、「同じイチゴを作る仲間」として、交流により互いに得るものはあるはず。さらなる交流は赤く実るだろうか。(村上裕子) -
【記者室】新宿区長、森を楽しむ
伊那市と環境保全協定を結んだ東京都新宿区がプログラムの一環として伊那市の山林内に「新宿の森」をつくり、区民が樹木の手入れをしたり子どもたちが森林体験を楽しんだりする構想がある。
具体計画策定のため、区長が伊那の山林を調査、視察に訪れた。言っては悪いが、視察というより散策を楽しんでいるようにも見えた。花を眺めたり、タラの芽を摘んだり、ブランコに乗ってはしゃいだり竏秩Bだが決して文句をつけているのではない。
計画が実現すれば、都会の子どもたちにとって自然を肌で感じる貴重な場になるだろう。区長と同じように彼らが楽しめる森にしてやってほしいのだ。頭の固いお役人がいじくり回してつまらないものにしてしまわないよう願う。(白鳥文男) -
【記者室】太鼓に込めた願い
伊那市内の保育園で初の取り組みとなる太鼓教室が、富県保育園で始まった。指導者は園児の保護者でもある歌舞劇団「田楽座」の座員。子どもたちの頑張りを見てもらうために、運動会などで発表しようと考えている。
挑戦する曲は「わらしこ太鼓」。初練習に臨んだ年長児は、しっかりとバチを握り、大きな和太鼓を元気いっぱいにたたいていた。
園は、仲間と気持ちをあわせること、音が響き合って一つの曲を作ることを体験してほしいという。座員は一緒に活動し地域を盛り上げたいという。太鼓教室には、太鼓という楽器を媒体にし、演奏できるようになること以上に大切な願いが込められている。楽しく太鼓に向かう園児に、地域に、その願いが実ってほしい。(村上裕子) -
【記者室】真の闇
・ス真の闇・スを知っている子どもはどれくらいいるだろう。目を見開いてもまったく何も見えず、目を閉じているのと何ら変わらない闇を。ほんの数十年前まで、夜の農村はどこもそうだった。だが現代ではよほどの山中にでも踏み込まない限り体験することはない。
現在の国立信州高遠青少年自然の家の所長を4年間務めた野外教育文化研究家の森田勇造さんは「今の子どもたちは暗ければ電気をつければいいと思っている。電気のない所を知らないんだ」と言う。
真の闇を経験すると、人間の力ではどうにもならないものがあると体が理解する。それは自然への畏敬の念を持つことにほかならない。子どもにありのままの自然を体験させることは何より大切な人間教育だ。(白鳥文男) -
【記者室】子どもの純粋な感性を見習え
伊那北駅前の小緑地を整備して美しくしようという活動が始まった。中心的に取り組むのは伊那小の5年夏組の児童。地元の住民も協力するが、どんな場所にするのかという具体構想は子どもたちに任せるのだという。
緑地は昔から知っているし今も時々前を通るのだが、いけすの水が汚いとか、ごみが落ちているとかを問題だと感じたことは皆無。ましてや自分の手で何とか美しくできないか竏窒ネどとは、ちらっとでも考えたことはない。子どもたちに比べて何と鈍感なことか。
児童らは自発的に清掃までしてきたという。大人はさまざまな利害ばかりで生きているが、彼らは「汚いからきれいにしたい」と素直にそれだけを考える。この純粋な感性を見習いたいものだ。(白鳥文男) -
【記者室】花にも命が
町のあちこちで色鮮やかなチューリップが満開になっている。童謡にある赤、白、黄色は定番だが、今は珍しい色形も多く、楽しませてくれる。
そんなチューリップが隣県で被害にあった。全国ではボタン、ユリなどもねらわれ、引き抜いたり切ったりという信じがたい行為が相次いでいる。盛りと咲く花を生けて愛でるためではなく、ただ無残に切ることは、極端な言い方かもしれないが人間の首を次々と切っているも同じ。花にも人間と同じく命がある。
花を傷付けた行為は、育てた人、花を見て心安らいでいた人も傷付けたのである。小さな花を慈しむ心を持たずに育ったということは親にも責任の一端はある。切られた花の悲しみ、人の心の痛みに気付いてほしい。(村上裕子) -
【記者室】平均寿命ランクで上伊那の市町村が上位に
全国市区町村別の平均寿命で箕輪町、宮田村、駒ケ根市、飯島町などが上位にランクインした。30位以内に入っているのはこれだけだが、上伊那の市町村はどこを見てもさほど大差はない。
日本は長寿国世界一の座を競っている。都道府県別でも長野県は男性1位、女性3位。しかも高齢者の医療費は全国一少ない。元気なお年寄りが多いということだ。一体何が違うのか。これだという要因があるならぜひ知りたいものだ。
生きたい竏窒ニいうのはあらゆる欲望の中で最も強いはずのものだが、お年寄りは時に「もう死にたい」などと口にする。長く生きることが必ずしも幸せとは限らないのは分かるが、できることなら気を取り直して、もっともっと長生きしてほしい。(白鳥文男) -
【記者室】講演に学ぶ
写真家・新村洋子さんの講演を聞いた。写真展のために少数民族の撮影に訪れたベトナム。象がベトナムにいることを知らなかった新村さんは、カメラの向こうに偶然目撃した象との出会いをきっかけに、ベトナムで象と暮らす人々の写真を撮り続けるようになったという▼象や象使いの写真だけでなく野生の象を調教する貴重な映像、象の捕獲が禁止される以前に広い森の中で「象が獲れた」などの合図のため使われた角笛の音楽なども記録している▼情熱を傾け追い求めるものに出会えたことをうらやましく思うが、新村さんはただ手をこまねいていたわけではない。とにかく積極的。自らの力で出会いを引き寄せたのだろう。生き方を学ばせていただいた講演だった。(村上裕子)
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【記者室】公務員は『遅れず、休まず、仕事せず』か
コックリ、コックリと居眠りをしている者がいる。両手でほおづえを突いている者、指先でボールペンをクルクルと回し続けている者…。どこかの高校の授業風景ではない。南信地区の市町村に新規採用された職員の合同研修会の一場面だ。
伊那市の小坂市長が公務員の在り方などについて1時間にわたって熱弁を振るったのだが、前述の者たちがろくに聞いていなかったのは明らかだ。これから長いこと地域住民のために仕事をしようという者が最初からこの体たらくでは先が思いやられる。
自身も県職員だった小坂市長はこう話した。「昔の公務員は『遅れず、休まず、仕事せず』を守っていればだんだん偉くなれたというが、今は違う」竏秩B君たち、よく聞いておけ。(白鳥文男) -
【記者室】旧庄屋屋敷を再生
「古くて美しいものを残せる人の気持ちと社会を広げたい」。伊那市の旧庄屋屋敷を保存活用するプロジェクトが始まった。都会に暮らす一新塾21期生有志が取り組んでいる。
空家になり3年が経ったかやぶき屋根の屋敷は、メンバーの言葉を借りれば「ぼろ」。しかし長屋門をくぐった先にどっしりと構えるその姿は、繁栄の面影を残す。
郷土文化の再創生という大きなテーマを掲げたプロジェクト。都会の人が田舎で新たなことに取り組むには、地域の受け入れなど難しい面もある。が、今回は屋敷所有者も親族も歓迎ムード。「でしゃばりになっちゃいけない」と控えめながらも、一緒に再生したい思いがある。古くて美しいものに命を吹き込む様を見守りたい。(村上裕子) -
【記者室】頑張ってる人には逆効果な「頑張れ」
新年度スタートを機に学校や職場が替わった人は多いだろう。かく言う筆者も受け持ち地域が替わった。朝から晩まで忘れ物やポカミスを繰り返し、リズムがつかめないまま、あっという間に一日が過ぎていく…。
大人はともかく、新たに入園、入学した子どもたちの緊張ぶりは見ていて気の毒なほどだ。慣れない環境に戸惑いながらも、懸命に順応しようとしている姿がいじらしい。帰宅するころには身も心もぐったりと疲れ切ってしまっている。
そんな時に慰めになるのは家族の優しい一言だ。しかし「頑張れ」などはかえって逆効果になることも。言われるまでもなく、彼らは精いっぱい頑張っているからだ。すぐに慣れて楽になる。その間は温かく見守ってやろう。(白鳥文男) -
【記者室】星空の世界
ライフワークとして星と風景の写真を撮っている太田直志さんの写真展。県伊那文化会館で開催中で、北アルプスの燕岳をはじめ国内外で撮影した「星のある風景」の写真に心がふるえた。
中学2年の学校登山は燕岳だった。あまりの辛さに記憶から抹殺したのか、登った覚えはほとんどなく、夜空を見上げた記憶もない。その山に太田さんは星の写真を撮るためだけに登るという。1枚1枚の写真の中に広がる燕岳の星空の世界。ただただ見入ってしまった。
切り立った山の頂、米国アーチーズ国立公園の砂岩のアーチ、豪州デビルズマーブルの岩。それらの上に無数の星が瞬き、宇宙は果てしなく広がっている。人間は、なんてちっぽけな存在なのかと思い知らされる。(村上裕子) -
【記者室】"押し掛け"で勝ち取った入社
新卒社員を採用する予定がなかった会社に・ス押し掛け・ス入社を果たした猛者がいる。といっても、この春高校を卒業したばかりという小柄なかわいらしい女性だ。「どうしてもここで仕事がしたいんです」「入れてくれるまで動きません」と言って座り込んだとか。
なまはんかな根性ではまねのできない見上げた行動力だ。その迫力に会社もとうとう折れ、特別に採用を決めたという。もちろん企業であるからには、ただ熱意があるというだけで採用するはずもない。その覚悟に見合うだけの実力があると認めたからこそだろう。
人生を自力で切り開いた彼女に比べ、挑戦もしないうちにあきらめてしまう人の何と多いことか(筆者を含む)。この勇気を見習いたいものだ。(白鳥文男) -
【記者室】副市長問題 苦悩する杉本市長
駒ケ根市の前副市長が退任してちょうど1カ月になるが、後任はいまだ決まらないままだ。人事案は3月市議会で杉本市長が提案するはずだったが、引き受ける人がなく、結局見送られてしまった。民間人の登用を選挙公約に挙げた市長の立場は苦しいものになっている。
反杉本派は「それ見たことか。思い通りになるほど甘くはないぞ」と手をたたき、杉本派は「ここまできたなら仕方ない。慌てずにじっくりと選べばよい」と見守っているが…。
能力さえあれば、民間人か市職員かはさして問題ではない。だが、杉本市長にとっては重い選択だ。あくまで公約を貫き通すか、現実的な選択肢の中で妥協するか竏秩B深いジレンマに陥った市長はどんな決断をするだろうか。(白鳥文男)
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