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権兵衛トンネル開通後1年~文化交流~
伊那市のみはらしファームであった権兵衛トンネル開通1周年記念イベント。「木曽のなァ、中乗さん…」と伊那に木曽節が響いた。
権兵衛トンネル開通をきっかけに、合唱、民謡、食文化、スポーツなどさまざまな分野で地域住民同士の交流が目立つようになった。「せっかく始まった交流。これからも続けたい」と交流を通した地域発展への期待も込める。
伊那で木曽節を披露する機会が多くなった木曽踊保存会の田沢博会長=木曽町=は「トンネルが開き、みはらしファームや伊那中央病院などに来る会員がいる。生活道路になりつつある」と話す。
新年度事業で、木曽町の旧市町村単位にある民謡を集めて交歓会を開く計画で「伊那節の皆さんにも声をかけたい」と考えている。
「木曽町の福島関所まつりなどで伊那節も披露されている。双方のイベントなど機会をとらえて交流し、衰退していくまちの発展につなげたい」と楽しみにしながら伊那へ来る。
伊那、木曽の両地域で、それぞれ開かれる音楽祭には、相互に合唱グループや小学生らが出演。無理せず、継続できるような形が定着しつつある。
伊那のスプリングコンサートや「い縲怩ネ音楽祭」に参加した木曽の小学校関係者は「伊那の子どもたちのレベルは高く、参考になる」と話した。コンサートを企画するNPO法人クラシックワールド事務局長北沢理光さんは「お互いに刺激を受ける」という。
昨年6月の権兵衛トンネル開通記念の「手づくりの第九演奏会」には、伊那、木曽の両地域から一般公募した団員約300人がステージに立った。
開通前は別々に練習していたが、開通後は一堂に集まり、完成度を高めた。
団員は合唱に限らず、ソースかつどんやそばを食べに出かけたり、木曽から伊那に来て忘年会をしたりと地域の情報を交換する場にもなったようだ。
また、昨年2月、高遠町で伊那谷・木曽谷そば打ち交流会があり、両地域のそばグループから約30人が集まった。
地元産そば粉を使い、辛味大根を添えた高遠そば、具を煮たなべでひと口ほどのそばをゆでる投汁(とうじ)そば、つゆにすんき漬けを入れたすんきそばを用意。高遠そばを試食した木曽の参加者は「後から辛味がきて、おいしい」、木曽のそばに、地元住民は「すんきそばはすっぱいと思ったけど、さっぱりしている」と互いのそばを食べ比べた。
その後、高遠町の山室そばの会メンバーらが木曽ふるさと体験館=木曽町=に出向き、投汁そばを味わった。
同会は「トンネル開通で、交流のきっかけができた。これからも続けたい」と食文化での地域の活性化をねらう。
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木曽に本部を置く「kanaバレエスタジオ」の国崎智絵さん=木曽町=は昨年7月から、伊那市生涯学習センターで教室を開いている。
「トンネルが開いて近くなった。一人でも多くの人に、バレエの基礎を学んでいただきたい」と始め、地元の小学生や一般の約10人に指導。
月4回のペースで、木曽から約45分かけて通う。「大雪の日は、電車を使って塩尻経由で来た。やっぱりトンネルを利用すると便利」と木曽竏宙ノ那間の近さを実感した。
4月、木曽で開くスタジオ発表会には、伊那の生徒も出演するそうで、木曽と伊那の生徒同士が交流する場を持つ。
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さまざまな催し物を企画する県伊那文化会館にも、木曽からの来館者が増えた。
トンネル開通を機に、木曽の学校や木曽文化公園などにポスターやチラシを持ち込み、イベントをPR。開通前、ほとんどいなかった木曽からの観客は、開通後、千人規模のイベント(昨年秋縲・月)で30人ほどが入り、宣伝効果は表れている。プラネタリウムにも、小学生がクラス単位で年間に何度か訪れた。
「トンネル出口から近いこともあり、音楽や演劇に興味がある人は来館する」と利便性を挙げる。
一方、伊那市生涯学習センターは、木曽からの観客がいるものの「思った以上に、集客に結びついていない」。
今後、木曽へのPR方法を検討し、人を呼び込み、地域に潤いをもたらすことができればと考えている。 -
【権兵衛開通1年~その後の地域~(農産物交流)】
伊那地域の人にも木曽の赤カブを知ってもらおう竏秩B昨年11月、木曽の赤かぶの継承と特産品の開発に取り組む「木曽赤かぶネット」のメンバーは、「木曽の赤かぶフェアin伊那」を伊那市内で開いた。トンネルの開通に合わせた初の試みだった。PR販売で伊那地域の消費者と触れ合った赤かぶネット代表の西尾礼子さん(66)は「互いの地域にない農産品や特産品が行き来するようになればいいですね」と期待を込めた。
実際、権兵衛トンネルを通じた農産物交流はすでに始まっている。
トンネル開通以降、木曽から足を運ぶ消費者が増えた伊那市ますみヶ丘の農畜産物直売所「グリーンファーム産直市場」には、農産物を持ち込む木曽地域の生産者も増えている。現在、直売所の利用者登録をしている生産者は3人。しかし、キノコや山菜の時期には飛び込みで持ってくる人も多いという。
小林史麿代表は「今は農産物がない時期だが、カブの時期には、生産者が毎週カブを持って来ていた。『こんなものが売れるかと思って持ってきた農産物がみんな売れてしまった』と話す生産者もいる。今年はこういう人がもっと増えると思う」と語る。
店頭には、木曽の特産品である赤かぶの漬物やすんき漬けも置いているが、売れ行きは上々だという。
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一方、上伊那の生産者にとっても、木曽地域は地元農産物をPRする新天地となり得る。
基本的に農地の少ない木曽地域では、一人当たりの耕作規模も小さく、出荷のために農産物を生産している農家が少ない。主要品目はハクサイ、スイートコーン、インゲンなどに限られているが、地場消費に充てる程度の農産物を生産する地元農家が多く、こうした生産者が農産物を販売する手段として直売所活動が活発化。ウメ、ブルーベリー、リンゴ、花きなど、さまざまな農産物が直売所を通じて販売されている。しかし、こうした農産物は絶対量が少ないのが実情。
木曽農林振興事務所の職員は「果樹関係については、一部で生産している人もいるがほとんどが贈答用。昨年は三岳の直売所が下伊那の果樹生産者と提携して果物を販売した経緯もある。こちらの地域で弱い果樹関係や、生産されていない品種の花などは、上伊那から持ってきても販売の余地があるのでは」と語る。
しかし、木曽町の「道の駅三岳」の農産物直売所を利用する生産者の一人、田上勘一さんは、木曽地域の直売所事情を踏まえて次のように話す。「農産物交流についてはぜひやってみたいという思いもある。しかし、その場合は流通コストに見合うような売上が必要。時期にはわざわざ名古屋方面などから足を運んでくれるお客さんもいるが、時期外れが問題」
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そんな中、上伊那農業協同組合(JA上伊那)は、今年から本格的に農産物出荷を始めようとしている。
トンネル開通以降、JA上伊那は果樹や花などを木曽福島町にある「Aコープきそ店」などで試験的に販売してきた。木曽農業協同組合(JA木曽)が企画した地元イベントでは、上伊那の特産品として売り出している「すずらんのむヨーグルト」の試飲会を実施。あっという間に売り切れて好評だったという。
JAでも互いの地域にない農産物に関してはニーズがあると見込んでおり、地域間連携で農畜産物をやりとりしていこうとしている。
現在、Aコープきそ店は、別の地域で生産しているヨーグルトを販売しているが、今後はJA上伊那のヨーグルトに切り替える予定だという。 -
【権兵衛トンネル開通1年~その後の地域~労働力】
「市では06年度施策の一つに企業誘致を掲げ、取り組んできた結果、昨年は7つ、今年3月には新たに5つの誘致が締結される予定となっている。みなさんの中には求人難になるのではないかという懸念もあると思う。木曽の方から来てもらったり、地元に帰ってきてもらうような政策をとっていかなければならないと考えている」 今年1月、伊那商工会議所議員の新年の集いに招かれた小坂樫男伊那市長は述べた。
地方ではいまだ景気回復の実感が薄いと言われている中、上伊那地域の昨年の労働市場は、主要産業の製造業が引っぱる形で毎月4千人前後の有効求人数を記録。昨年10月には月間有効求人倍率が1・6倍となるなど、県内他地域と比較しても高水準で推移している。
こうした中、トンネルの向こう側から労働力を呼び込もうと動く上伊那企業も増えてきている。
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木曽福島町の職業安定所「ハローワークきそふくしま」では、トンネル開通から昨年12月までに伊那地域にある企業166社の261件、679人分の求人情報を公開し、実際に14人が伊那地域で就職した。職安の担当者は「こうした動きが出てきたのはトンネル開通後といっていい。互いの地域で、通勤圏内としての認識が広まっている。逆に、伊那まで求人情報を見に行った方が早いという人もいるようです」と話す。
その伊那の職安には、木曽地域から48人が登録し、9人が就職を決めている。
職安関係者の間では「案外少なかった」という印象もあるようだが、地域間交流が深まるのに連れ、こうした動きも活発化するのではないかとの見方もある。いずれにせよ、権兵衛トンネルの開通が独特な産業事情を抱える木曽住民の職業の選択の幅を広めたことには間違いない。
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求人の絶対数で見ると、伊那地域の5分の1縲・0分の1程度しかない木曽地域だが、有効求人数を有効求職者数で割った有効求人倍率でみると、月によっては県平均を大きく上回る月もある。
しかし、求職者がきちんと職を得ているかというと実情は異なる。月間有効求人倍率1・55倍を記録した昨年10月には、求職者340人に対し527件の求人があったが、実際に就職したのは36人。需要と供給が合致していない。
こうしたミスマッチが生じる背景には、木曽地域特有の産業形態と労働者事情が大きく関係している。
製造業が弱い木曽地域では、労働時間が不規則で土日・祝日休みがとれないサービス業やシーズンに合わせて働く季節雇用が約6割を占めている。一方、職安を通じて仕事を探す人の中心は家庭を持つ中高年世代。こうした求職者の場合、週末に休みを取れたり、時間的な融通の利く職場を希望する人が多く、サービス業を望まない傾向にあるという。
木曽福島職安の担当者は「一般的に、有効求人倍率は産業の活発な地域で高くなったりするが、木曽は季節に合わせて変化する特種な地域。賃金的レベルが高く、週末休みがとれる製造業を希望する人もいるが、こちらでは紹介も限られてしまうのが現状。ちょっと遠くても製造業の求人が多い伊那地域も含めて就職を考える人が増えているのは事実だと思います」と語る。
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木曽地域から伊那地域に出店した人もいる。
木曽郡上松町などに美容室2店舗を構える久保竹志さん(39)は昨年10月、南箕輪村の春日街道沿いに美容室「EX Turban」をオープンした。
オープンから約3カ月。現在は辰野方面から駒ヶ根方面まで、幅広い地域から利用者が来店しているという。「時々『新しくオープンしたから来てみた』っていう木曽のお客さんもいますね」とスタッフの一人は話す。
トンネルの開通を見込み、4、5年前から準備を進めてきた。スタッフは伊那地域で新たに雇用したが、美容の基本となる「技術」を移転するにも、互いに行き来できる最も近い地であると認識している。久保さんは「人口もあり、人の流れもある伊那での出店を考えていた。トンネルが開通したことで遠かった伊那が身近な地域となった」と話す。
“地域になくてはならないお店”を方針に掲げる同店では、伊那地域でも地域密着型の事業展開を図り、この地に根付いていこうとしている。 -
権兵衛トンネル開通後1年~交通~
国道361号伊那木曽連絡道路(権兵衛トンネル)の交通量は昨年12月末で、109万台を超えた。伊那インターチェンジ(IC)の利用台数が10%増加するなど高速道路と一体になった広域的な活用がみられる。木曽の国道19号を通過する大型車両の流入による混乱が心配されたが、伊那建設事務所では「渋滞も、暴走車もなく順調に推移している」と話す。
木曽建設事務所の交通量データ(開通翌日縲・2月末)によると、伊那から木曽が54万1663台、木曽から伊那が54万9142台。一番多かった日は、ゴールデンウィーク中の5月4日で1万台を突破した。1日当たりの平均は、両方向合わせて、平日が2745台、休日が4418台。通行車両の45%が県外車の利用となっている。
観光バスを含む大型車の混入率は累計で13・7%。2月当初と比べ、3倍以上に増えた。
木曽からの流入車両に対応し、南箕輪村沢尻に沢尻バイパスを建設、伊那市街地へう回させている。
昨年6月、伊那建設事務所の交通調査(12時間)で、361号から左折して沢尻バイパスを通った車が11・6%(515台)増、そのまま直進して川北信号機を下った車が9・3%(378台)増だったことがわかった。春日街道西側に位置する広域農道で一部拡幅、歩道設置が進められたが、大萱信号機の通過は3・8%(164台)増にとどまった。伊那インター線は10・3%増。
伊那建設事務所は、周辺道路整備の必要性について、大型車の通行に対応できる道路だが、交通実態を踏まえ、今後、検討するとしている。春には、車の流れを把握するため、範囲を広めて交通量を調査する。
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市町村合併や権兵衛トンネル開通に伴い、伊那市は「伊那地域における新たな交通ネットワークシステム構築のための検討会」を設け、新市の総合的な交通体系を検討している。
観光客の誘致や地域振興などの観点から▽新市発足に伴う旧市町村の生活交通のあり方▽権兵衛トンネルを利用した広域的な交通ネットワーク▽地域の観光資源を生かすための公共交通のあり方竏窒ネど木曽地域を含め、具体的な運行計画を練る。
地域住民アンケートで、伊那竏猪リ曽間の連絡バス利用を尋ねた。
その結果、伊那は「ぜひ利用してみたい」「条件次第で利用してみたい」が24・6%で、「全く利用しない」は34・3%だった。
利用ニーズの目的地は温泉、中山道宿場、開田高原、JR木曽福島駅などが上位を占めた。
検討会の座長を務める信州大学教育学部教授の石沢孝さんは「名古屋への直通バスがあるのに、JR木曽福島駅を利用する人がいる。ビジネス的な利用は十分にある」とみる。
一方、木曽は「利用してみたい」というニーズが48・2%で、「全く利用しない」の9・3%を大きく上回った。買い物、観光・保養、娯楽、通院などの利用ニーズが多かった。
料金設定は、いずれも500円縲恊迚~程度に集中している。
また、伊那・木曽を訪れた観光客の伊那竏猪リ曽間の連絡バス利用のニーズは約3割だった。利用する条件に▽運行本数が多ければ▽時間帯が合えば▽料金が安ければ竏窒ネどが挙がった。
今後、公共交通、観光交通、利用者らの現状や問題点をヒアリング調査し、新市の総合的な交通体系の基本方針をまとめる。
タクシー業界では、開通前に全くなかった木曽行きの利用が目立つ。
伊那市街地からJR木曽福島駅までのタクシー所要時間は約40分で、料金は9千円ほど。岡谷市まで行ける距離という。
伊那タクシーは月に数十件、木曽方面へ出向いている。JR木曽福島駅の送り迎えをはじめ、仕事や飲み会(週末)の帰りなどに利用する人が目立つという。夏場には観光を目的とした利用もあり「恩恵を受けている」という。
白川タクシーは月に数件で、JR木曽福島駅の活用がほとんど。地域住民が「近くなった木曽に行ってみるか」と奈良井宿や開田高原を観光で回るケースもあった。
今後の見通しについて「劇的に増えることはないだろう」と予測するが、花見の時期、高遠城址公園を訪れた観光客が立ち寄る一つの選択肢になると期待する。
木曽の情報は、観光パンフレット程度しかなく、ドライバーは実際に回って見た情報を交換している。
現状では、定期便の運行には至らないようだ。
昨年2月の開通後から、伊那バスは権兵衛トンネル開通記念としてバスツアーを企画。「トンネルを経由したコース設定は需要がある」といい、人気は高い。
これまで木曽の各所を見学する「木曽馬の里縲恁茆ヤ明神温泉」、トンネルを経由する「美しい上高地紅葉ツアー」など4コースが終了。地元を中心に、約1500人が利用し、関心の高さをうかがわせた。
7日からは「昼神温泉ツアー」がスタート。また、木曽見学として御嶽山周辺を組み入れている。 -
【権兵衛トンネル開通1年~その後の地域~観光】
「これまでは塩尻を回らなければ来れなかったけど、トンネルが開通してからは約30分で来れる。木曽にも温泉はあるが、こういう体験施設を兼ねそろえている場所はない。観光やレジャーで来るのにはとてもいい。何より、(高速と違って)通行料金がいらないのがいいね」。
塩尻市木曽平沢に住む百瀬順次さんはこの日、家族連れで伊那市西箕輪のみはらしいちご園を訪れた。初めていちご園を訪れたのはトンネル開通直後のこと。その後は、月に1、2回ほど伊那側を訪れ、日帰り温泉施設「みはらしの湯」などをよく利用している。
権兵衛トンネルの開通は、上伊那の観光産業にも新たな刺激を与えている。この1年で大きな影響を受けたのは伊那市西箕輪の農業公園みはらしファームや南箕輪村の大芝高原など、トンネル近郊の観光施設だ。
みはらしファームの体験農園の一つ、「伊那みはらしいちご園」では、ここ1、2年、来場者数が6万人台の前半まで落ち込んでいた。しかし、昨年は近年の実績を1万人以上上回る7万3千人が来場した。
泉沢勝人組合長は「予約データの中にも木曽から来ている人の情報がある。昨シーズンのピーク時には、木曽の人が毎日来ることもあった」と話す。
また、施設利用者の約半分を占める中京圏のお客にも、変化があった。「団体客より家族連れなど個々に来る人が増えた。木曽の国道19号から権兵衛トンネルを抜け、帰りは伊那インターを利用する人が増えているんだと思う」と語る。
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一方、トンネルから離れた地域には、それほど大きな影響はない。
駒ヶ根市を訪れる観光客の数は1992年の170万人をピークに、年々緩やかな減少傾向にあり、ここ数年は130万縲・40万人前後で推移する頭打ちの状態が続いている。
トンネル開通当初は、木曽谷とのアクセスルートが新たに開けたことにより、観光客数増のきっかけになれば竏窒ニ明るい希望を持った関係者も多かった。しかし、開通から1年経った現在、観光客の大きな増加には結びついていないようだ。
駅前の食堂の店主は「駒ケ根名物のソースかつ丼を食べに木曽から来た竏窒ニいう客も時折来るよ。トンネル開通以前にはこんなことはなかったね。まあ、今のところはもうけにつながるほどじゃない小さな動きだが、少しずつでも将来の活性化につながってくれればいいんじゃないか」と期待を託す。
駒ケ根市観光協会は駒ケ根と木曽を1日で回れる一つの観光地域として大都市圏にアピールしていこうと動き出している。協会の情報企画部長宮澤清高さんは「中央アルプスを挟んではいるが、点と点ではなく、つながった面としてとらえ、一つの観光ルートとしてコースをつくって提案していくなどの具体策に取り組んでいきたい。両地域の住民の間で互いの交流も始まったところなので、今後の展開に大いに期待したい」と話す。
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1年目はトンネル効果の恩恵があった観光施設にとっては、今後も持続的に観光客を確保することが課題となっている。
南箕輪村の大芝荘の山・ス文直支配人は「1年目は物珍しさも手伝って来てくれた。今後は毎年来てもらえるような取り組みをしていかなければならないが、大芝高原だけではせいぜい1日もあれば見て回れてしまう。これまで1泊だった人に2泊してもらえるようなプランを提供していくためには、上伊那の他地域と連携していくことも必要だと感じている。これからは観光メリットをいかにして共有するか」と語る。
大芝荘では広域連携に向け、他市町村への呼び掛け開めている。構想の中には、各市町村の観光名所を巡る「観光タクシー」などもあり、こうした企画は大型バスで訪れる観光客にも利用してもらえるのではないかと期待をかけている。 -
【権兵衛トンネル1年~その後の地域~】
2月4日、伊那と木曽を結ぶ権兵衛トンネルが開通して1年が経つ。伊那市中心街縲恂リ曽町福島中心街は約45分で結ばれ、これまで塩尻インターチェンジ経緯で1時間半ほどかかっていた両地域間の時間的距離は、大幅に短縮された。それに伴い上伊那では、観光、商工業、文化交流など、各分野でさまざまな変化が生じている。
【商業】
消費者の流出に強い不安を抱いた木曽側とは対照的に、伊那側では、トンネルの開通が商圏拡大のチャンスだと考える小売業者も多かった。特に期待を寄せていた大型店だけでなく、中心商店街でもトンネル開通前後に合わせて木曽地域に広告を配布。開通日には各地で記念イベントが催された。
しかし、1年が経過し、動向を見守ってきた大型店の多くは「もっと来てくれると期待していたが」と率直な感想をもらす。
伊那市の大型店「アピタ伊那店」では、開通直後に木曽地域にも広告を入れ、チラシを持ってきた人に記念品を贈呈する企画を実施。約1カ月はチラシを頼りに訪れる客がいたほか、半年ほど前までは大型バスで乗り付ける観光客も多かった。担当者は「会話の中で『木曽から来たんですよ』と話す人もおり、木曽から人が来ている実感はあるが、伊那の比にすると木曽から来ている人は微々たるもの。土日や季節の行事ごとに増えている気もするが」と語る。
同店ではトンネル開通以降も大きな企画を催す時に合わせ、木曽地域に広告を入れていたが、一年の動向を見て、今後は極端な誘客戦略を取らないことに決めた。その背景には「あそこへ行けば全部買い物ができる」と認識して客が日常的に買い物に来るようになるまでは、4、5年かかると見ていることも一つの要因となっている。
◇ ◇
一方、南箕輪村の大型スーパー「アップルランド伊那インター店」は、来期から本格的に木曽地域からの誘客を図るための取り組みを開始しようとしている。
同店では、開通直後の3月の時点で、来客数が1%、売上が3%増加し、その後も木曽側からの客が来ている様子がうかがえるものの、当初の期待に見合う効果は得られていない。しかし、大沢進店長は「実際に木曽地域にも行って見たが、順調に行けば30分で行き来できるようになった。木曽は伊那と比べて全体的に物価も高く、チャンスは非常に大きい」と誘客への意欲を見せる。
誘客戦略の一つとしては、木曽側にしかない特産品やあちらの生活の中で日常的に消費されている商品などを扱うことで、トンネルの向こう側から来る客の満足度を高めようと準備を進めている。また、こうした取り組みは、伊那地域の客にとっても刺激となるのでは竏窒ニの期待もあるという。
◇ ◇
中心商店街でも、トンネルの開通により木曽方面から訪れる人の声を聞くなど、それなりの変化を感じているが、知名度のある大型店に客が流れている実感の方が強い。
一部の有志は、年間行事を示したチラシを木曽側に入れ、誘客への意欲を燃やした。しかし、昨年は豪雨災害に伴い伊那まつりが中止となるなど、商店街をPRする機会すら少なかった。
いなっせに婦人服店「松屋」を構える松沢一男さんは「木曽の人にとっては、商店街がどこにあるかすら知らないのが現状だと思う。しかし、何かやらなければ結果は出ない。お客を引っぱりたいという思いはあるが、チラシを入れるのも予算がかかること。なかなか難しい」と話す。
また、大十呉服店の池上直樹さんは「『近くなったから』と足を運んでくれた人もいた。入舟交差点に入って道に迷う車が多いようで、よく道を尋ねられることもあるから、車も入ってきていることは確か。商店街に人が流れないのはまちに魅力がないせいもあるかもしれない」と語る。
◇ ◇
消費者流出の不安感が強かった木曽側の小売業者の中には、いったんは胸をなで下ろした人も少なくない。
木曽福島町のAコープきそ店はその一つ。同店ではトンネル開通後の約3カ月は、客足が遠のき、経営を圧迫したが、その後は消費者が戻り、現在もその状態が続いている。
しかし、消費者が流出することへの懸念がなくなったわけではない。平畠重行店長は「木曽が伊那地域の商圏の中に入ったのは事実。行楽シーズンに消費者が流れ出す傾向にあり、今後は波ができるのではないかと考えている。木曽は伊那側と比べて物価が高い。今後は価格調整をすることも必要かもしれない」と語る。
食料品など、日々の生活に密着した商品を扱う小売店には客が戻ってきたものの、総合小売業の「木曽福島サティ」では、土日を中心に売上が下がっているという。
同店ではサービス充実に努めることで、消費者の心をつかみたいとしているが、具体的な方策については今のところ考えていない。 -
伊那木曽連絡道路の開通に伴う交通変化(速報値)とその効果
飯田国土交通事務所などは28日、伊那木曽連絡道路の開通に伴う交通変化(速報値)とその効果を発表した。
当初予想された大型車の利用は少なく、観光、医療、経済、雇用など、あらゆる面で地域間交流が進んでいる。
開通後の1カ月の1日平均交通量は、平日2216台、休日6559台。休日利用は平日の約3倍になる。大型車の利用は平日・休日を平均して約4・7%に留まった。
国道19号線の迂回路としての機能も発揮しており、上松町内で交通事故による通行止めがあった3月12日は、伊那木曽連絡道路の交通量が約2・5倍増加した。
医療方面では、以前は見られなかった木曽地域の外来者が伊那中央病院を訪れており、2月4日縲・8日で17人が来院した。うち4人は緊急患者として搬送されており、医療ネットワークが充実した。
観光では、もともと利用者数の少なかった木曽側観光施設の利用者数が3倍、5倍、7倍と大幅に増加。もともと利用者数の多い伊那側は、1・1倍、数にして約3500人増となった。
ほかにも、木曽地域の新聞へ折込み広告を入れる伊那側のスーパーなどが増加し、伊那市の公共職業安定所で木曽地域も対象とした求人が15件あった。2月末現在で木曽地域から照会登録している人も7人いる。
木曽地域トンネル付近には大型量販店がないため、伊那市西箕輪の日帰り温泉施設・みはらしの湯を訪れる観光客の中には観光の一環として大型量販店を訪れたいと希望するグループもあるという。 -
春日街道~R361直線で接続
県などは、県道伊那箕輪線(通称・春日街道)の沢尻交差点(南箕輪村)から国道361号へつながる道などを新たに造る工事を24日、終了させた。権兵衛トンネルが開通し、車の交通が頻繁になる状況を、特に県道から国道に向かう車両の流れをスムーズに通すための工事。31日午後4時から、新道路の交通を開放する。
国道に対して、沢尻交差点からほぼ直角に接する道路と交差点(仮称=沢尻南)を造った。それぞれの道路をつなぐ川北町交差点(伊那市)が鋭角だったため、これまで大型車が交道を曲がることが困難な状況だったことを解消した。
新しい道路の全長は約300メートル。全幅は本線6・5メートル、右折車線(国道に向かって)3・0メートル、片側歩道2・5メートルなどを含む13・5メートル。用地買収や計画設計などは県が受け持ち、本工事は飯田国道事務所が昨年夏からはじめた。
新しい道路を造るにあたり、沢尻交差点を直角交差に整備するなどの工事費用も合わせて約5億円。 -
岐阜県東濃から観光PRのためのキャラバン隊来伊
権兵衛トンネルを抜けて東濃まで観光に来てください竏秩B岐阜県東濃地域振興局や同地区道の駅の代表者らでつくる観光キャラバン隊が14日、伊那市役所を訪れた。
伊那地域と東濃圏域はこれまでも、中央自動車道でつながっていたが、中央道利用者の多くは互いに立ち寄ることなく通過してしまう傾向にあった。東濃関係者らは、トンネルが開通したことで木曽を周遊して東濃まで足を運ぶ伊那地域の人が増加するのではないかと期待し、4月から新たに取り組む観光事業「ぎふ東濃アートツーリズム」をPRをするために来伊した。
この事業は、旅行者に著名な芸術家や陶芸家の作品にふれながら旅を楽しんでもらうことをコンセプトとしている。「マイレージ・パスポート」と称するパスポートを持ちながら、事業に参加する美術館などをめぐると、入館料に応じたマイルポイントが貯まり、ポイントと各道の駅の訪問回数に応じて美濃焼きなどの記念品を受け取ることができる(数量に限りあり)。
事業には28アート施設と道の駅10カ所が参加。温泉施設などが協賛している。
石黒雄教局長は「陶磁器の町で記念館などもある。ぜひ来てほしい」と呼びかけていた。
パスポートは東濃地域の道の駅、美術館などで入手でき、伊那市役所や木曽側の道の駅などにも置く予定。 -
権兵衛トンネル工事のパネル展示
伊那市役所1階の市民ホールに、権兵衛トンネル工事の写真パネル19点を展示している。17日まで。伊那と木曽を結ぶ権兵衛トンネル工事の流れや概要、難工事の様子などを紹介している。
権兵衛トンネルは延長4470メートル。98年10月から掘削を開始し、03年11月に貫通。舗装工事、電気設備、防災設備などを整え、2月4日に開通した。
パネル=A1判=は、重機での地山の掘削、地山を支えるための支保工の建て込み、開通式の現地セレモニーなど。「断層破砕帯に遭遇し、最大毎分10トンの出水に見舞われた」と難工事の様子も伝える。
市は「工事に携わった人たちの苦労を感じてもらえたら」と、飯田国道事務所からパネルを借りた。
合わせて、景観保全のための国道361号沿道自己用広告物のガイドライン「花街道サインシステム」の概要や模型も展示している。 -
手づくりの第九演奏会
伊那、木曽合同練習始まる伊那と木曽を結ぶ権兵衛トンネル開通を記念した「手づくりの第九演奏会」に向け、伊那地域と木曽地域の合唱団の合同練習が始まった。26日夜、伊那市の県伊那文化会館での初練習は約270人が参加し、本番と同じ大ホールのステージで練習に励んだ。
有志でつくる合唱団は伊那地域240人、木曽地域80人の総勢320人。中学生から70歳代までが集まり、伊那は昨年6月、木曽は7月から月1回の練習を重ねてきた。
木曽地域からは遠い人で車で1時間かけて合同練習に参加。発声、緊張しても高い声が出る体操などをし、合唱指導を受けて歌った。
合唱はドイツ語で、4月末までに暗譜する。今後は合同練習が月2回あり、5月末からオーケストラやソリストと一緒にやる。
演奏会は6月18日午後2時から。「ソリストに合唱団320人、オーケストラ80人。迫力ある演奏になると思う」と事務局。チケットはすでに完売に近いという。 -
上松町長らが観光をPR
伊那と木曽を結ぶ権兵衛トンネルが開通し、木曽郡上松町の田上正男町長をはじめ、観光や商工関係者ら7人が23日、来伊した。伊那市役所、伊那商工会議所、伊那食品工業、山荘ミルク、みはらしファームなどを回り、赤沢美林など観光をPRした。
伊那商工会議所では向山公人会頭、藤沢秀敬副会頭、伊藤正事務局長が応対。
田上町長らは、滞在型の森林セラピーの考え、オオヤマレンゲの増殖など「木曽の良さ」を紹介し、交通の便を含めて来町を呼びかけた。また、木曽ヒノキの産地であることから、ヒノキ材の有効活用にも期待し「お互いに連携して地域発展につながれば」と願った。
向山公人会頭は、高遠城址公園や春日公園など桜の名所を売り込みつつ、産業と結びつけた観光の必要性を示した。 -
観光戦略の拠点施設の検討結果に地元は懸念の声
伊那市は先月16日の市議会全員協議会で、権兵衛峠道路沿いに建設する「観光拠点施設」について、設置方法のあり方の調査・検討を委託した長野県経済研究所から報告された検討結果を示した。その内容が、地元住民や近隣施設関係者の不安感や懸念を高めている。
検討結果は「伊那市の出入り口にふさわしい地域情報発信交流施設」を基本コンセプトとし、収益を目指すものにしないとしている。しかし設備面では(1)トイレ、広場、足湯、食堂棟、物産館(2)大型車10台以上、普通車100台程度が入れる駐車場(2)良好な展望を確保する展望広場(4)観光拠点の情報棟竏窒ネどを設置することが示され、観光収入を見込める施設も存在する。総事業費は約8億円(排水施設を除く)。
建設をめぐり、市と話し合いなどをしてきた西箕輪地区の区長会では「ただの駐車場やごみ捨て場的な環境を害するものになるのでは」「既存の施設をどう振興するのかを考えるのが大切なのではないか」などの意見が出たという。
競合が懸念される農業公園みはらしファームの関係者も、同施設への不信感を強める。みはらしファーム運営会議の有賀正喜議長は、検討結果は決定事項でない竏窒ニしながらも「観光案内をする場所は必要だが、ただそれだけのものにすべき」と口調を強める。
市商工観光課は「今回の結果はあくまでも一つの提案」として、地元住民との話し合いの場などを設けることを検討している。しかし、地元の声がどの程度反映されるかはいまだ不透明な段階。今後の動向が注目される。 -
伊那谷・木曽谷そば交流で互いの味を食べ比べ
高遠町総合福祉センター「やますそ」で11日、伊那谷・木曽谷そば打ち交流があった。両地域のそばグループから約30人が集まり、お互いのそばを食べ比べた。権兵衛トンネル開通を機に、今後も交流を深めていきたいとしている。
参加したのは、高遠町の山室そばの会、王滝村のみずなら会、木曽町の木曽ふるさと体験館の3グループ。地元産そば粉を使い、辛味ダイコンを添えた高遠そば、具を煮たなべでひと口ほどのそばをゆでる投汁(とうじ)そば、つゆにすんき漬けを入れたすんきそばをそれぞれ用意した。
高遠そばを試食した木曽の参加者は「後から辛味がきて、おいしい」となかなかの評判。木曽のそばに、高遠住民は「とうじそばはつゆがおいしい」「すんきそばはすっぱいと思ったが、さっぱりしている」「十割そばに比べて、二八そばはのど越しがいい」と感想を述べた。
昨年、第1回高遠冬のそば祭りを開いたが、今回は地域の枠を超えて交流し、伝統の食文化そばで地域の活性化を図ろうと初めて企画した。関係者は、いずれ一般にも振る舞えるようなイベントに発展していけばと話した。
JR高遠駅前では、王滝村の農産物加工グループなどが物産を販売。
店頭には、塩の入っていない漬け物「すんき漬け」を加工したおやきやカレー、木曽ヒノキのチップなどをそろえた。木曽ヒノキのチップは袋に詰め放題で500円。「香り袋、脱臭剤、入浴剤などの用途がある」と売り込んだ。
立ち寄る人が多く、権兵衛トンネル開通で近くなったことから来村を呼びかけた。 -
伊那・木曽の眺めのいい場所を募っています
伊那青年会議所(JC)は、伊那と木曽を結ぶ権兵衛トンネル開通を機に、両地域の眺めのいい場所(ビューポイント)を紹介する「ビューポイントマップ」を作成する。9月30日まで、地域住民からビューポイントの情報を募集している。
マップづくりで、両地域の交流や地域資源の見直しをねらう。
JCは、寄せられた情報をもとに、オリジナルの「ビューポイントマップ」に仕上げる。10月以降、伊那市役所や木曽町役場などの公共施設に順次、展示する予定。
募集範囲は伊那市、南箕輪村、箕輪町、高遠町、長谷村、上松町、木曽町、王滝村。ビューポイントは山、川、町並み、寺院、花火など。「富県小学校付近から望む晩秋の夕日に映える経ケ岳」というように、できるだけ詳しく場所を指定する。地図を書いてもよい。また、写真(撮影日記入)、コメント(その場所にまつわる思い出など)を添える。写真は撮影から2年以内で、フロッピーやCDでも可。
郵送、メールで受け付けている。
問い合わせは、JC事務局(TEL78・2328)、またはまちづくり委員会(TEL090・8509・5794)へ。 -
人形も木曽との交流期待
高遠町で11日にある冬の風物詩「だるま市」を前に、町商工会が主催する恒例の人形飾りコンクールの作品が中心商店街にお目見えした。10日に審査会があり、本町実業団の権兵衛トンネルを題材にした作品が金賞に選ばれた。
人形飾りは市に合わせた各商店の誘客作戦がはじまりとされる。今年は実業団、金融機関、学校、役場の6団体が出品。町や町商工会職員、各種団体関係者ら約20人が、努力、アイデア、全体バランスなど6項目で審査し各賞を決定した。
本町実業団は、俵を背負った馬を引く馬子が権兵衛トンネルを通る場面を表現。トンネル開通直後で、木曽谷との交流に期待が高まっており「今年のだるま市を象徴する作品」と評価を受けた。
嶋村正登代表は「みんなで協力し、一生懸命取り組んだ努力の結果」と喜んでいる。
水戸黄門が権兵衛トンネルを通って、タカトオコヒンガンサクラの観光に訪れたという作品、高遠小学校3年生が空き瓶やペットボトル、粘土細工で未来都市を表現した作品も注目を集めた。 -
権兵衛トンネル開通で木曽側からの集客も期待
権兵衛トンネルの開通に伴い、木曽側からの集客に期待を寄せる小売店も出てきた。
南箕輪村にあるアップルランド伊那インター店は、開通前日の3日、木曽側の民家約6千戸に配られる新聞に折込み広告を入れた。
大澤進店長は「実際開通2日目にトンネルを抜けて木曽に行ってみたが、木曽側に出るまでは約20分で、時間的には駒ヶ根市などへ行くのと同じくらい。今後はお互いに知る機会も増え、向こうの集客を見込むチャンスもあると考えている」と話す。
実際には、人口の少ない木曽地域からの客が大きく数字に現れると考えていない。しかし同店は、中央道伊那インターチェンジの正面に位置しており、今後、東京方面に行こうとする木曽側の住民がこのインターを利用する機会が増えると見ている。こうした長期的な視点から、木曽側への早期PRに踏み切った。今後も折込み広告は定期的に配布する予定で、継続したアピールを展開していく。 -
トンネル開通記念の献立が好評 西箕輪小中学校
西箕輪学校共同調理場は6日、西箕輪小中学校の給食を権兵衛トンネル開通記念の献立にした。えごまみその五平もちや、ちくわをトンネルに見立てた揚げ物など591食分を用意、子どもたちに好評だった。
トンネル開通で木曽が近くなったことから、木曽の食材を味わおうと祝いの意味を込めた(栄養士・太田浩美さん)。メニューは、開田高原のかぶ菜を使った塩のない漬物「すんき」、地元産野菜を使った大平など。
西箕輪小1年生の中には早速、権兵衛トンネルを通ったという児童もいて、ちくわの穴をのぞき込むなど楽しんでから、大きな口を開けてかぶりついた。 -
木曽路ツアーが人気
伊那バスが企画した日帰りの「サンキュー木曽路ツアー竏猪リ曽馬の里縲恁茆ヤ明神温泉」が5日、あった。初回は伊那市、駒ケ根市、南箕輪村などの夫婦、家族、仲間連れなど42人が参加し、権兵衛トンネル開通によって結ばれた木曽との近さを実感した。
ツアーは、4日に開通したばかりの権兵衛トンネルを抜け、福島関所跡や木曽馬の里の見学、御嶽明神温泉「やまゆり荘」での入浴、奈良井宿の散策などが組まれた。
権兵衛トンネルは延長4・4キロで、5分ほどで通過。広域農道中の原信号機から木曽側の国道19号までの所要時間は25分ほどだった。
バスの中では、崩れやすい地質と大量の出水などで計画より2年遅れたなど工事中の苦労話が紹介された。また、参加者からの木曽節のリクエストに、バスガイドが音頭を取って一緒に歌う場面も。
木曽側の電光掲示板には、気温マイナス6度、5度などと示され、冷える1日だったが、うっすらと見える御岳山でゆっくりと温泉に入ってくつろいだり、行く先々で買い物を楽しんだりした。昼食には、開田のそばをはじめ、そばコロッケ、そば豆腐などを味わった。
娘夫婦に誘われて参加した駒ケ根市の中原ふさえさん(71)は「権兵衛峠を通るのに比べたら、本当にトンネルはあっという間。木曽が近くなったので、今度は夏に来てみたい」と話した。
ツアーは2月土・日曜日の7回を設定。1台につき40人だったが、反響の大きさに2便の運行に切り替え、500人まで増やした。ほぼ埋まっているため、平日の22日を追加。希望者は、申込金1千円を添えて申し込む。
今後のツアー企画については検討するという。
問い合わせは、伊那バス貸切課(TEL72・0002)へ。 -
【祝 権兵衛開通】各界各層の声(1)
■地元の暖かい支援に支えられた。うれしい
国土交通省飯田国道事務所 若尾豊信所長
工事の最初から今日の日まで、地元の方々のトンネル開通への熱い期待と、暖かい支援に支えられて工事を無事に終わらすことができた。本当にありがとうございます。プレイベントや第九の合唱など、伊那でも木曽でも、開通に向けたさまざまな取り組みが民間主導で進んだ。他に例のないことで、地域の期待を大きさを感じ、感動している。ぜひ、できた道路を通勤・通学・買い物など地元の生活に活かせる形で活用して欲しい。
工事を振り返ると、トンネル着工1年の99年の切り羽崩壊で掘削工事が止まり、施工方法の再検討をした時が一番大変だった。苦悩の末、水抜き坑掘削を選んだから今日の完成があったと思うと感慨深い。(開通祝賀会で)
■伊那・木曽が1つの地域として発展を
伊那建設事務所長 松下泰見所長
地域の皆さんの念願がかないとてもうれしい。これからトンネルを生かして、どのように伊那と木曽を1つの地域として発展させるかが重要だ。いろいろ思い出はあるが、今日トンネルに向かうバスの窓から見た、八ヶ岳から南アのパノラマが一番印象的だ。こんな素晴らしい自然の中に、いよいよ新しい道が開けるのかと思うと感慨深い。世話になった消防や警察の皆さん。それに飯田国道事務所など国の機関の皆さんに心からお礼を言いたい。(トンネル内現地セレモニーで)
■歴代先輩市長の努力の賜物、感無量だ
伊那市 小坂樫男市長
感無量。さまざまな人々の長年の懸命な努力が実った。今日は立春だが、まさに春が来たいう感じだ。先輩市長の三沢さん、原さんがトンネル開通に道筋をつけるため、必死に仕事をした。その甲斐があった。ちょうどタイミング良く、国の計画に認定されたが、もう少し時期がずれていたらダメだったろう。
地権者・国・県・工事関係者・地元住民全体の力で造った道路。これからそれを生かしていくために、新しい努力をはじめなければいけない。(現地セレモニーで)
■優良な酪農地帯を守りつつ、観光・商業振興を
南箕輪村 唐木一直村長
地域住民が念願したトンネルであり開通してうれしい。大芝高原を中心とした観光開発と商業振興につなげて行きたい。南箕輪村のトンネル付近の地域は優良な酪農地帯なので、それを守りながら、土地の有効活用をはかって行く。当面は、交通量がどの程度になるかを見極め、具体策を練り上げて行きたい。
(現地セレモニーで)
■次は、権兵衛とセットの伊南バイパスを
駒ヶ根市 中原正純市長
本当に感慨深い。市長就任直後に話が持ち上がり、伊那谷にとっての大きな課題になった。伊那と木曽の両地域で調査をしようということになり、市長になりたてなのに伊那側の委員を仰せつかった。今となっては懐かしい話だ。忘れてはいけないのは、その当初プランの時から、権兵衛トンネルは国道153号伊那バイパス・伊南バイパスとセットになっていたものだということだ。伊南バイパスの早急に整備し、伊那谷と木曽谷との連携を寄り緊密なものにしていく必要があると思う。(開通祝賀会で) -
【祝 権兵衛開通】各界各層の声(2)
■木曽と伊那、全体でプラスになる方向で
木曽町 田中勝已町長
開通はとてもうれしい。首都圏からの観光客誘致など、木曽にとっては大きなメリットが出てくる。高遠の桜などを見に来た人に、木曽に泊ってもらうなど、積極的な働きかけが重要だろう。一方、買い物などでは、塩尻や中津川に出ていた木曽の人が、伊那に出てくることが多くなるだろう。このことが木曽の商店街の荒廃につながるという見方をする人もあるが、木曽町としては、それを見越してさまざまな対策をしてきてた。とにかく、片方だけが良くなり、もう一方はダメになるというのではなく、木曽・伊那双方にとって全体としてプラスになるように知恵を出し合っていかなければいけないだろう。(現地セレモニーで)
■トンネルを出てからが要注意
伊那警察署 中山均署長
開通は伊那と木曽の交通事情を一変させるだろう。立派な道路なので、自己が無いように安全運転を心がけて欲しい。トンネルの中では緊張するからまだ良いが、伊那側も木曽側もトンネルを抜けてからが要注意。まっすぐなところもあって下り坂だからスピードを出しすぎると、すぐに急カーブがあったりして危険だ。特に、木曽から伊那に抜けてくると、南アルプスの眺望が素晴らしく、見とれていると危険。景色を楽しむには、車を止めるなどして、常に安全運転を心がけて欲しい。(開通祝賀会で)
■結ばれるからこそ、それぞれの個性を
長野県 田中康夫知事
伊那と木曽はそれぞれに、古く過酷な歴史の中で育んできた地域の個性がある。そういう地域がトンネルで結ばれるからこそ、それぞれはより各地域の独自性・個性を大切にして行かなければならないはずだ。交通が便利になると、その地域の本当の志や個性がないと金太郎飴のようなのっぺりとした顔の町ばかりになってしまう。だから、これからは、より地域の個性・独自性を磨き上げていく必要があるだろう。
(セレモニーで)
■親父の秘書時代から活動に関与、感慨深い
衆院議員 宮下一郎さん
地域の皆さんの念願であり、親父(宮下創平元衆院議員)から引き継いだ仕事でもあるので、開通して感慨ひとしおだ。特に平成5年に国の予算で調査費がついた時のことを印象深く覚えている。権兵衛峠・姥神峠トンネル開削促進期成同盟会の活発な活動があり、陳情の来られる皆さんとお会いするなどして、かかわらせていただいてきた。
そういう長年の地元を努力が実ったのが今回の開通だ。
これからは伊那谷も木曽谷も一体的にひとつの地域として、協力連携して発展できるようにして行けたらと思う。 -
権兵衛道路 5日上下で1万1千台
開通した権兵衛峠道路・姥神峠道路は5日、つながった谷を往来する車が殺到し、正午過ぎには、木曽側の国道19号合流地点手前で、姥神トンネルまでの約3キロが渋滞した。伊那側でも広域農道の中の原交差点西側で、車が数珠つなぎになった。
この状況を受け、木曽警察署は週末の混雑緩和に向け、19号合流地点の交通信号の時間調整を行う方向で検討を開始。一方、伊那警察署は、混雑したが信号1縲・回で待機車輌は通過しており、「当面様子を見る」としている。
道路を管理する県木曽建設事務所の発表によれば、5日午前7時縲・日午前7時までの交通量は伊那から木曽が5千562台、木曽から伊那が5千796台で、合計1万1千台を突破した。4日午後2時の開通から5日午前7時までは同じく2千927台、3千78台だった。
4・5日とも夜間にはスムーズに流れる状態になり、6日も雪の影響もあるとはいえ、目立つほどの交通量ではなかった。
5・6日に当初予定を大きく上回る車輌が集中したことについて、伊那建設事務所は、祝賀ムードと日曜日が重なったためと見ており、ムードが収まるのを待って交通量の調査に乗り出すとしている。 -
権兵衛トンネル開通記念イベント各地で
権兵衛トンネルが開通した4日、伊那市内の各地で記念イベントがあり、多くの人たちでにぎわった。
伊那市駅前ビル「いなっせ」では、伊那中学校吹奏楽部のコンサートや宝投げがあった。
伊那市境区の食品製造・販売店「シャトレ」(黒河内明夫社長)が開通記念で開発した「ローメンまん」の無料サービスには、多くの人が行列をつくった。当初は、配り始めを午後2時10分からにしていたが、正午ころから並び始めたため、急きょ整理券を配布。午後1時半ころには、限定数100枚を配り終えた。
整理券を一番に手にした親子は「テレビや広告で見て一度食べてみようと思った」と話していた。また、別の親子は「思ったより美味しい。癖がないから子どもでも食べられる」とアツアツのローメンまんを仲良く味わっていた。 -
権兵衛開通
式典・祝賀会にぎやかに権兵衛峠道路・姥神峠道路の開通を祝う式典は4日正午から伊那市民体育館であった。トンネル内現地セレモニー出席者を乗せたバスが次々と乗り付け、合計500人の参集があった。
主催は国土交通省中部地方整備局飯田国道事務所、長野県、伊那建設事務所・木曽建設事務所。
国土交通省の大村哲夫中部地方整備局長は、1993年権限代行による事業化以降を振り返り、開通にこぎつけた喜びをこめて式辞。主催者あいさつとして、後藤茂之国土交通大臣政務官が「地元住民と関係各位の努力で、中央道と国道19号が一体となって機能する道路ができた」、田中康夫長野県知事が「古畑権兵衛の志を現代に引継ぎ、単なる通過道路としてでなく、特色ある地域の個性を発展させる道にしよう」竏窒ネどとそれぞれあいさつした。
大型プロジェクターの画像を使った若尾豊信飯田国道事務所長、北沢陽二郎木曽建設事務所長の工事報告では、権兵衛トンネルの軟弱な地質での苦労や、姥神峠道路の崩壊しやすい山肌にたいする苦労などが説明され、参加者は静かに聞き入った。
宮下一郎衆院議員、羽田雄一郎参院国土交通委員長、若林正俊参院議員、北澤俊美参院議員、県議会議長代理として向山公人県議会土木住宅委員長、国道361号改修促進期成同盟会会長の土野守高山市長が祝辞を述べた。
式典終了後は隣接する伊那勤労福祉センターに会場を移し、権兵衛峠・姥神峠トンネル開削促進期成同盟会と国道361号改修促進期成同盟会の主催による祝賀会があった。
伊那と木曽の樽酒4つを一斉に割る鏡割りや、伊那節・木曽節の披露など、2つの谷がつながったことを印象づけるアトラクションが用意された。 -
トンネル開通に寄せる思い
〈伊那側〉
◆商店街として、木曽側と交流する計画もしている。地域同士の交流が活性化することに大いに期待する(商店街活性化イベント委員会・石川潔委員長)
◆待望のトンネルが開通した。木曽側から来た人たちにも「よかったな」と感じてもらえるよう、とれたて市場を利用してもらい、より良い交流をしていきたい(みはらしファームとれたて市場生産者組合・原伊一組合長)
◆前々から色んな面で期待しており、開通を機に、優良な交流が進むことを期待している。これまでとは違い「隣町だからすぐ行ける」という感覚が強くなると思う(みはらしの湯・唐澤壽男支配人)
◆わずか30分で木曽まで行けるようになったので、土日を利用して若い人に連れて行ってもらいたい。行くのはもう少し混雑が収まってからになると思うが(伊那市富県・女性)
◆木曽の人たちが伊那を通るときに、きたっせや山寺の商店街のことを知ってもらい買い物をしてほしい。そのための魅力ある商売をするために商店が協力し合っていきたい
(伊那商工会議所伊那北駅周辺推進委員長・矢野昌志さん63歳)
◆伊那と木曽の商店街がお互いに協力し合って商店の活性化を進めたい。八幡町に素晴らしい商店街があることも知ってほしい
(八幡町実業団協同組合理事長・尾崎晃一さん)
◆木曽との流通が盛んになったら、観光の面で集客力が上がることを期待する。木曽の人たちには、伊那の素朴で暖かい人柄を知ってほしい
(伊那市山寺・酒販売店長・宮澤智恵さん41歳)
◆木曽には何があるのか分からない。一回も行ったことがないので観光に行ってみたい
(伊那市西箕輪・菓子屋店員・本島揚子さん20歳)
◆古い街並みなど観光名所がある木曽が近くなっても、乗用車のない人にとっては不便となる。伊那から巡回バスを通してもらいたい。今まで山があって行けなかった人もいるので
(伊那市山寺・城倉広夫さん79歳)
◆温泉やスキー場など家族で日帰り旅行に行ってみたい
(伊那市御園・小椋令子さん31歳)
◆木曽の阿寺渓谷が近くなることが嬉しい。今までは年一回だったが、河原がきれいな夏場は月に一回は行きたい。伊那からは木曽へ観光に行く人が多いと思うが、伊那には観光地がないことが心配される
(伊那市在住・自営業女性53歳)
◆ローメンまんをきっかけに木曽の人にも食べてもらい、伊那のローメンを多くの人に知ってもらいたい。木曽から高遠のお花見客が多く来られると思うので、集客もにぎやかになりそう
(シャトレ・黒河内直明さん30歳)
◆トンネルが開通し交通量が増えれば、山道なので冬のスリップ事故、スピードの出しすぎなどが増えることが心配。大きな垣根がとっぱわれたので近くて遠かった木曽との人間の交流が期待される
(伊那市西箕輪・市交通安全協会連合会長・原義一さん70歳)
〈木曽側〉
◆開通の記念にトンネルを通ってきた。雪があるかと思っていたが、なかったのでびっくりしている。みはらしの湯に入っていく予定(木曽町・中野倍穂さん)
◆開通に10年かかったというのはすごい。トンネルと通ってきたが、立派な道だった。いとんな人との交流を期待したい(木曽町・中野義秋さん)
◆来る時は飯田から回って来たが、帰りはトンネルを通って帰る。木曽側を多くの人が訪れ、伊那地域との交流が深まればよい(塩尻市・磯尾雅子)
◆塩尻市からお風呂に入りにきた。開通記念に木曽から抜けてきたが、塩尻から伊那に来るなら、トンネルを通過しないルートを通っても、距離的には同じくらい。トンネルの通り心地は良かった(塩尻市・小笠原豊) -
開通を祝い、紅白もちなど配る
伊那・木曽の権兵衛トンネル出入り口付近で4日、ドライバーに先着各30人にナンバー入りの通行証明証を手渡した。また、観光パンフレットなども配り、まちをPRした。
木曽側は、開通を祝う紅白のもち菓子「すあま」のほか、観光パンフレットやスキー場割引券など500人分を用意。
横断幕「ようこそ日本のふるさと木曽町へ」を掲げ、役場職員や商工会員15人が沿道に立った。気温マイナス6度で冷たい風が吹いていたものの、職員らは伊那から木曽に入ったドライバーを笑顔で出迎えた。
木曽町PRに当たった職員は、トンネル開通で▽伊那との新たな交流が生まれる▽国道19号で事故が発生したとき、う回することができる▽東京から高速で来た場合、伊那のインターから降りれば、これまでより30分短縮できる竏窒ネどのメリットを挙げ、誘客に期待。女性職員は「早速、イチゴ狩りに行きたい」と楽しみにしていた。
そのほか、町内でも振る舞い酒などがあり、祝いムードが漂った。
伊那側でも、通行者に市のイメージキャラクター「イーナちゃん」グッズなどの記念品を手渡した。 -
伊那と木曽を結ぶ権兵衛トンネル開通
中央アルプスを貫き、伊那と木曽を結ぶ権兵衛トンネルが4日、開通した。通行不能区間を解消したことで、時間と距離の短縮、救急医療体制の充実、国道や高速道路の代替、通勤・通学のエリア拡大などが期待される。
現地でのセレモニーは、権兵衛トンネル内のほぼ中央地点であり、地権者、国・県・市町村関係者、施工業者ら約500人が出席。
オープニングで、伊那の小出太鼓、木曽の日義巴(ともえ)太鼓の演奏が響き、開通に花を添えた。
出席者は伊那側、木曽側が向き合う形で並び、国や県、国道361号権兵衛峠・姥神峠トンネル開削促進規制同盟会の関係者19人がテープカット。合わせて、出席者代表33人が二手に分かれてくす玉を割った。
そのあと、太鼓の音が響く中、伊那側から25台、木曽側から16台の乗用車・大型バスが式典会場の伊那市民体育館までパレードした。
国道361号は、岐阜県高山市を起点に、高遠町に至る延長152キロで、今回の供用開始区間は塩尻市竏宙ノ那市与地の延長9・9キロ。事業費は約605億円。権兵衛トンネルは延長4・4キロで、幅員9・5メートルの2車線。着工から7年の歳月をかけた。
開通前には、自動車の長い列ができるほどで、開通を待ちわびた地域住民らの関心の高さをうかがわせた。 -
トンネル開通 木曽側一番乗りは金原俊雄さん
権兵衛トンネルの木曽側一番乗りは会社員金原俊雄さん(56)=岡谷市。北海道、九州を除いて全国各地の高速道路などの開通1番乗りに挑戦しており、権兵衛トンネルが25度目の達成となった。
3日午後11時半ごろに到着。寝袋を持参して一晩を自動車の中で過ごした。
開通までの時間を利用し「一台目は華やかがいいでしょう」と自動車に「開通・おめでとう」の文字とトンネルをデザインした看板を取り付け。日の丸の旗や電飾などでにぎやかに飾った。
周囲からあおられたそうだが、1日に下見へ来るほどの徹底ぶり。景色が広がる伊那へ抜けるため、木曽側に並んだ。
「せっかくだから、みはらしファームに寄っていこうか」と話していた。
2番手は木曽町の無職男性(71)。4日午前6時前に並び「たまたま2番だった」。伊那方面に親せきがいることから、権兵衛峠を通って年5回ほど出向いていた。「これからは近くなって便利。買い物は塩尻に行っていたが、伊那にも行ける」と喜んだ。 -
小学生が安全運転呼びかけ
権兵衛トンネルが開通した4日、伊那市交通安全協会連合会(原義一会長)は、トンネル伊那側出口チェーンベースで交通指導所を設置した。通学路の交通量が増えるのを懸念した近くの西箕輪小学校6年生など約80人が参加し、事故防止を呼びかけた。
6年生は国道361号とつながる通学路の県道・与地辰野線について注意を促すメッセージレターと「しおり」を300枚づつ配布。児童たちは「私たちの通る通学路は細くて狭いので、できるだけ迂回してほしい」などとドライバーに話しかけていた。
交通指導所では先着30人に通行証明所を配布。そのほか、伊那・木曽の観光パンフレット、伊那市産のコシヒカリ「伊那華の米」など300セットを配った。
伊那署交通課の下里幸巳課長は「木曽と伊那の連絡道路として人や文化の交流が深まることを期待するが、交通の流れについては予想がつかない。そのためにも初日から交通事故防止を呼びかけることが必要」と話していた。 -
木曽谷交流物産展
権兵衛トンネル開通を記念して木曽の伝統工芸品などを紹介する木曽谷・伊那谷交流観光物産展が駒ケ根駅前ビル・アルパで始まった。駒ケ根市観光協会、駒ケ根商工会議所など主催。木曽の老舗が出店し、わん、盆などの漆器やろくろ細工、曲物などの工芸品を多数展示即売中。訪れた市民らは珍しそうに品物を手に取って「こっちにはあんまりない物だね」などと話しながら買い求めている。伊那谷からは伊那紬が出展されている。
実演コーナーでは信州の名工に認定された篠原武さん(63)が、3代にわたって使えるという伝統のお六櫛(ぐし)の製作と即売を行っている=写真。4代目の篠原さんは「トンネルが開いて行き来が活発になり、お六櫛(ぐし)の良さをたくさんの人に分かってもらえたらうれしいね」と話す。お六櫛(ぐし)を作れる職人は木曽でも今や数人しかいないという。
7日まで開催。午前10時縲恁゚後7時。