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県環境保全研究所 公開セミナー
県環境保全研究所は3日、伊那市の県伊那合同庁舎で、同所員の研究成果を地域住民に紹介するための公開セミナーを開いた。上伊那を中心とした約80人が参加し、報告者6人が県内の外来生物の現状や対策などについて発表した=写真。
毎年恒例のセミナーで、本年は「信州の自然に今起きていること」と題し、伊那市と大町市の2会場で実施。各会場の地域の特色にあった研究課題をテーマに、所員らがそれぞれ報告している。
伊那会場では、県内で指定された外来生物である鳥類のソウシチョウや、中央アルプスに繁殖する希少植物のコマウスユキソウなどの現状をテーマに語った。
同研究所自然環境部の須賀丈さんは、トマトなどの施設栽培作物の送粉者として輸入してきた外来昆虫のセイヨウオオマルハナバチが及ぼす生態系への影響について発表。「競争力が強く、一部の地域で在来のマルハナバチを衰退さることもある」などとスライドを使って説明した。
「信州は日本では北海道とならぶマルハナバチの生息適地。ほかにも北方系の在来種が希少種として遺存していて、こういった貴重な生態系を守るための対策が必要」と訴えた。 -
昨年7月豪雨災害検証、防災にシンポジウム
昨年7月の豪雨災害を検証し、今後の防災について考えるシンポジウム「平成18年7月豪雨と上伊那の土砂災害竏猪「来への提言竏秩vが7日、辰野町の町民会館であり、関係者や一般参加者ら800人以上が詰め掛けた。
主催は、上伊那8市町村、県治水砂防協会上伊那支部、伊那建設事務所でつくる実行委員会。基調講演や事例発表、パネルディスカッションを通して、災害の悲惨さを後世に語り継ぐとともに、災害から命を守るための情報発信の場とした。
事例紹介では、被災地域、消防や警察、自治体などから7人が発表。人家への土砂流入を防ぐことや区民の避難誘導などにあたった箕輪町北小河内区長の丸山全二さんは「想像を絶する凄まじいものだった」と当時を振り返り「自主防災組織が有効に機能できるようにしていく必要がある」などと今後の備えについて語った。
パネルディスカッションのテーマは「不測の土砂災害にいかに備えるか」。信州大学の平松晋也教授の進行で、伊那市、箕輪町、辰野町の首長、伊那建設事務所長、県砂防課長5人が討論した。
土砂災害による被害について原義文県砂防課長は「土砂災害がよく発生する降雨のピークが過ぎると安心してか、遅れて発生する土砂災害に対応できていないことがよくある」と指摘した。
土砂災害防止への今後の取り組みで、箕輪町の平沢豊満町長は「情報の発信と収集の体制を重点的に考えていきたい」と述べた。 -
アルプスバラ会が冬の剪定
伊那市通り町の25鉢上伊那のバラ愛好者でつくるアルプスバラ会は6日、伊那市の中心商店街・通り町一丁目に同会が設置した鉢バラの手入れをした。
会員7人が、大小25鉢に植えられたバラを次々と剪定しながら、丈の長いツルバラはオベリスク(四本支柱)に巧みに巻き付けて形を整えた。
「地域に花と緑を」をテーマとする同会が通り町に鉢バラを設置したのは04年の春。全て異なった種類が植えられた25鉢が咲き誇るため、商店街があたかも「バラ園」のようになる竏窒ニ話題になっている。会によると、商店街にバラをこれだけ揃えている例は県内でもあまりないようだ。
同商店街に置かれたバラはいずれも四季咲きだが、5月にきれいな一番花を鑑賞するためには、この時期の剪定や誘引(ツルバラの枝を形良く整える)は欠かせない作業。暖かい冬の影響ですでに芽吹いているバラもあり、会員らは新芽を傷つけないように、慎重にはさみを動かしていた。
アルプスバラ会は、元高校教諭が上伊那各地で開いている「バラ教室」の生徒らが、教室の連携で栽培技術向上と親睦を図ろうと04年に結成。話題の「アンネのバラ」を増殖して普及させるなど、ユニークな活動を展開している。会員約100人。 -
ガールスカウトのワールドシンキングデイ
世界中のガールスカウトが想い、行動する日とされている「ワールドシンキングデイ」のイベントが4日、箕輪町の松島コミュニティーセンターであり、南信地区のスカウトら約150人が、さまざまな国に住む仲間のスカウトらに思いをはせた。
ガールスカウトの創始者・ベーデン・ポウエル氏の誕生日に合わせて毎年行っているもので、国際的な活動を支援する献金をしたり、世界の実情を学ぶ機会としている。今年は、飯田、駒ヶ根、伊那、箕輪地区にある5団が合同でイベントを開催した。
「ファンド」では、みんなで輪を作り、真ん中に置いたかごの中に一人ひとりが献金=写真。その後、モンゴルから高森町に嫁いだ佐々木ハスグレルさんによるお話と楽器演奏があり、世界のさまざまな国について考えた。
スカウトらの献金は、生活に苦労している国の会員などへ送られる。 -
ニシザワが本を寄贈
ニシザワ(本社・伊那市、荒木康雄社長)は、上伊那の38小学校の図書館に絵本などの本を寄贈している。創業80周年を迎えた3年前から続く事業。初日の6日は、箕輪町の箕輪中部小学校(小野正行校長、694人)へ本を届けた=写真。
ニシザワは、1924(大正)年、伊那市通り町に「西澤書店」として創業。これまでの感謝を伝えるため、創業原点である図書の寄贈を始めた。今年は、38校に希望の図書をリストアップしてもらい、82万円分(600冊以上)の図書を購入した。
箕輪中部小を訪れた荒木社長は「地域の未来を支える担い手である子どもたちの健全な育成に役立てば」と本を同校図書委員3人に手渡した。図書委員長の田中まみちゃん(12)は「卒業するまでの期間に寄贈していただいた本を全部読みたい」と話した。
今後、ニシザワのスパーなど各店舗の店長が各小学校へ本を寄贈する予定となっている。 -
美篶小学校で上伊那産のシメジを使った地産地消給食
上伊那の農畜産物を知ってもらおう竏窒ニ6日、伊那市の美篶小学校で上伊那農業協同組合(JA上伊那)が提供した上伊那産「やまびこしめじ」を使った給食が出され、児童と生産者が給食交流をした。
取り組みは地産地消を目的とする「農と食の給食事業」の一環で、上伊那農政対策委員会が共催している。
今年は管内にある52の小中学校(養護学校を含む)に食材を提供。各校のメニューに合わせ、やまびこしめじ280キロ、ネギ270キロ、卵10800個、約50万円相当を16日までの間に無償提供する予定で、酪農家が多い箕輪町地区ではJA上伊那が製造販売している「すずらん牛乳」も提供する。
また、期間中は生産者やJA上伊那の関係者などが各校を訪問。ともに給食を食べながら生産現場の声を伝えることで、地元農業への理解を深めてもらおうと考えている。
この日提供したやまびこしめじは、すまし汁となって登場。児童らは「もっとキノコちょうだい」「おいしい」などと話しながらその味を楽しんでいた。
07年度、JA上伊那は各支所単位で近くの小中学校と連携し、上伊那産の農産物を学校給食に供給していく。 -
多彩な花色、咲き方で「はまる」面白さ
うつむき加減に咲く花はバラ(ローズ)というには余りにつつましく、そそと咲く風情はシャクヤク(和名寒シャクヤク)にも似ず、可れん。
耐寒性に優れた常緑宿根草で和風の庭にも洋風庭園にも合う。花の少ない冬から早春に咲き、5月まで楽しめる。
キンポウゲ科の多年草で、原産地はヨーロッパ、特にバルカン地方に多くの原種が見られる。
数種の原種同士の人為的交配により、オリエンタリス系が登場。以後、自然交雑や交配により、花色は白、桃、紅、黄色、緑から黒までと、無数の中間色がある。咲き方も一重から八重、セミダブル(アネモネ咲き)。花の模様も無地から、スポットのあるもの、固まってあるもの、編模様、覆輪と多彩。花色と花の模様、咲き方の組み合わせで花の種類は無限。1度栽培したら「はまる」面白さ。清楚な美しさに引かれ、5千鉢を育てる宮沢繁夫さん(飯島町鳥居原)、洋風庭園で百株余を咲かせる中城澄子さん(駒ケ根市北割1区)、地元産からメリクロンの最新品種までそろえるグリーンファーム(伊那市ますみケ原)で取材させていただいた(大口国江)
##(中見出し)
鑑賞期間が長く、自然交配で色々な花が出るのが魅力、宮沢繁夫さん
「花弁に見えるのは実はがくで、花弁は退化し、密腺となっている。がくは数カ月も散らないため、長く楽しめる」。
飯島町鳥居原の宮沢繁夫さんの140坪のハウスでは、純白から濃赤までオリエンタリス系のクリスマスローズ約5千鉢余が咲き始め、3、4個開いた鉢から、枯れ葉を取り、雑草を抜くなど、出荷作業に追われている。
宮沢さんは昨年末に出荷が終わるシクラメンの後作にと、10年前にオリエンタリス系を導入した。
11月初旬に自家採取の種を箱まき。翌年4月本葉2、3枚で9センチポットに移植。翌々年1月15センチの鉢に植え出荷する。3年がかりの時間の掛かる花だが「年末までは戸外で、シクラメンの出荷が終わった後、ハウスに取りこむ。燃料費も手間も余り掛からない」。耐寒性はあるが、夏の暑さに弱いとか。
「自然交配でいろいろな花が咲き、派手ではないが、魅力的な花。庭があれば、落葉樹の根元に植えておくと、大株になり、管理も楽」と話す。
##(中見出し)
オリエンタリス系や有茎種など百株余を育てる中城澄子さん
駒ケ根市北割の五十鈴神社近くで手づくりガーデン喫茶「プチ」を営む中城さんもクリスマスローズにはまっている1人。「高齢になって、手が掛かるバラが作れなくなったら、庭一面にクリスマスローズを植えたい」。
10数年前、庭を手作りした時に数株植えたた。繁殖力が旺盛で、日陰でもよく育ち、花弁が丸く、白から赤、緑、神秘的な黒まで色彩豊かなオリエンタリス系が早春から次々と咲く。
また、太い茎が50センチ以上伸び、緑色の小さな花が葉の上で群がって咲く有茎種(木立性)の「ファヌチス」も数株あり、雪の中でも元気、不思議な景色を作っている。
「ほかの花の邪魔にならず、ほっといても頑張っている。種が落ちてどんどん増える。花のない冬期間ずっと咲き続けている」とすっかり気に入っている。
##(中見だし)
花色豊富、咲き方も多彩、最新花も並ぶ、グリーンファーム
伊那市ますみケ丘の産直市場、グリーンファームでは、地元の農家が出荷したオリエンタリス系の多彩な花が並んでいる。白からピンク、濃い赤、グリーン系など様々な色、咲き方も一重やセミダブル、八重と多彩。
また、市場仕入れのメリクロンの最新花、真紅の「ペギーパラード」、オレンジ系の「テリックスミティーII」など大輪で鮮やかな花色の種類や、灰緑色の葉がシックな有茎種「アーグチフェリス」など珍しい種類も並び、目を楽しませてくれる。
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こぼれ話
クリスマスローズの名の由来はクリスマスの頃咲くバラのような花の意味、ノイガー(ニゲル)のように名前の通り、12月末ころ咲く原種もある。
古代ギリシャ時代には根は狂気を治す霊薬の1つと信じられ、花言葉は「私の不安を救いたまえ」。
また、「幼子イエスを祝福する花」とも呼ばれる。これは貧しい羊飼いの少女が、天使の助けで、雪の中に咲く、この花を摘み、神の子イエスに贈ったという伝説から。 -
『伊那路』50年・600号記念、公開歴史講演会
上伊那郷土研究会は3日、『伊那路』50年・600号発刊記念の公開歴史講演会を伊那市の生涯学習センターで開いた。国学院大学
の倉石忠彦教授を講師に迎え、『伊那路』の創刊に尽力し、日本民俗学会の最高栄誉である柳田国男賞などを受賞した故・向山雅重氏の民俗学について学んだ=写真。県立歴史館共催。
倉石さんは、共に携わった長野県史の編さんを通して学んだ向山氏の民俗学について講演。「有形文化だけでなく、そこにある生活にまで目を向け、それを一つの資料として地域の生活実態を体系的に把握しようと努めていた。会話を通して、話し相手が気付いていなかった事実まで話させてしまうような独特な調査だったと思う」と当時を振り返り、民俗学は、現在の生活を見つめ、その中からよりよい生活を見出す役割も担っていることを指摘した。
また、前上伊那郷土研究会長・竹入弘元さんなどによる講演もあり、箕輪町出身の放浪の石工・藤森吉弥の生涯について語られた。 -
高校生ファッションショー開催
南信地区の高校生や服飾専門学校生によるファッションショー「colorful snow(カラフル・スノー)」が4日、伊那市の生涯学習センターであった。高校生など多くの観客が駆けつけ、若い感性でデザインされたファッションの数々を楽しんだ=写真。
3年目となるファッションショーには今年、赤穂高校、上伊那農業高校、諏訪実業高校の高校生や、専門学校生の9人がデザイナーとして参加。作品発表に臨んだ。
モデルはそれぞれの友人、知人などで、ヘアメイクまですべてを自分たちで手掛けている。
テーマである「colorful snow(カラフル・スノー)」をイメージした個性豊かな作品をまとったモデルが続々と登場。仕切りにシャッターを切る観客の姿も見られた。
また、2着が変化していく「展開Show」は、新感覚で観客の目を楽しませていた。 -
県文が信州農村歌舞伎祭を開催
伊那谷の農村歌舞伎を一堂に集めた「信州農村歌舞伎祭」が4日、伊那市の県伊那文化会館であった。約千人の観客が訪れ、さまざまに受け継がれてきた伝統芸能を楽しんだ。
それぞれの地域の歴史ある伝統芸能を紹介するとともに文化交流の促進・発展を目的として文化会館が企画した今年初めての試み。
伊那市長谷中尾の「中尾歌舞伎」をはじめ、約300年の歴史がある下条村の「下條歌舞伎」、96年に国選択無形民俗文化財に指定され、国内外での活動を続けている大鹿村の「大鹿歌舞伎」の各保存会が、それぞれの演目を披露した。
中尾歌舞伎保存会は、江戸の下町に暮らす男とその家族をめぐる人情劇「人情噺(はなし)文七元結(もっとい)」を公演した。情感あふれる演技で会場をわかせた。
また、幕間に弁当などを食べた昔の歌舞伎小屋の臨場感を味わってもらおう竏窒ニ、特製弁当を予約販売。この日に限って特別に館内での飲食を許可したほか、玄関ロビーでは各村の特産品販売も行った。 -
伊那ファーターズの全国リトルシニア春の全国選抜大会に出場が決定
上伊那地区の中学生でつくる硬式野球チーム・伊那ファイターズ(登内英夫代表)がこのほど、全国リトルシニア第13回全国選抜大会(大阪ドーム、3月27日縲・月2日)に出場することが正式決定した。全国大会への出場は94年の夏の神宮ブロック以来の13年ぶり。春季大会としては初出場となる。キャプテンの山口俊君(14)は「一致団結してみんなで信じ合える仲間になり、全国制覇目指してやっていきたい」と意気込みを語った。
春季大会は、日本リトルシニア野球協会(シニアリーグ)に所属する7連盟を代表する上位チーム48チームにより競われるもの。信越連盟に所属する伊那ファイターズは昨年10月、信越地区の38チームによる新人戦を見事勝ち抜き、出場4枠の1つを獲得。3日に開かれた理事会で、ブロック代表として正式に選ばれた。
現在1、2年生16人が所属する伊那ファイターズは左右二人の本格派投手が引っぱる守備力のあるチーム。
三沢良男監督は「まずは初戦突破が目標。一つ勝って全国の力を知りたい」と語る。
同チームでは現在、新入団選手を募集している。
問い合わせは事務局(TEL0266・43・1802)丸山さん、(TEL090・4624・6602)浦野コーチへ。 -
権兵衛トンネル開通後1年~文化交流~
伊那市のみはらしファームであった権兵衛トンネル開通1周年記念イベント。「木曽のなァ、中乗さん…」と伊那に木曽節が響いた。
権兵衛トンネル開通をきっかけに、合唱、民謡、食文化、スポーツなどさまざまな分野で地域住民同士の交流が目立つようになった。「せっかく始まった交流。これからも続けたい」と交流を通した地域発展への期待も込める。
伊那で木曽節を披露する機会が多くなった木曽踊保存会の田沢博会長=木曽町=は「トンネルが開き、みはらしファームや伊那中央病院などに来る会員がいる。生活道路になりつつある」と話す。
新年度事業で、木曽町の旧市町村単位にある民謡を集めて交歓会を開く計画で「伊那節の皆さんにも声をかけたい」と考えている。
「木曽町の福島関所まつりなどで伊那節も披露されている。双方のイベントなど機会をとらえて交流し、衰退していくまちの発展につなげたい」と楽しみにしながら伊那へ来る。
伊那、木曽の両地域で、それぞれ開かれる音楽祭には、相互に合唱グループや小学生らが出演。無理せず、継続できるような形が定着しつつある。
伊那のスプリングコンサートや「い縲怩ネ音楽祭」に参加した木曽の小学校関係者は「伊那の子どもたちのレベルは高く、参考になる」と話した。コンサートを企画するNPO法人クラシックワールド事務局長北沢理光さんは「お互いに刺激を受ける」という。
昨年6月の権兵衛トンネル開通記念の「手づくりの第九演奏会」には、伊那、木曽の両地域から一般公募した団員約300人がステージに立った。
開通前は別々に練習していたが、開通後は一堂に集まり、完成度を高めた。
団員は合唱に限らず、ソースかつどんやそばを食べに出かけたり、木曽から伊那に来て忘年会をしたりと地域の情報を交換する場にもなったようだ。
また、昨年2月、高遠町で伊那谷・木曽谷そば打ち交流会があり、両地域のそばグループから約30人が集まった。
地元産そば粉を使い、辛味大根を添えた高遠そば、具を煮たなべでひと口ほどのそばをゆでる投汁(とうじ)そば、つゆにすんき漬けを入れたすんきそばを用意。高遠そばを試食した木曽の参加者は「後から辛味がきて、おいしい」、木曽のそばに、地元住民は「すんきそばはすっぱいと思ったけど、さっぱりしている」と互いのそばを食べ比べた。
その後、高遠町の山室そばの会メンバーらが木曽ふるさと体験館=木曽町=に出向き、投汁そばを味わった。
同会は「トンネル開通で、交流のきっかけができた。これからも続けたい」と食文化での地域の活性化をねらう。
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木曽に本部を置く「kanaバレエスタジオ」の国崎智絵さん=木曽町=は昨年7月から、伊那市生涯学習センターで教室を開いている。
「トンネルが開いて近くなった。一人でも多くの人に、バレエの基礎を学んでいただきたい」と始め、地元の小学生や一般の約10人に指導。
月4回のペースで、木曽から約45分かけて通う。「大雪の日は、電車を使って塩尻経由で来た。やっぱりトンネルを利用すると便利」と木曽竏宙ノ那間の近さを実感した。
4月、木曽で開くスタジオ発表会には、伊那の生徒も出演するそうで、木曽と伊那の生徒同士が交流する場を持つ。
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さまざまな催し物を企画する県伊那文化会館にも、木曽からの来館者が増えた。
トンネル開通を機に、木曽の学校や木曽文化公園などにポスターやチラシを持ち込み、イベントをPR。開通前、ほとんどいなかった木曽からの観客は、開通後、千人規模のイベント(昨年秋縲・月)で30人ほどが入り、宣伝効果は表れている。プラネタリウムにも、小学生がクラス単位で年間に何度か訪れた。
「トンネル出口から近いこともあり、音楽や演劇に興味がある人は来館する」と利便性を挙げる。
一方、伊那市生涯学習センターは、木曽からの観客がいるものの「思った以上に、集客に結びついていない」。
今後、木曽へのPR方法を検討し、人を呼び込み、地域に潤いをもたらすことができればと考えている。 -
【権兵衛開通1年~その後の地域~(農産物交流)】
伊那地域の人にも木曽の赤カブを知ってもらおう竏秩B昨年11月、木曽の赤かぶの継承と特産品の開発に取り組む「木曽赤かぶネット」のメンバーは、「木曽の赤かぶフェアin伊那」を伊那市内で開いた。トンネルの開通に合わせた初の試みだった。PR販売で伊那地域の消費者と触れ合った赤かぶネット代表の西尾礼子さん(66)は「互いの地域にない農産品や特産品が行き来するようになればいいですね」と期待を込めた。
実際、権兵衛トンネルを通じた農産物交流はすでに始まっている。
トンネル開通以降、木曽から足を運ぶ消費者が増えた伊那市ますみヶ丘の農畜産物直売所「グリーンファーム産直市場」には、農産物を持ち込む木曽地域の生産者も増えている。現在、直売所の利用者登録をしている生産者は3人。しかし、キノコや山菜の時期には飛び込みで持ってくる人も多いという。
小林史麿代表は「今は農産物がない時期だが、カブの時期には、生産者が毎週カブを持って来ていた。『こんなものが売れるかと思って持ってきた農産物がみんな売れてしまった』と話す生産者もいる。今年はこういう人がもっと増えると思う」と語る。
店頭には、木曽の特産品である赤かぶの漬物やすんき漬けも置いているが、売れ行きは上々だという。
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一方、上伊那の生産者にとっても、木曽地域は地元農産物をPRする新天地となり得る。
基本的に農地の少ない木曽地域では、一人当たりの耕作規模も小さく、出荷のために農産物を生産している農家が少ない。主要品目はハクサイ、スイートコーン、インゲンなどに限られているが、地場消費に充てる程度の農産物を生産する地元農家が多く、こうした生産者が農産物を販売する手段として直売所活動が活発化。ウメ、ブルーベリー、リンゴ、花きなど、さまざまな農産物が直売所を通じて販売されている。しかし、こうした農産物は絶対量が少ないのが実情。
木曽農林振興事務所の職員は「果樹関係については、一部で生産している人もいるがほとんどが贈答用。昨年は三岳の直売所が下伊那の果樹生産者と提携して果物を販売した経緯もある。こちらの地域で弱い果樹関係や、生産されていない品種の花などは、上伊那から持ってきても販売の余地があるのでは」と語る。
しかし、木曽町の「道の駅三岳」の農産物直売所を利用する生産者の一人、田上勘一さんは、木曽地域の直売所事情を踏まえて次のように話す。「農産物交流についてはぜひやってみたいという思いもある。しかし、その場合は流通コストに見合うような売上が必要。時期にはわざわざ名古屋方面などから足を運んでくれるお客さんもいるが、時期外れが問題」
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そんな中、上伊那農業協同組合(JA上伊那)は、今年から本格的に農産物出荷を始めようとしている。
トンネル開通以降、JA上伊那は果樹や花などを木曽福島町にある「Aコープきそ店」などで試験的に販売してきた。木曽農業協同組合(JA木曽)が企画した地元イベントでは、上伊那の特産品として売り出している「すずらんのむヨーグルト」の試飲会を実施。あっという間に売り切れて好評だったという。
JAでも互いの地域にない農産物に関してはニーズがあると見込んでおり、地域間連携で農畜産物をやりとりしていこうとしている。
現在、Aコープきそ店は、別の地域で生産しているヨーグルトを販売しているが、今後はJA上伊那のヨーグルトに切り替える予定だという。 -
伊那谷炭々隊が炭材づくり
地域の森の健康を願い、森林整備や間伐材の有効利用などに取り組む特定非営利活動法人森の座はこのほど、間伐材の有効利用の一環「伊那谷炭々隊(いなだにすみずみたい)」活動で、南箕輪村内の森で間伐をして炭材づくりをした。
森の座は05年11月発足。会員は県内外の13人。
長野県コモンズ支援金事業として「伊那谷炭々隊」活動を始めた。伊那谷の森林整備で出た間伐材の有効利用を目的に、山の手入れが進むことを目指している。
支援金で炭材を割ることができる薪割り機を購入。地域で間伐材の有効利用を目的に炭窯を作って活動する仲間とネットワークを組み、その炭窯に森の座が間伐材を持ち込み、炭に焼いてもらっている。
作業には会員、一般合わせて6人が参加。炭窯に詰める一回分の炭材を作った。
森の座では、「炭を非常時の燃料や床下の除湿剤など日常的に使うことで地域の森を感じることができる」とし、今後、地域産の炭を地域産の間伐剤を利用した箱に入れて販売するという。 -
第12回ウインター2007信州フラワーショー開催
県内の花き生産者が手塩にかけた秋冬期の切り花や花木が並ぶ「第12回ウインター2007信州フラワーショー」が1、2日、伊那市狐島のJA南信会館で開かれている。アルストロメリア、アネモネなど、今の季節に栽培されている代表的な花々356点が、来場者の目を楽しませている=写真。JA全農長野など主催。
花き生産物の技術改善と品質向上、花の消費拡大などを目的とする品評会。冬期に開催する花のイベントの中では県下最大の規模を誇る。
出展数は昨年より30点ほど多く、約8割が上伊那の生産者。県生産の90%を上伊那が占めるアルストロメリアの出展数が最も多く、花木ではサクラやレンギョウなどが並んでいる。また、今年はダリアの出展も多いという。
審査には、関東、中京方面の花き卸売業者や県の技術指導員などが参加し、一つひとつ品質や生育状況などを見比べた。
担当者は「今年も高品質のものが集まってきている。アルストロメリアは透明感のあるピンクや薄紫色、エンジ色などといった新品種も増えている」と話していた。
2日の一般公開は午前9時縲恁゚後1時。展示予約販売品の引き渡しは午後1時縲恁゚後2時。 -
【記者室】邦楽は面白い
邦楽SALADの第17回演奏会があった。県伊那文化会館で開く名物として定着。伊那谷で活躍する地元の邦楽家とゲストが、古典から現代までの音楽をさまざまな味付けで演奏した▼響きは紛れもなく邦楽なのだが、邦楽のようではない。そんな不思議な感覚を味わい、新しい音楽に触れた気がした。「ゲストとの交流や皆で一緒に舞台を作り上げる楽しさが魅力」と出演者の一人。確かな演奏技術に加えて、出演者自身が楽しんでいることが、音楽をより魅力的にしていた▼邦楽SALADは今後、演奏会を見直し新しい形を検討するという。17回の開催は少なからずマンネリ化の問題もあるという。今度は邦楽をどう料理して味あわせてくれるのか。楽しみにしたい。(村上裕子)
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権兵衛トンネル開通後1年~交通~
国道361号伊那木曽連絡道路(権兵衛トンネル)の交通量は昨年12月末で、109万台を超えた。伊那インターチェンジ(IC)の利用台数が10%増加するなど高速道路と一体になった広域的な活用がみられる。木曽の国道19号を通過する大型車両の流入による混乱が心配されたが、伊那建設事務所では「渋滞も、暴走車もなく順調に推移している」と話す。
木曽建設事務所の交通量データ(開通翌日縲・2月末)によると、伊那から木曽が54万1663台、木曽から伊那が54万9142台。一番多かった日は、ゴールデンウィーク中の5月4日で1万台を突破した。1日当たりの平均は、両方向合わせて、平日が2745台、休日が4418台。通行車両の45%が県外車の利用となっている。
観光バスを含む大型車の混入率は累計で13・7%。2月当初と比べ、3倍以上に増えた。
木曽からの流入車両に対応し、南箕輪村沢尻に沢尻バイパスを建設、伊那市街地へう回させている。
昨年6月、伊那建設事務所の交通調査(12時間)で、361号から左折して沢尻バイパスを通った車が11・6%(515台)増、そのまま直進して川北信号機を下った車が9・3%(378台)増だったことがわかった。春日街道西側に位置する広域農道で一部拡幅、歩道設置が進められたが、大萱信号機の通過は3・8%(164台)増にとどまった。伊那インター線は10・3%増。
伊那建設事務所は、周辺道路整備の必要性について、大型車の通行に対応できる道路だが、交通実態を踏まえ、今後、検討するとしている。春には、車の流れを把握するため、範囲を広めて交通量を調査する。
◇ ◇
市町村合併や権兵衛トンネル開通に伴い、伊那市は「伊那地域における新たな交通ネットワークシステム構築のための検討会」を設け、新市の総合的な交通体系を検討している。
観光客の誘致や地域振興などの観点から▽新市発足に伴う旧市町村の生活交通のあり方▽権兵衛トンネルを利用した広域的な交通ネットワーク▽地域の観光資源を生かすための公共交通のあり方竏窒ネど木曽地域を含め、具体的な運行計画を練る。
地域住民アンケートで、伊那竏猪リ曽間の連絡バス利用を尋ねた。
その結果、伊那は「ぜひ利用してみたい」「条件次第で利用してみたい」が24・6%で、「全く利用しない」は34・3%だった。
利用ニーズの目的地は温泉、中山道宿場、開田高原、JR木曽福島駅などが上位を占めた。
検討会の座長を務める信州大学教育学部教授の石沢孝さんは「名古屋への直通バスがあるのに、JR木曽福島駅を利用する人がいる。ビジネス的な利用は十分にある」とみる。
一方、木曽は「利用してみたい」というニーズが48・2%で、「全く利用しない」の9・3%を大きく上回った。買い物、観光・保養、娯楽、通院などの利用ニーズが多かった。
料金設定は、いずれも500円縲恊迚~程度に集中している。
また、伊那・木曽を訪れた観光客の伊那竏猪リ曽間の連絡バス利用のニーズは約3割だった。利用する条件に▽運行本数が多ければ▽時間帯が合えば▽料金が安ければ竏窒ネどが挙がった。
今後、公共交通、観光交通、利用者らの現状や問題点をヒアリング調査し、新市の総合的な交通体系の基本方針をまとめる。
タクシー業界では、開通前に全くなかった木曽行きの利用が目立つ。
伊那市街地からJR木曽福島駅までのタクシー所要時間は約40分で、料金は9千円ほど。岡谷市まで行ける距離という。
伊那タクシーは月に数十件、木曽方面へ出向いている。JR木曽福島駅の送り迎えをはじめ、仕事や飲み会(週末)の帰りなどに利用する人が目立つという。夏場には観光を目的とした利用もあり「恩恵を受けている」という。
白川タクシーは月に数件で、JR木曽福島駅の活用がほとんど。地域住民が「近くなった木曽に行ってみるか」と奈良井宿や開田高原を観光で回るケースもあった。
今後の見通しについて「劇的に増えることはないだろう」と予測するが、花見の時期、高遠城址公園を訪れた観光客が立ち寄る一つの選択肢になると期待する。
木曽の情報は、観光パンフレット程度しかなく、ドライバーは実際に回って見た情報を交換している。
現状では、定期便の運行には至らないようだ。
昨年2月の開通後から、伊那バスは権兵衛トンネル開通記念としてバスツアーを企画。「トンネルを経由したコース設定は需要がある」といい、人気は高い。
これまで木曽の各所を見学する「木曽馬の里縲恁茆ヤ明神温泉」、トンネルを経由する「美しい上高地紅葉ツアー」など4コースが終了。地元を中心に、約1500人が利用し、関心の高さをうかがわせた。
7日からは「昼神温泉ツアー」がスタート。また、木曽見学として御嶽山周辺を組み入れている。 -
高校生ファッションショーの準備進む
自らの作品を多くの人に見てほしい竏窒ニ、ファッションショー「Colorful Snow(カラフル・スノー)」を2月4日、伊那市駅前ビル「いなっせ」で開く高校生や専門学校生が、本番に向けた最終準備を進めている=写真。
今年で3回目となる取り組み。その年ごとで服飾に関心のある高校生や専門学校生が集まり、ショーをつくり上げている。
今年は、赤穂高校、上伊那農業高校、諏訪実業高校の高校生と、専門学校生の9人がデザイナーとして参加。頭の中を雪のように真っ白にして、そこから自分たちなりにさまざまな色をつけてみよう竏窒ニいう思いから、「Colorful snow」をコンセプトとした。
ショーはグループごとの4部構成として、デザイナーの個性をそれぞれにまとめたほか、「展開Show(ショー)」と題して2着の服がさまざまに変化する新しい分野にも挑戦する。
代表者の大木大輔さんは「学生たちががんばってやっているので、ぜひ見に来てほしい」と呼び掛けている。
いなっせ6階ホールで午後2時から(会場は午後1時半)。チケットは20歳以上が千円、20歳未満が500円(前売りはなし)。 -
【権兵衛トンネル開通1年~その後の地域~観光】
「これまでは塩尻を回らなければ来れなかったけど、トンネルが開通してからは約30分で来れる。木曽にも温泉はあるが、こういう体験施設を兼ねそろえている場所はない。観光やレジャーで来るのにはとてもいい。何より、(高速と違って)通行料金がいらないのがいいね」。
塩尻市木曽平沢に住む百瀬順次さんはこの日、家族連れで伊那市西箕輪のみはらしいちご園を訪れた。初めていちご園を訪れたのはトンネル開通直後のこと。その後は、月に1、2回ほど伊那側を訪れ、日帰り温泉施設「みはらしの湯」などをよく利用している。
権兵衛トンネルの開通は、上伊那の観光産業にも新たな刺激を与えている。この1年で大きな影響を受けたのは伊那市西箕輪の農業公園みはらしファームや南箕輪村の大芝高原など、トンネル近郊の観光施設だ。
みはらしファームの体験農園の一つ、「伊那みはらしいちご園」では、ここ1、2年、来場者数が6万人台の前半まで落ち込んでいた。しかし、昨年は近年の実績を1万人以上上回る7万3千人が来場した。
泉沢勝人組合長は「予約データの中にも木曽から来ている人の情報がある。昨シーズンのピーク時には、木曽の人が毎日来ることもあった」と話す。
また、施設利用者の約半分を占める中京圏のお客にも、変化があった。「団体客より家族連れなど個々に来る人が増えた。木曽の国道19号から権兵衛トンネルを抜け、帰りは伊那インターを利用する人が増えているんだと思う」と語る。
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一方、トンネルから離れた地域には、それほど大きな影響はない。
駒ヶ根市を訪れる観光客の数は1992年の170万人をピークに、年々緩やかな減少傾向にあり、ここ数年は130万縲・40万人前後で推移する頭打ちの状態が続いている。
トンネル開通当初は、木曽谷とのアクセスルートが新たに開けたことにより、観光客数増のきっかけになれば竏窒ニ明るい希望を持った関係者も多かった。しかし、開通から1年経った現在、観光客の大きな増加には結びついていないようだ。
駅前の食堂の店主は「駒ケ根名物のソースかつ丼を食べに木曽から来た竏窒ニいう客も時折来るよ。トンネル開通以前にはこんなことはなかったね。まあ、今のところはもうけにつながるほどじゃない小さな動きだが、少しずつでも将来の活性化につながってくれればいいんじゃないか」と期待を託す。
駒ケ根市観光協会は駒ケ根と木曽を1日で回れる一つの観光地域として大都市圏にアピールしていこうと動き出している。協会の情報企画部長宮澤清高さんは「中央アルプスを挟んではいるが、点と点ではなく、つながった面としてとらえ、一つの観光ルートとしてコースをつくって提案していくなどの具体策に取り組んでいきたい。両地域の住民の間で互いの交流も始まったところなので、今後の展開に大いに期待したい」と話す。
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1年目はトンネル効果の恩恵があった観光施設にとっては、今後も持続的に観光客を確保することが課題となっている。
南箕輪村の大芝荘の山・ス文直支配人は「1年目は物珍しさも手伝って来てくれた。今後は毎年来てもらえるような取り組みをしていかなければならないが、大芝高原だけではせいぜい1日もあれば見て回れてしまう。これまで1泊だった人に2泊してもらえるようなプランを提供していくためには、上伊那の他地域と連携していくことも必要だと感じている。これからは観光メリットをいかにして共有するか」と語る。
大芝荘では広域連携に向け、他市町村への呼び掛け開めている。構想の中には、各市町村の観光名所を巡る「観光タクシー」などもあり、こうした企画は大型バスで訪れる観光客にも利用してもらえるのではないかと期待をかけている。 -
【権兵衛トンネル1年~その後の地域~】
2月4日、伊那と木曽を結ぶ権兵衛トンネルが開通して1年が経つ。伊那市中心街縲恂リ曽町福島中心街は約45分で結ばれ、これまで塩尻インターチェンジ経緯で1時間半ほどかかっていた両地域間の時間的距離は、大幅に短縮された。それに伴い上伊那では、観光、商工業、文化交流など、各分野でさまざまな変化が生じている。
【商業】
消費者の流出に強い不安を抱いた木曽側とは対照的に、伊那側では、トンネルの開通が商圏拡大のチャンスだと考える小売業者も多かった。特に期待を寄せていた大型店だけでなく、中心商店街でもトンネル開通前後に合わせて木曽地域に広告を配布。開通日には各地で記念イベントが催された。
しかし、1年が経過し、動向を見守ってきた大型店の多くは「もっと来てくれると期待していたが」と率直な感想をもらす。
伊那市の大型店「アピタ伊那店」では、開通直後に木曽地域にも広告を入れ、チラシを持ってきた人に記念品を贈呈する企画を実施。約1カ月はチラシを頼りに訪れる客がいたほか、半年ほど前までは大型バスで乗り付ける観光客も多かった。担当者は「会話の中で『木曽から来たんですよ』と話す人もおり、木曽から人が来ている実感はあるが、伊那の比にすると木曽から来ている人は微々たるもの。土日や季節の行事ごとに増えている気もするが」と語る。
同店ではトンネル開通以降も大きな企画を催す時に合わせ、木曽地域に広告を入れていたが、一年の動向を見て、今後は極端な誘客戦略を取らないことに決めた。その背景には「あそこへ行けば全部買い物ができる」と認識して客が日常的に買い物に来るようになるまでは、4、5年かかると見ていることも一つの要因となっている。
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一方、南箕輪村の大型スーパー「アップルランド伊那インター店」は、来期から本格的に木曽地域からの誘客を図るための取り組みを開始しようとしている。
同店では、開通直後の3月の時点で、来客数が1%、売上が3%増加し、その後も木曽側からの客が来ている様子がうかがえるものの、当初の期待に見合う効果は得られていない。しかし、大沢進店長は「実際に木曽地域にも行って見たが、順調に行けば30分で行き来できるようになった。木曽は伊那と比べて全体的に物価も高く、チャンスは非常に大きい」と誘客への意欲を見せる。
誘客戦略の一つとしては、木曽側にしかない特産品やあちらの生活の中で日常的に消費されている商品などを扱うことで、トンネルの向こう側から来る客の満足度を高めようと準備を進めている。また、こうした取り組みは、伊那地域の客にとっても刺激となるのでは竏窒ニの期待もあるという。
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中心商店街でも、トンネルの開通により木曽方面から訪れる人の声を聞くなど、それなりの変化を感じているが、知名度のある大型店に客が流れている実感の方が強い。
一部の有志は、年間行事を示したチラシを木曽側に入れ、誘客への意欲を燃やした。しかし、昨年は豪雨災害に伴い伊那まつりが中止となるなど、商店街をPRする機会すら少なかった。
いなっせに婦人服店「松屋」を構える松沢一男さんは「木曽の人にとっては、商店街がどこにあるかすら知らないのが現状だと思う。しかし、何かやらなければ結果は出ない。お客を引っぱりたいという思いはあるが、チラシを入れるのも予算がかかること。なかなか難しい」と話す。
また、大十呉服店の池上直樹さんは「『近くなったから』と足を運んでくれた人もいた。入舟交差点に入って道に迷う車が多いようで、よく道を尋ねられることもあるから、車も入ってきていることは確か。商店街に人が流れないのはまちに魅力がないせいもあるかもしれない」と語る。
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消費者流出の不安感が強かった木曽側の小売業者の中には、いったんは胸をなで下ろした人も少なくない。
木曽福島町のAコープきそ店はその一つ。同店ではトンネル開通後の約3カ月は、客足が遠のき、経営を圧迫したが、その後は消費者が戻り、現在もその状態が続いている。
しかし、消費者が流出することへの懸念がなくなったわけではない。平畠重行店長は「木曽が伊那地域の商圏の中に入ったのは事実。行楽シーズンに消費者が流れ出す傾向にあり、今後は波ができるのではないかと考えている。木曽は伊那側と比べて物価が高い。今後は価格調整をすることも必要かもしれない」と語る。
食料品など、日々の生活に密着した商品を扱う小売店には客が戻ってきたものの、総合小売業の「木曽福島サティ」では、土日を中心に売上が下がっているという。
同店ではサービス充実に努めることで、消費者の心をつかみたいとしているが、具体的な方策については今のところ考えていない。 -
県議選 上伊那郡区、小原氏県政報告会
県議選上伊那郡区に立候補を表明している現職の小原勇氏(58)は28日夜、地元の宮田村民会館に約350人を集めて県政報告会を開いた。今春の選挙に向け「現職が必ず1人は落ちる厳しい戦いだが、定数削減を真摯に受け止め戦う。引き続きこの地域から発信し、地域に還元していきたい」と支持を求めた。
宮下一郎代議士、清水宮田村長、高坂飯島町長、唐木南箕輪村長らも駆けつけ激励。4年間の実績を高く評価し、「人柄、実行力申し分ない。議席確保に向けて力を結集しよう」と呼びかけた。
小原氏は地域主権を訴えてきた議会活動を振り返り「誰が県知事になろうとも主人公は県民一人ひとり。全ての人のために開かれた県政であるべきで、前田中県政の良かったことは継続すべき」と話した。
小原氏後援会は2月11日午後6時半から宮田村内で事務所開きを行ない、飯島町、中川村にも事務所の開設を予定している。 -
県議選 赤羽公彦氏出馬断念
今春の県議選・上伊那郡区への出馬が注目されていた辰野町の赤羽公彦氏(61)が出馬を断念した。28日夜、下辰野公民館で開いた後援会総会で明らかにした。
赤羽氏は元町議会議員で、前回(03年4月)の県議選に出馬し落選した。
総会は54人出席。小沢惣衛会長が、「幹事会では出馬を断念せざるをえないという結果になった」と報告。今選挙は定数が3から2になることもあり「非常に厳しい情勢」とし、「このまま埋もれさせるにはもったいない人材。ここで力を蓄えて次に、という願いがある。出馬はしなくても後援会は存続したい」と述べた。
赤羽氏は、「本当に厳しいと感じている。(前回に)3千票上乗せしないと当選しない。よくよく考えても上乗せ2千票くらいで、非常に厳しい。よほどのことがない限り小休止。非常に辛い思いでいっぱい」と述べ、「自分の哲学は『自らの手、自らの力で稼いで生きていくことが一番大事』。どういう立場、状況にあっても実践していきたい。着実に、地道に精一杯歩いていきたい」と話した。 -
邦楽SALAD17th「日本の音を未来に…」
伊那市の県伊那文化会館大ホールで28日、「邦楽SALAD17th」があった。「日本の音を未来に…」をテーマに、伊那谷で活躍する地元の邦楽家とゲストが、古典から新しい音楽まで邦楽曲をはじめさまざまなジャンルの音楽を演奏し、観客を魅了した。
ゲストは邦楽ユニット「B-Come(びかむ)」、尺八トリオ「般若帝國」、三味線演奏家の穂積大志。地元演奏家は29人、総勢45人がステージに立った。
古典の合奏曲「乱」で始まり、特徴的な主題が絡み合う二重奏を演奏。尺八トリオ「般若帝國」は、足のステップでリズムを刻みながら演奏するなど新しい尺八のスタイルを見せた。琵琶と語りの「鶴」は、鶴の恩返しを題材にした弾き語りで、観客は、物悲しく響く琵琶の音と語りが織り成す世界に引き込まれた。
邦楽を身近に感じてほしいと開いてきた「邦楽SALAD」。17回を機にコンサートを見直し、今後は新しい形を検討するという。 -
上伊那郡西天竜土地改良区の水路円筒分水工郡を土木遺産として認定
西天竜用水路の水を農地に分配するために用いられている「西天竜幹線水路円筒分水工群」がこのほど、社団法人土木学会(濱田政則会長)の「06年度土木遺産」に選奨され24日、同水路を管理する上伊那郡西天竜土地改良区(有賀正理事長)に認定書などが伝達された。有賀理事長は「分水工の中には先人の思いや熱意が込められている。貴重な遺産を守り、更に地域を発展させていくため、今後もご協力を願いたい」と語った。
今回認定を受けた分水工群は、農地へ水を流出する時、農地の大きさに応じて正確な比率で水が配分できるよう、流出させる水量を穴の数で調節している。1919年縲・939年に伊那市、南箕輪村、箕輪町、辰野町に約57基が設置され、うち約35基は、現在も活用されている。松本地区などでもこうした分水工が残っているが、これほど多くのものが現役で活用されているのは珍しいという。
土木遺産は、歴史的・文化的価値のある近代土木遺産を認定することを通じて、社会や土木技術者に向けたアピール、まちづくりへの活用を促すことを目的としており、県内では02年に木曽地域などにある五橋も認定を受けている。 -
花ろまん(9)チューリップ
外は1面の銀世界、寒さは底、待ち遠しいのは赤、白、黄色とチューリップが咲く春。豪華さと愛らしさ、温かさを合わせ持つ、春の花の代表格。原産地は中央アジアから地中海沿岸、ヨーロッパで改良され、多種多様な品種が生まれ、日本には19世紀末に紹介された。上伊那でもオランダから球根が多量に輸入され、切り花や鉢花として栽培し、一足早く春の喜びを感じさせている。今回は切り花生産の所河昌昭さん(駒ケ根市中沢)、本郷農産サービスの小林雄一社長(飯島町本郷)、鉢花を手掛けるトーキーズの唐木隆裕さん(伊那市上牧)の3人に取材させていただいた(大口国江)
##(中見出し)
「花を呼ぶかわいい花」どんどん増やし、9万球を栽培する所河さん
天竜川河畔に展開する所河さんのハウスではチューリップの出荷作業が最盛期を迎えている。
寒さは厳しいが日一日と日ざしが濃くなり、チューリップはたちまち咲いてしまうので
、1日に何度もハウスを見回り、つぼみの色が出始めたものから順に収穫している。
球根はオランダから輸入されたクールチューリップ(低温処理)。ピンク系の「クリスマスドリーム」「ピンクダイヤモンド」ユリ咲きで香りのある「バレリーナ」、黄色の「ストロング」など6種類。現在、JAを通して、東京、大阪方面に出荷している。
昨年11月16日から12月31日まで、約9センチ四方に1球の割合で、ぎちぎちと植え付けた。植え付けから約50日後の元旦から咲き始め、ハウスの中は春一色。
所河さんは葉を痛めないように、1本1本丁寧に抜き取り、土を取り除き、長さをそろ
えて束ね、箱に詰める。
「切り終わって、振り向くと、もう次が咲き始めている。チューリップは時間との戦い。球根代は高く、燃料費が高騰し、採算の良い花ではないが、春を呼ぶかわいい花、これからも作り続けたい」と話す。
##(中見出し)低温で60日掛けて、ゆっくり育てる 本郷農産サービス
飯島町本郷の国道153号沿いに展開にするキュウリ団地の一角に、7万8千本が育つチューリップハウスがある。現在、早生系の「ホワイトフライト」が緑の葉の間から白いつぼみが見え始めた。 花の種類は20種類、ピンク系が6割、赤、白、黄色、紫、覆輪が各1割とか。
キュウリの裏作として15年前から栽培。11月20日から順次植え付け、比較的低温で管理し、60日掛けてゆっくりと育てた。「開いたら、売り物にならないため、作っていても、花が見られない。採算性は悪いが、球根が土壌に残った化学肥料を吸収し、キュウリ栽培の土壌改良ができるという利点もある」とか。
##(中見出し)「色彩の少ない冬を多彩に」トーキーズファーム
伊那市上牧のビニールハウスでピンクや赤、八重咲きなど25種類8千鉢を栽培する。今が早生、中生系の出荷の最盛期で、3月いっぱい続く。
昨年10月中旬から11月末まで、オランダから輸入された低温処理の球根、12個を6号鉢(直径18センチ)に植えつけ、約1週間で発芽。昨年末から、つぼみの先に花色が見え始めた鉢を選び、東京、関西方面にギフト用として出荷している。
約60日掛けて、じっくり生育させたトーキーズ・ファームのチューリップは「葉も茎もしっかりしている」と市場でも好評。ピンク系の「クリスマスドリーム」「ダイナスティー」、黄色の八重咲き「モンテカルロ」、ユリ咲きの「アラジン」などが人気とか。
唐木さんは「1鉢12本の成長をそろえることが1番難しい。色彩の乏しい冬に、多彩な花を咲かせるのが魅力。寒さに強いので、涼しい場所で管理すると、2カ月位咲き続ける」と話す。
◆こぼれ話
トルコ語でターパンを意味する「ツルバン」がチューリップの語源。300年前のヨーロッパでは、羽状、炎状模様(パロット系)の新品種は投機対象として、球根1つが豪邸1軒の価格で取引され、チューリップ投機で身を滅ぼす人も出た。後に「チューリップ狂乱時代」と呼ばれる波乱万丈の歴史を刻みながら、多種多様な品種が生まれた。 -
邦楽の演奏会「邦楽SALAD(サラダ)17th」がリハーサル
邦楽の演奏会「邦楽SALAD(サラダ)17th」は28日、県伊那文化会館である。「地域に邦楽を広めよう」と公募で集まった上伊那在住・出身の出演者らは、本番に向けて熱心にリハーサルに取り組んでいる。
邦楽の普及拡大を目的に開く、同演奏会は本年で17回目。地元の演奏者に東京を中心に演奏活動を展開するゲストを交え、現代音楽に挑戦するなど新しいアプローチで邦楽の価値を伝える。
地元在住・出身者は、中学2年生縲・0歳代の愛好者からプロの演奏家までの28人。邦楽ユニットの「B‐Come」と「般若帝國」をゲストに招き、地元邦楽家と一緒に演奏するなど、筝や尺八を使った全7プログラムを予定する。
企画立案者の伊那市出身で東京在住の演奏家、川村利美さん(54)は「一般の人に楽しんでもらうため、現代曲を交えるなどの工夫をして、日本の音を未来へ伝えていきたい」と話している。
開場は午後1時30分、開演は同2時から。全席自由で一般は2千円、高校生以下は無料。チケットの予約・問い合わせは、県伊那文化会館(TEL73・8822)へ。 -
みすゞ俳句会が新年総会
月刊俳句雑誌「みすゞ」を発行する、みすゞ俳句会(城取信平主宰、会員約450人)は21日、伊那市山寺の料理屋「越後屋」で、新年総会を開いた。初句会、懇談会などもあり、会員らは交流を深めながら新年を祝った。
会員約100人が出席。城取主宰は「貧困の国では字を書けない人が多い。私たちは文字を知り、俳句を楽しむことができるのは幸せなこと。美しい日本語を使って俳句を通じて楽しんでいる皆さんには、1日1日を大切に過してもらいたい」とあいさつ=写真。
総会では、本年の活動計画についての話があり、春は一泊、秋は日帰りの年間2回の吟行を計画した。また、本年度の顕彰があり、「みすゞ賞」「奨励賞」の各2人の発表もあった。 -
上伊那PTA連合会父親母親委員会第2回交流会
上伊那地区PTA連合会父親母親委員会第2回交流会が20日、伊那市駅前ビル「いなっせ」であった。上伊那地区の小中学校のPTA役員など約100人が集まり、学校での活動事例を学んだり子育てに関する意見交換をしながら交流を深めた=写真。
各校PTAのうち、父親母親委員などが一堂に会する交流会で本年度は2回目。
研修では、中川東小学校の橋枝英紀PTA会長が「親子講座」について、箕輪西小学校の中沢千夏志PTA会長が「わんぱく体験親子の集い」についてとそれぞれの学校で実施している親子活動を発表。親子協力のもと、地域に根ざした活動を体験することを目的に取り組んできた中川東小の「親子講座」は、学校の先生だけでなく地域の人を講師として迎えることでバラエティーに富んだ今ではなかなか体験できなくなった体験講座を実現していることなどが示された。
また、グループごとに分かれた意見交換会もあった。 -
小中学校教諭 バスケットボールで交流
県教職員組合上伊那支部は20日、伊那市の伊那中学校第1・2体育館で、教職員の親ぼくを深めるためのバスケットボール大会を開いた。小中学校の教諭約200人が集まり、和気あいあいと楽しんだ。
全52校から各校で一チームずつ構成の21チームが、順位を決める「勝負リーグ」に6チーム、一チーム2試合ずつ対戦の「交流リーグ」に15チームが別れて試合。女性による得点はすべて3点という特別ルールで戦った。
勝負リーグの会場には、気迫のこもった掛け声が響き、普段は見れない教員によるスポーツの真剣勝負が繰り広げられた。昨年優勝した箕輪中学校の舘裕介教諭は「本気になってスポーツをしている同僚の顔が見れて楽しい。まるで学生時代のよう」と話した。
スポーツを通じた教職員同士の交流会は、バスケットボールのほか、夏のバレーボールを年一回開催している。 -
大学入試センター試験始まる
大学受験の最初の関門、07年度大学入学者選抜大学入試センター試験が20日、全国で一斉実施された。上伊那では南箕輪村の信州大学農学部、駒ヶ根市の県看護大学に緊張した面持ちの受験生が集い、各教科の試験に臨んだ。21日まで。
大寒となったこの日、信大農学部ではしっかり防寒した受験生らが臨時バスなどで登校。同大が試験会場となっている伊那北高校や赤穂高校の教諭らも会場の外で待ち構え、「受験票を出して」などと誘導したり、げんかつぎの菓子を配るなどして受験生を励ました。
男子生徒の一人は「今まで勉強してきたことが発揮できれば」と話していた。
上伊那の今年の志願者数は昨年より127人多い1410人。内訳は農学部会場が958人、看護大が452人となっている。
全県の志願者は昨年より約200人多い1万203人。
1日目で公民、地理歴史、国語、外国語の4試験を完了し、21日は理科(1)、数学(2)、理科(2)、理科(3)の4試験を実施する。