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新米検査
有機米を生産・販売している駒ケ根市下平のマイ・ファーム中坪(中坪宏明代表)で16日、上伊那のトップを切って今年の新米検査が行われた。日本穀物検定協会関東支部長野出張所の御子柴邦明さんらが検査に訪れ、不安そうに見守る中坪さんの心配をよそに、水分や整粒、着色などの検査を淡々と進めた結果「すべて1等米!」と太鼓判を押した。中坪さんは「ほっとしている。今年は天候が良かったから去年と同じか少し多く収穫できた。でもちょっと出来過ぎかもしれないな」と晴れ晴れとした笑顔で話し、早速注文先への発送作業に追われていた。
検査は穀刺(こくし)と呼ばれる細長い金属製のさやを米の袋に突き刺して取った少量のサンプルの銘柄▽水分▽整粒▽着色粒▽死米▽異物窶狽ネどについて機械と目視によって調べる。最初のサンプルの水分を測定した御子柴さんは「ぴったり15%だ。これは素晴らしい。めったにないよ」と手放しで褒めていた。
県内の米の作況指数は103で平年に比べ「やや良」だという。 -
農事組合法人「山室」を設立
高遠町の農事組合法人「山室」が17日、設立した。組合員の協業で農業の生産性を向上させ、利益を増進するねらい。集落単位で経営体を組織するのは上伊那で2カ所目。
農業を取り巻く情勢は、担い手の減少や高齢化、獣害被害による生産意欲の低下など耕作を放棄せざるを得ない厳しい状況。「先祖から受け継いだ農地・農業を守る」ため、地区内に住所または耕地を持つ農家戸数98戸のうち33戸が賛同した。
経営面積は現在、集計中だが、来年度の事業計画は約10ヘクタール。酒米を中心に、小麦、ソバを栽培する。定款では将来ありうる事業として林業経営、農畜産物の製造・加工なども盛っている。
出資金(資本金)は265万円。配当は組合員の出資額に応じ、残余がある場合は事業従事によって分ける。
三義交流館「やまびこ」で開かれた設立総会には組合員ら約30人が出席し、定款や事業計画、役員などを決定。
発起人代表で代表理事に選ばれた伊藤忠彦さんは、設立に至る経過に触れ「先祖から受け継いだ農地を守るために、組合員が一緒になって経営してほしい」と呼びかけた。
来賓の伊東町長は、新しい営農を作り上げていく1つのモデルとして農業の進展につながることに期待した。 -
マコモ消費拡大研究会
一般家庭にはあまり馴染みのない食材マコモの普及を図ろうと駒ケ根市営農センターは15日、マコモ消費拡大研究会を駒ケ根市役所保健センターで開いた。市内のホテル、旅館、飲食店関係者ら約30人が参加し、マコモの栽培状況などについて学んだほか、マコモを使ったさまざまな料理を試食した。
講師のグリーンホテル料理長山越信治さんは「マコモはタケノコのような、ナスのような、トウモロコシのような味わい。癖がないので、工夫次第でいろいろな料理に使える」としてマコモとサザエの香味焼き、鶏肉マコモ巻き、そば団子マコモおろし仕立てなどのオリジナルメニューを紹介した。参加者らはテーブルに並んだマコモ料理を食べ比べて、その味と香りをじっくりと賞味していた。
マコモはアジア原産のイネ科の植物。黒穂菌が付いて根元の茎の部分が肥大化したものをマコモタケ(キノコではない)として食用にする。イネの転作作物として注目され、市内東伊那で約80アール栽培されている。 -
第29回上伊那花き品評会
切花を中心の花き生産販売者(JA系統外)らでつくる上伊那花卉(かき)生産者会議(会員70人、田中賢一会長)による品評会が16日、伊那市の信州INAセミナーハウスであった。バラやカーネーション、リンドウなど、美しい花々を展示。伊那市の田中和浩さんのバラが最優秀賞を受賞した。
品種の選定や栽培、出荷技術向上などを目的とした品評会で、約290点がそろった。
生産者会議は、それぞれがさまざまな種類の花を生産しているため、品評会でも異なる種類の花々を楽しむことができるという。
色の発色具合や茎の太さ、病気にかかっていないかなどを基準に審査する。
田中会長は「今年は陽気が暑かったため、今はまだ花が軟弱な気がするが、寒くなるこの時期から、どんどん良くなり、色も鮮やかになる」と話していた。
また「地元消費者に花に興味をもってもらおう」と、フラワーアレンジメント講習もあり、訪れた人々は、花を買い求めたり、アレンジ方法を学んだりしながら、美しい花々を楽しんでいた。
受賞者は次の皆さん。
◇最優秀賞▼バラ=田中和浩(伊那)
◇優秀賞▼トルコギキョウ=唐沢政成(箕輪)蟹澤亜紀(伊那)▼カーネーション=小林淳一(飯島)岡野敏幸(伊那)加藤忠一(南箕輪)那須野明(飯島)田中功(宮田)▼サンダーソニア=入江則充(伊那)▼バラ=鈴木一生(飯島)▼アルストロメリア=片桐敏美(飯島)
◇優良賞▼クレマチス=渋谷宗一(飯島)▼アルストロメリア=佐々木松男(飯島)▼カーネーション=堺沢正、堺沢豊、福澤一郎(以上駒ケ根)竹澤孝生(飯島)▼バラ=小林均(飯島)
◇奨励賞▼トルコギキョウ=酒井則男(伊那)▼カトレア=永田治彦(箕輪)▼バラ=鈴木一生、中村敦彦(以上飯島)▼洋ラン=伊久間弘道(南箕輪)▼ヒペリカム鉢=酒井大(伊那) -
県最古の二十世紀梨たわわに
飯島町本郷の桃沢匡行さんの果樹園では、1926年(大正15年)に植栽した、長野県では最も古い、樹齢80年余の二十世紀梨が今年も収穫の時期を迎えた。
長野の梨を興したといわれる匡行さんの父、匡勝さんが農林省園芸試験場で研修し、帰郷後、植栽し、風に強く、花付きの良い桃沢式杯状棚仕立てを確立し、全国に普及させた。
当時、植えられた二十世紀梨は現在、18本残っている。写真の木は樹間18メートル×14メートル、幹周1・9メートル。着果数は最盛期は3000個余だったが、今は2000個弱に抑えているとか。
桃沢さんは「近年、みずみずしく、さわやかな甘さの二十世紀梨が見直され、作付けが増え始めた。今年は玉伸びもよく、糖度も十分」と話していた。 -
棚田に収穫の秋
中川村大草、飯沼地区の棚田も収穫の秋を迎え、1面黄金色。
10アールから50アールの小さな田が河岸段丘に階段状に上に伸び、ゆったりとした畦の曲線が郷愁を誘う。 -
稲刈り開始
上伊那農業協同組合のライスセンターなどの稼働日に合わせて上伊那の各地で稲刈りが始まった=写真。
三峰川沿いの高遠町の水田地帯でも、いくつかのほ場で10日、稲刈りがスタート。伊那市富県北福地の田畑栄市さん(50)宅のほ場でも、朝からコンバインが稼働し、垂れ下がった黄色い稲を刈り取っていった。昨年より刈り始めが1週間ほど遅いという。約60ヘクタールのほ場を田畑さんは、色づきの早い川沿いから刈り始め、10月上旬まで作業に追われる。
田畑さんは「先日の台風で一部転んだところもあるが、影響は少ない。収量は多くなるだろう」と今年の出来を話していた。 -
西ケ原ぶどう園10日開園
中川村片桐の西ケ原ぶどう生産組合(西村宗俊組合長、15軒)のブドウ園は10日開園、10月23日まで、ブドウ狩りと直売が行われる。期間中の17、18日は園内の農村交流施設でぶどう祭りを予定する。
同組合は3・7ヘクタールで、早生系の藤稔(ふじみのり)、安芸スイート、玉豊、中性種のシナノスマイル、ピオーネ、ナガノパープル、晩生の高妻、ロザリオビアンコなど10種類余をレインカット方式で栽培している。
ぶどう祭りでは、豚汁サービス、焼肉宴会を予定。
入園料(食べ放題)は大人千円、小学生以下半額。直売は1キロ800円。
23アールで、藤稔など6品種を栽培する宮崎據さんは「今年は好天に恵まれ、甘さも色づきもいい」と話していた。 -
JAが落果ナシを販売
JA上伊那は9日、台風14号の影響で被害を受けた果樹農家の救済対策として昨年同様、JA職員らを対象に、落果したナシ「南水」約1トンを販売した。
管内のリンゴ・ナシ被害額は約2千万円。「南水」は今月下旬から出荷が始まる品種で、被害の大きかった伊那市、箕輪町の果樹農家から持ち込まれた落果ナシを販売した。
熟期に早く、消費者には販売できないもので、JA職員がJA本所・支所(一部)、上伊那地方事務所などを回った。
1袋5、6個入りで350円と格安。各職員に理解を求めたところ、2袋、3袋とまとめ買いする人もいた。甘さがまだ足りないものもあったようだが「おいしい」と好評だった。 -
「雅秋園」ぶどう狩り始まる
箕輪町福与卯の木の果樹園「雅秋園」が9日オープンし、ブドウ狩りが始まった。開園を待ち望んでいた団体客や常連が訪れ、秋の味をたん能している。
甘い香り漂う園内では、ナイアガラ、デラウェア、コンコードのブドウ狩りができる。同園によると今年の作柄は例年並。天候がよかったので粒伸びもよく、甘みもあり、これからだんだん甘さがのっていくという。
町内の「いきいき塾」がオープンに合わせて来園。おいしそうに熟したブドウの房を切り取り、一粒ずつゆっくりと味わった。「甘くておいしい」「ブドウ狩りも楽しいね」と笑顔で話していた。
ブドウ狩りは10月上旬まで。営業時間は午前9時-午後7時。入園料(食べ放題)大人500円、子ども250円。園内食堂もある。巨峰、ナシなども販売している。団体は予約する。予約、問い合わせは雅秋園(TEL79・3619)へ。 -
伊那学コモンズ講座 第4回
飯島町営農センター、環境保全型有機農法の2事例を発表上伊那農業改良普及センターなど県の出先機関が合同で開く伊那学コモンズ講座の第4回が6日、県伊那合同庁舎であった。飯島町産業振興課長齋藤久夫さんの「飯島町の1000ヘクタール自然共生農場づくり」と、伊那市美篶の水稲農家小川文昭さんの有機農法に関する「ひと・むし・たんぼ」の2つの事例発表があり、約50人が熱心に耳を傾けた。
齋藤さんは、04年12月に政府発表の米政策改革大綱に盛られた「認定農業者制度」や「集落型経営体」の規定が、「農業と農村のあり方に大きな影響を与える」と強調。飯島町の営農センターの仕組と、独特な環境配慮型農業のプラン概要を説明した。
「頭脳集団」としての営農センターが作付け計画等を作成し、「実働集団」としての地区営農組合がそれを実施するという形で、町独自の環境基準を設けて、多様な食物を栽培すると同時に、グリーンツーリズムや農業関係ビジネス学校なども開催するという独特のプランに、参加者の関心も高かった。
小川さんは、有機農法による水稲栽培を17年間続ける中で、田んぼの生き物を観察・保全する活動を進めてきたことを紹介。知り合いの農家の後継ぎが自殺したことことに触れながら、「農家が農業を続けて行くことに魅力を感じられなくなっているのは何故か」と問題を提起。
「農家の経営は大切だが、お金になる作物をたくさん作ることに没頭するあまり、農業は米や野菜だけでなく、田んぼや畑に住む生物を育て、それを見つけたり観察したりする喜びを発進する力を失った。それが現在の最大の農業問題ではないか」と訴えた。
伊那学コモンズ講座は、県や地方自治体の職員が自ら働く伊那谷の歴史や魅力を知り、行政サービスに活かすことを目指して始められた。峯村きぬ子農業改良普及センター所長は「講演の2事例は、上伊那が全国に発進で切る優れたもの。当初は当センター主催の『環の農業者セミナー』で事例発表をお願いしたが、門戸を広げようと思い、伊那学コモンズ講座として行った」と話した。
なお、講師の一人、小川文昭さんが所属する「ひと・むし・たんぼの会」の会は、毎週木曜日、本紙6-7面にリレーエッセーを寄せている。 -
家畜排せつ物処理技術研修会
上伊那畜産振興協議会の家畜排せつ物処理技術研修会は7日、箕輪町文化センターや伊那酪農業協同組合であった。資源循環型農業を確立するため、畜産農家や農協、市町村など関係機関から約30人が参加し、たい肥化や尿の液肥化技術を熱心に学んだ。
たい肥製造技術研修は、県農業技術課主任専門技術員の吉田宮雄さんが指導。基本6条件に栄養分、空気(酸素)、水分、微生物、温度、時間を挙げ、最も重要な空気と水分は、通気性の目安が容積量が1リットルあたり0・5キロ、水分は家畜ふんの場合55-70%と説明した。
空気と水分の加減を簡単に見る「容積重」の計測方法として、10リットルのポリバケツにたい肥原料をすり切りいっぱい詰めたときの重さが5-7キロの範囲ならば、初期の好気性発酵に理想的な水分で空気も十分に含んでいることも話した。
また、一般から多くの苦情がある尿散布時の臭気を低減させる尿曝気処理の液化技術研修もあった。
曝気処理装置の仕組み・設置方法に加え、実際装置を導入した農家の事例を紹介。その農家が、処理を施した肥料を今年の春に散布をしたところ、明らかに臭気の減少が見られたという。
曝気装置は、既存の尿溜槽に直接設置でき、積極的に導入する農家も、徐々に増加しているが、装置を設置できる尿溜槽を持つ人が大規模農家に限定されていることや、コスト的な制約があることが、今後の課題となっている。 -
野ひばりの会が都会の修学旅行生にそば打ち指導
宮田村の農業女性グループ「野ひばりの会」は6日、修学旅行で同村を訪れていた神奈川県相模原市の当麻田(たえまだ)小学校6年生56人にそば打ちを指導した。都会の子どもたちは目を輝かせながら挑戦し、手作りの良さを感じていた。
児童の多くは初めての体験。粉を混ぜる所から取り組んだが「疲れた」と話す姿もみられた。
しかし、丁寧な指導を受けて、徐々に手つきもよくなり、みるみる上達。力の加減や切る時の繊細さなど、そば打ちの魅力を感じ取っていた。
「手作りの良さに、上手下手は関係ない。農村の体験を楽しんでくれて本当にうれしい」と、指導にあたった10人の野ひばりの会そば班のメンバーは、笑顔で児童とふれあっていた。
同小の修学旅行は宮田村を訪れるのが恒例。今年も村内農家の協力でスイカの収獲や牛の世話など、農業体験をした。
「今の子どもたちはつくることを知らない。体験は貴重な財産になったと思う」と担任教諭は話していた。 -
台風の被害状況まとまる
県は8日、台風14号による県内の農作物・農業用施設の被害状況をまとめた。
上伊那はリンゴ、ナシなど果樹が中心で、被害額は2560万円。ほかに宮田村でソバが倒れ、約4ヘクタールのテッポウユリの倒伏が飯島町で確認された。西箕輪などの一部で、大きな果樹被害があった伊那市は、施設被害も発生した。
市町村別被害額は、▼伊那市=果樹880万円(リンゴ679万円、ナシ164万円、ブドウ37万円)施設404万円▼箕輪町=果樹552万円(リンゴ176万円、ナシ325万円、マルメロ43万円、クリ8万6千円)▼辰野町=果樹206万円(リンゴ181万円、24万円)▼飯島町=果樹229万円(リンゴ135万円、ナシ94万円)▼南箕輪村果樹106万円(リンゴ91万円、ナシ15万円)▼宮田村=ソバ=59万円、果樹(リンゴ)21万円窶煤B
県は、応急技術対策の情報提供をしている。
【果樹】(1)倒伏は早期に立て直し、支柱で固定する。根が露出した場合は土盛りし、マルチ・灌水で乾燥防止と新根発生に努める(2)大枝が裂けた場合、傷口を平に削り、癒着促進剤を塗布する。完全な立て直しができない場合も固定するか可能な範囲で持ち上げ、地面との間に空間を作る(3)落下果実の出荷は、JAや集出荷団体と十分連絡をとり、指示に基づき農薬使用基準を確認し、適切に処理する(4)収穫中のブドウ棚が倒壊した場合、地面との間に空間をつくり風通しを良くする支柱入れ、出来るだけ早く収穫し、棚は後で立て直す(5)葉や果実の痛みが大きい場合は、農薬使用基準に沿って殺菌剤散布する。
【水稲】(1)倒伏した水田は排水し、稲体をできるだけ引き起こし、茎葉の腐敗や穂発芽を防ぐ(2)倒伏した稲で成熟期の5日程度前のものは、直ちに刈り取る(3)フェーン減少でほ場水分の低下が予想される場合は走り水を行う
【花き】(1)キク、リンドウ、シンテッポウユリなどの露地品目が倒伏した場合は、支柱を立て直し、ネットにより株を引き起こして曲がりを防ぐ(2)リンドウ、シンテッポウユリで先端が折れた場合は、そのまま茎葉を残して次年度の株養成にまわす(3)茎葉の保護と葉枯病防除のため、農薬使用基準に沿って殺菌剤散布を行う(4)施設の損傷を確認・補修する -
中箕輪農事組合法人組合長
唐沢福一さん(56)赤いじゅうたんを敷き詰めたように咲く赤ソバの花を一目見ようと、県内外から多くの観光客が訪れる箕輪町上古田金原地区の「赤そばの里」。8月上旬にまいた赤ソバ(高嶺ルビー)が咲き始めた。
4・2ヘクタールの畑で赤ソバを育てているのは中箕輪農事組合法人。「そば処 留美庵(るびあん)」も運営し、ここでしか食べられない「十割赤そば」を提供している。
もとは花き農家。花栽培は今は主に奥さんがしているが、「そば屋をやることは全く考えていなかった」。
事の始まりは93年、荒廃農地をうめるために始めたソバ栽培。生産だけでなく、商品化し販売まで手掛けようと、97年に中箕輪そば組合を組織した。
始めは普通のソバだけだったが、赤ソバの話を聞き、「景観にいいかな」と種苗会社に問い合わせ、種15キロを購入。広域農道沿いの畑にまいたところ、秋に咲く赤い花が評判になった。金原地区の畑を組合で借り、「赤そばの里」が生まれた。
現在は、留美庵周辺の6ヘクタールも含め赤ソバの栽培面積は12ヘクタール。普通のソバは2・5ヘクタールで夏と秋の年2回収穫している。
「留美庵」は98年に開店。今年8年目を迎えた。「当時はそば人口は今ほどなくて、『そば屋をやるなんて』『やってもつぶれる』と馬鹿にされた」。仲間と各地を見て歩き、塩尻で女性のグループが自分達でお金を出し合って店を運営しているのに励まされ、「やろう!」と決意した。
年越しにそばを打っていたとはいえ「全くのど素人」。農業とサービス業の違いにも苦労した。「農業は相手が頭を下げるけど、店は自分が頭を下げる。仕事が逆なんだよね。大変だった」。商売という初の経験に胃潰瘍にもなった。
「食べやすいそばにしよう」と研究を重ね、3年目から、そばは全く変わった。「つるっと入るくせのないそば」にするため製粉を研究。1カ月に1回、石臼の目立てを変え、理想の目立てになるまで3年を費やした。
「そばって食べると高いでしょ。だから真剣に考えないといけないと思った」
ソバを最もいい状態で収穫するよう収穫時期にこだわり、適切な温度と水分管理による保存方法も確立した。
赤そばも十割にこだわった。「味は普通のそばと全く違う。かんでいると甘くなる。どうしても十割でやりたかった」。最初は短く切れてしまったり、ゴムみたいだったり…。試行錯誤の末、十割そばを完成させた。
「子どもから大人まで皆に食べてもらえるそばにしたい。だれでも気軽に入れる、ファミリー的なそば屋にしたい」
思いの通り、家族連れが多く訪れる。赤そばがある珍しさから、8月ころからは県外者の来店が増える。
中箕輪そば組合は04年4月、中箕輪農事組合法人に組織を再編成した。信用度を上げ、付加価値をつけ、一層親身になって取り組もうという思いからだ。
「おいしかったと言われるのが最高。まだまだおいしくなっていく余地がある。そばって食べやすさなんだよね。単純なだけに難しい。まだまだ勉強です」 -
台風14号の影響
台風14号の影響で強い風が吹き、7日、伊那市、箕輪町を中心に、リンゴや梨の落果、稲やソバの倒伏、ブドウ棚の倒れなどがあった。上伊那地方事務所は8日以降に被害面積や被害額などをまとめる。
伊那市内で、「つがる」やジョナゴールドなどを栽培する生産者の一人は「台風の直撃を逃れて、よかった。9割が落果した数年前に比べてまだいい」と話しながらも「台風前に若干収穫したが、熟期でないものは残しておいた。落ちなくても、すれて傷ものになってしまう」と心配そうに雨の中を見守っていた。
また、収穫を控えたぶどう園では、一部の棚が根本から倒れた。豊作だっただけに、生産者は「まいった」と肩を落としたが、ブドウに傷みはなく、まずはひと安心。復旧作業が進み、予定通りにオープンする。
宮田村では、使用していないハウス2棟が倒壊。大田切区で栗の木が倒れ、一時道をふさいだが、村が撤去した。宮田高原に向かう寺沢林道で落石もあった。
飯島町のJA果実選果場には「つがる」「幸水」が通常に比べて2窶・割増の持ち込みがあったという。
今後、果実の玉ずれ被害が広がる可能性もあるとみられる。
小中学校は、時間を切り上げて集団下校するなど対応した。
飯田測候所によると、伊那の最大風速は15メートルで、降水量(午前6時窶伯゚後6時)は14ミリだった。 -
箕輪町営農センターたい肥散布機レンタル開始
箕輪町営農センターは、町内で農地を耕作する人を対象に、自走式小型たい肥散布機のレンタルを始めた。7日、育苗ハウスでデモンストレーションがあり、関係者が機械の性能などを確認した。
町は、05年度を「土づくり元年」と位置付け、地域農産物の「箕輪ブランド」づくりの足がかりとして、有機たい肥利用の促進と普及を図る土づくり事業に取り組んでいる。
たい肥散布機は、営農センターが町の全額補助を受けて購入。全長2・8メートル、幅1・3メートル、高さ1・2メートル。最大積載量は600キロ。散布幅は1・2メートルから2・5メートル。
特徴は、▽たい肥の自動積み込み、運搬、散布が1台でできる▽レバー1本で前・後進、無段階速度調節が自由にできる▽拡散板の開閉で散布幅の調節ができる-など。たい肥銀行で扱うたい肥専用として貸し出す。
たい肥散布はこれまで、果樹園やハウスでは手散布しかできず、施肥していないケースもある。貸し出す散布機は小回りがきく自走式で、果樹園やパイプハウスでの使用に適しているという。
デモンストレーションでは、散布機の機能を見たり、たい肥銀行の関係者らが散布機に合うたい肥の水分量などを確認した。
本格的な稼働は、果樹園などが収穫を終えた10月ころからの見込み。営農センターは、「化学肥料だけでは本物の“味”にはならない。良質なたい肥の投入が不可欠。有機農業を実践しよう」と、散布機利用を呼びかけている。
問い合わせ、申し込みはJA上伊那グリーンセンターみのわ(TEL79・0636)へ。 -
上伊那の今年の水稲作況予測まとまる
水稲の収穫を目前にひかえ上伊那農業協同組合は5日、上伊那で一斉に坪がりをし、作況を104、例年より良好と予測した。
上伊那の10アールあたりの予想収量平均は623・2キロ。地域別には、伊那市、南箕輪村、高遠町、長谷村からなる中部が最も高く625・6キロ。南部は622・1キロ、北部は620・2キロとなった。
収穫時期は平年より1、2日早く、施設受け入れは、予定通り。
登熟は良好で品質も良いが、刈り遅れによる胴割れが心配されるため、JA上伊那は、稲作農家に適期刈り取りを呼びかけていく。 -
駒ヶ根市、宮田村で
コイヘルペス陽性反応県農政部は6日、駒ヶ根市で8月26日に、宮田村で30日に採取した検体を調査した結果、コイヘルペスウイルス陽性が確定されたと発表した。三重県にある水産総合研究センター・養殖研究所が診断した。
駒ヶ根市、宮田村ともに個人の池で採取したマゴイ。駒ヶ根市では05年度5件目、宮田村では初めて、上伊那では合計6件、県全体では25件になる。 -
農業土木学会賞の著作賞を信州大学の木村教授が受賞
棚田や中山間地の実情を、現場の視点から分かりやすくまとめた著書『信州発棚田考』(ほうずき書籍)が評価され、著者の信州大学農学部の木村和弘教授が、05年度農業土木学会賞の著作賞を受賞した。
専門は農村計画や農業土木学。「持続可能な農業にはどんな水田が必要か」を調査する中、作業に危険や過酷さが伴う棚田は、高齢農業者に重い負担を強いるため、深刻な担い手不足を生み、棚田の荒廃を一層加速させていることを知った。棚田を荒廃から守るには、生産性向上にのみに着目するのでなく、安全性確保や労働力を軽減する区画整備が不可欠窶狽ニ実感した木村教授は、こうした視点から区画整備研究をして、市町村の区画整備事業などにも携わってきた。
書籍は、木村教授が伊那毎日新聞に掲載中のコラムをもとに8章72話にまとめた。中山間地や棚田の現状と問題点、その解決方法を、分かりやすく提言している。
景観・文化資源保全の側面から、棚田が注目される一方、それを維持管理する農家の問題には目が向かない現状に対し、木村教授は「ただ景観保全や自然環境保護の観点からのみ保全を訴えても荒廃は防げない。一般の人にも本に書かれている内容程度の事実は知ってほしい」と訴える。また「この本が、こうした問題に悩む農家の人の窓口になれば」と話し、著書の中でも、悩みを抱える農業者に、気軽に尋ねてほしい窶狽ニ呼びかけている。 -
信州伊那路共選八乙女直売所オープン
箕輪町の広域農道沿い、信州伊那路共選八乙女直売所が2日、今年の営業を始めた。ナシやリンゴが店頭に並び、地元の人が訪れ秋の味覚を買い求めている。
信州伊那路共選のナシとリンゴの選果は8月26日に始まった。今年は、春先の霜被害もあまりなく、天候も順調で、果物の出来はいいという。
販売しているナシは愛甘水、幸水、リンゴはサンつがる、さんさ。洋ナシのバートレット、モモも並ぶ。いずれも1袋500円。
今後、ナシは20世紀、豊水、南水など、リンゴはシナノスイトウ、紅玉、ふじなどが順次、店頭に並ぶ予定。
営業時間は午前9時-午後6時。11月から営業を終了する12月上旬までは午後5時。発送も受け付ける。 -
第3回伊那学コモンズ講座
上伊那で働く県・市町村職員などに、地域の貴重な歴史や風土、自然を知ってもらおう窶狽ニ上伊那地方事務所が、昨年から始めた「伊那学コモンズ講座」の3回目が29日、伊那市の県伊那合同庁舎であった。一般住民も含めた約60人が、地域食材の保全と活用を学んだ。
信州大学農学部の大井美知男教授が「野菜は生きた文化財」をテーマに講演。日本の中心に位置する長野県は、関西・関東方面双方からさまざまな文化・品種が伝わったり、融合したため、55から60もの多様な在来種野菜が残っているという。 犀川、千曲川などの川沿いを中心に、肥よくな土地が多かった北信は、ダイコンなどの品種が多く、灌漑(かんがい)設備が未整備で、土壌条件も悪かった南信は、同じアブラナ科でも、やせた土地で育つカブなどの品種が増えた窶狽ニ説明した。
また、移封された保科正之と共に福島県の会津若松市に伝わった「高遠そば」は、現在も同地域に根付き「地域の人も高遠に対してとても好意的」と講演した。 -
韓国の研修団が宮田方式の今にふれた
集落営農などを学びたいと30日、韓国・忠清南道の農業者グループ16人が宮田村を訪れた。「宮田方式」と呼ばれる営農システムについて説明を受けたほか、リンゴや山ぶどうの転作地などを視察した。
一行は、韓国の全国的な農業組織「全国農民会総連盟」に加わっている若手農業者。28日から1週間の日程で、新潟県の魚沼や伊那谷など、各地の農業現場を見学している。
宮田村では、村の担当者が「宮田方式」について説明。
農地の所有と利用を分離し、かつては画期的な集落営農だったことを話したが、担い手不足などで方式そのものが行き詰まっていることも伝えた。
研修団長の金相賢さんは「韓国でも10年後には後継者問題が社会問題になる可能性がある。農民の地位を高め、豊かになる方策を考えなければ」と話していた。 -
地元の麦でビールをと宮田村でプロジェクト始動
地元産の大麦で地ビールをつくりたいと宮田村で構想が持ちあがり1日、関係者が集まり初の検討会を開いた。同村内で地ビールを醸造している南信州ビールは技術的な研究を始めたいと説明し、農協も賛同。麦の質やコストなど不透明な部分も抱えるが、「地域に根ざしたビールを」との共通認識で計画は始動した。
南信州ビールは今年、宮田村内の酒販店と協力し、地元の名水を使った「伊勢滝の風」を発売。
そのプロジェクトに関わった大田切区の農業田中一男さんが「地元の麦も使えないか」と同ビールに提案し、関係者に呼びかけた。
検討会には、農協、農業改良普及センター、村の担当者も出席。
南信州ビールの竹平考輝工場長代理は、地元産の大麦は通常ビールに使わない六条大麦であるが、麦芽として使える可能性を研究したいと説明。
農協と普及センターは研究調査に協力する意向で、調査結果によってはビールにあった品種の作付けにも前向きに取り組む姿勢を示した。
宮田村内では転作により約30戸の大麦栽培農家がおり、年間87トンほどを生産。
対して南信州ビールの麦使用量は年間15トンほどで、糖度やデンプン質など品質が適合すれば「原料として供給することは十分可能」(農協)だ。
農協宮田支所の小田切政市営農課長は「地元の製品になれば、栽培農家の意識も高まる」と話した。 -
韓国の農業者グループがJA上伊那で研修視察
日本の農業事情を学ぼう窶狽ニ韓国の中心部にある忠清南道(チュンチョンナムド)の農業者グループ「全国農民会総連盟忠清」のメンバー16人が、伊那市の上伊那農業協同組合本所を訪れた。
四季があり、消費農産物が似ている日本は、韓国よりも農協組織などが発達しているという。こうした日本の農業事情と、グリーンツーリズムなど、農業全般の取り組みを学ぶ目的で来日。6日間で県内外の農業地域数個所を視察する。
この日は、JA上伊那の事業全般を学んだり、富県北福地の稲作農家、北條久志さんのほ場を見学しつつ、意見交換をした。
北條さんは、地区の協業組織に参加し、後継者のない農地などを借りつつ、約32ヘクタールで稲を育てている。韓国でも担い手問題が深刻化しており、参加者たちは、地区で土地や農業機械、農作業を融通する“協業”に関心を示した。
「地代が安すぎるのでは」との質問も出たが、北條さんは「現在は、農地を利用・保全してくれるだけでもありがたいという人が多い。米の価格も低下する中、高いという人は少ない」と説明した。 -
もっと美味しいワインにしたいと視察
宮田村の特産品・山ぶどうワインの生産に携わる「中央アルプス山ぶどうの里づくり推進会議」は28日、国内ワイン発祥の地とされる新潟県上越市の岩の原ぶどう園などを視察。園地や施設などを見学したが、「宮田村の取り組みや意識は、決して先進地にもひけをとっていない」と改めて自信を深めた。
山ぶどうを栽培する村内農家のほか、醸造元の本坊酒造、農協や村の担当者約20人が参加。
岩の原ぶどう園では、丘陵地帯に広がる園地や隣接する醸造施設を見て回った。
なかでも醸造したワインを適度な温度で管理する施設「岩室(いわむろ)」は全員が興味深げ。宮田村にも導入計画が挙がっており、熱心に見ていた。
また、宮田村よりもひと足早く山ぶどうワインの生産を始めた下高井郡木島平村の園地も見学した。
宮田村の山ぶどうワインは生産開始から7年目を迎え、県の原産地呼称管理制度の認定を受けるなど、高い評価を得ている。
一方で「もっと美味しいワインをつくりたい」と、各関係者が連携。先進地視察を毎年実施するなど、技術向上に取り組んでいる。 -
みはらし観光農園リンゴ狩り開始
秋の訪れを感じさせる“リンゴ狩り”が27日、伊那市西箕輪の農業観光農園みはらしファームで始まった。
昼夜の気温差で赤くなるというリンゴは、ここ数日で一気に色づき始めた。一番早く色づくのは「つがる」、以降9月中旬から千秋、10月初旬からジョナゴールド、10月下旬から王林、11月初旬からフジの順番で、適期を迎える。
今年は春先の霜の影響もなく、たくさんのリンゴが実り、好天にも恵まれたため、それぞれが大きく育ったという。
園主の原伊一さんは「今回は台風も避けてくれて良かった。今年は例年になく最高の出来なので、地元の人にもぜひきてほしい」と話していた。
リンゴ狩りは予約制で、11月23日まで楽しめる。開園は午前9時縲恁゚後4時(入園は午後3時まで)、1時間食べ放題。4歳以上500円(3歳以下無料)。団体割引あり。
問い合わせは、みはらしいちご園(TEL74・7430)へ。 -
上伊那森林組合臨時総代会
上伊那森林組合(井澤通治組合長)は24日、伊那市の東春近ふれあい館で臨時総代会を開き、新たな理事を承認した。
村長交代などに伴い、これまで4人の理事が欠員となっていたが、今回新たに、唐木一直南箕輪村長、曽我逸郎中川村長、清水靖夫宮田村長、有賀久人氏(辰野町)を理事に承認。同組合の理事は200人となった。
任期は07年5月まで。 -
台風に気を揉む農家
台風11号の接近により上伊那地方も25日午後から風が強くなり、収獲の最盛期を目前に控えた果樹農家らは眠れぬ夜を過ごした。
「つがる」の出荷を控えた宮田村駒が原地区のリンゴ園では、台風に備え一部を早めに収獲する姿もあった。
「色付きが完全ではないが、風で落とされるよりはまし。けど、収獲したのは一握り」と、緑色が残るつがるを手に女性は話した。
関係者によると、今年のつがるの生育は若干遅く、収獲の最盛期は1週間から10日後を見込んでいる。
ある男性園主は「お手上げ。対策の施しようがない。色が付いていないリンゴを収獲できない」と話し、日常と変わらぬ最後の手入れ作業に励んだ。
「今年は凍霜害もなく、順調だったのに。あと1週間。自然相手だから仕方ないけど」と、徐々に強まる風に不安の色を濃くした。
伊南地域の果樹が集まる飯島町のJA飯島果実選果場には、前日までと比べ2倍ほど多いリンゴやナシが持ち込まれたが、様子を見た農家も多いという。 -
上伊那集落営農数県下1位
関東農政局による県内での集落営農数調査(6月27日発表)の結果、全体に占める上伊那の集落営農数は37・9%と、県内で最も多いことが分かった。
集落単位で農業生産を担う集落営農は、高齢化や後継者不足の対応策として、全国規模で進められている。
今回対象としたのは、合意のもと共同で、農業生産に取り組む集落で、機械所有の共有のみや栽培協定・用排水管理の合意のみのものは含まない。
県全体の数は182で、2000年に比べ9件増加。上伊那は69件だった。以下、松本地域38件、下伊那31件と続く。
集落営農は、各市町村や農協などを中心に、積極的に進められていることが増加の背景にあると考えられる。
上伊那は、水稲栽培が盛んなことも関係して、カントリーエレベーターなど、大規模設備を早い段階から取り入れ、機械設備の共同利用が進んだ結果、他地域に比べ、集落営農が進んだと見ている。