-
伊那市・西春近北小児童 体育館の避難住民に歌声贈る
「♪希望の風船飛ばそうよ」竏秩B21日午前、伊那市の西春近北小学校の児童たちは、体育館に集まる避難住民に向けて、合唱などのミニコンサートを開いた。住民らはうっすらと目を濡らし「元気をもらった」と明るい表情を広げていった。
片桐省平校長の機転で、1、2、4年生(合計約100人)が次々と活力あふれる歌声やリコーダー演奏を披露。土砂崩落で避難所暮しの沢渡地区約30人にとっては、笑顔を取り戻す「予期せぬプレゼント」になった。
1年まつ組の33人は「シャボン玉」「ともだち」など3曲を披露。橋爪陸君(6つ)は「早く雨が止んでほしい」との願いを込めて歌った。児童たちは体を左右に揺らせながら、体育館に響き渡る大きな声を贈った。
「こんな状況で歌が聞けるなんて」「避難所の雰囲気が明るくなった」などと観客は感動した様子。中には肩をもみに避難所を訪れた孫の優しさを喜ぶ男性の姿もあった。
片桐校長は「避難所での一番の敵はストレス。暗い話題ばかりなので、少しでも気が紛れてくれれば」と住民らの笑顔に目を細めていた。 -
ベル伊那店 陶芸家・天狗寺陶白人さんが個展
岡山県津山市の陶芸家・天狗寺陶白人さん(55=本名・寺元進=)の県内初となる個展は25日まで、伊那市日影のベルシャイン伊那店2階文化ホールで開いている=写真。
材料となる土の選定などを自身で考えた「天狗寺焼き」に約30年間取り組む。昔ながらの穴窯で焼いた素朴な印象の花器、茶器、日用食器など60余点を展示販売している。
「野山あるき」をテーマに作陶した花入れを中心に出品。「野山を歩いていて、咲いている花を家に帰って生けたいな」(天狗寺さん)と思えるような器の前に、来場者の足が止まっている。
天狗寺さんは、現・京都造形大学を卒業後、飛騨高山の長倉三朗氏に師事し、2年間の修行を終えると帰郷。天狗寺山中に築窯し、地元の土を使ってオリジナルの陶器づくりに励んでいる。
「人の作品と違う部分を強調するのではなく、同じ部分を見てほしい。伊那の土と岡山の土にも共通点があることを知ってほしい」と来場を呼び掛けている。
入場無料。午前10時縲恁゚後6時30分(最終日は午後3時)。 -
沢渡地区に避難勧告
沢渡地区に避難勧告
伊那市災害対策本部は20日4時半、沢渡公民館から南側でJR飯田線よりの上下段丘に住む87世帯260人と15事業所に、新たな避難勧告を発令した。
同地区の段丘からの出水を確認し、土砂災害の恐れがあると判断。沢渡周辺の市道を通行止めにし、西春近北小学校への避難を促した。
今のところは、他地区でこうした兆候は確認されていない。 -
駒ケ根市災害対策本部廃止 - 警戒配備へ
大雨による天竜川の水位上昇などにより19日午前1時に設置された駒ケ根市災害対策本部(本部長・中原正純市長)は20日午前、市役所で会議を開き、天竜川の水位が下がってきていることから対策本部をいったん廃止することを決めた。市の災害対策担当者は、これまで人的被害や大規模な被害は発生していないが、21日にさらに降水が予想されるため、原寛恒助役を長とした警戒配備態勢をとって引き続き状況を見守っていきたい竏窒ニしている。
天竜川の水位上昇により19日に冠水した丸塚公園と下平一帯約7・6ヘクタールの水は20日にはうそのように引き、一部に泥が残っているだけ。水稲など農作物への被害もなかった。
市内各地で小規模な冠水などがあったが、いずれも土のうを積むなどして対応し、大きな被害は出ていない。 -
わが家のセーフティーリーダー委嘱式
地域の防犯意識を高めようと駒ケ根警察署と伊南防犯連合会は20日、駒ケ根市内の2小学校の6年生54人に対し「わが家のセーフティーリーダー」のリーダー証を交付した。同署の山本修作署長らが東伊那小学校と中沢小学校を訪れ、児童一人一人にリーダー証を手渡した=写真。山本署長は「あいさつの前には相手の名前を呼んでください。地域の人が顔と名前を覚えてくれる。そして弱いものいじめなど卑きょうなことをしないように。地域の安全をつくり上げるリーダーとなることを期待する」と呼び掛けた。
リーダー証には「友達や家族に安全を広めるリーダーとしての任務」として▽元気良くはっきりとあいさつする▽決められたルールを守る▽みんなの手本になる行動をとる竏窒ネどが掲げられている。 -
宮田村の山腹で山林斜面大崩落
土石流発生、黒川決壊集中豪雨により19日午後6時ころ、宮田村の黒川北側の山腹で高さ80メートル、幅50mに及んで山林斜面が大崩落。土石流となり、せき止められた黒川が決壊した。県道や村道を飲み込み、下流約1キロまで土砂や水が流出。応急処置を施して人家などへの影響は出ていないが、再崩落や増水の可能性もあり、予断を許さない状況が続いている。
現場は駒ケ根橋上流300メートルほどの地点。対岸の駒ケ根高原内のホテル宿泊者が崩落の様子を目撃。村や県は通報を受けて、流れ出た土砂や水を食い止めるため、深夜まで必死の作業が及んだ。
ただ、山腹上部には亀裂があるという情報もあり、2次災害の危険性もあるため復旧は手がつけられない状態。
上伊那建設事務所の担当者は「斜面全体がずり落ちた格好。まだ大雨の可能性があり、さらなる崩落の可能性も否定できない」と話した。
近くに民家はないが、水の流出は宮田観光ホテル脇の県道にも達した。ホテルに宿泊者がいたが、影響はなかった。
水や土砂の流入で寸断された県道駒ケ岳公園線はロープウェーに通じるなど、中央アルプスの玄関口となるが、千畳敷ホテルや駒ケ岳の山小屋は17日の雨量規制で宿泊者はなかった。
この雨により、周辺の宿泊施設も大打撃。夏休みのかきいれ時を迎えるが、キャンセルが相次いでいる。
宮田村新田区の宮田観光ホテル、隣接する温泉施設こまゆき荘はともに通常営業しているが、宿泊、宴会がほぼキャンセル。従業員は「今月一杯は開店休業の状態。これからお盆までが一番のシーズンなのに」と肩を落とした。
今月末まで20組ほどの団体キャンセルもあり、被害はさらにふくらんでいる。
宮田村宮田高原へ続く寺沢林道は各所で崩落があり寸断。復旧のめどは立っていない。
キャンプ場利用者はなく、取り残された人はいない。 -
続く豪雨被害、宮田村で山林崩落
梅雨前線による集中豪雨被害は、雨が小康状態となった20日も続いた。宮田村では19日夕、駒ケ根高原にもほど近い黒川平で山林斜面が崩落。黒川をせき止め、土砂や水が県道、村道を流れたが、20日も応急処置のみで手がつけられない状態が続いている。
崩落した土石流が直撃した県道駒ケ岳公園線は完全に川と化して、100メートル以上に渡って完全に寸断。夏の行楽シーズンも控えるが、復旧の見通しは立たない。崩落現場からは依然として泥や土砂が流れており、再崩落の懸念もあるため監視を強めている。 -
交通渋滞で物資滞る
大雨やそれに伴う災害が発生した19日、中央道、杖突峠、国道153号線など各道路が通行止めとなった。それに伴い、各地区のスーパーやコンビニエンスストアでは物資が届かず、生鮮食品を中心に、品薄状態となった。
松本方面からの物資供給の割合が大きいある大型店では、朝、1割程度の物資供給があったが、その後の供給が滞った。杖突峠の復旧後は、山梨方面からの物資が3時間遅れで到着したが、松本経由の物資は届かず、いつもの4割ほどしか物資がそろわなかった。
20日は、杖突峠に加え、川岸方面道路も復旧したが、物資の到着は5、6時間遅れとなった。同店の店長は「冬場、大雪があるとたまにこうした状態になることはあったが、1日だけ。雨だけでこういう状態になるのは初めて。中央道が通れない影響が大きいが、復旧の見通しがつかないことが心配」と危惧する。
中央道を管理する中日本道路は、20日を目標に復旧作業を進めてきたが、再び土砂の流入があったことにより通行止め解除にはさらに時間がかかると見込んでいる。 -
伊那食品工業、社員が災害復旧へ参加
大雨の影響で各地で災害が発生した19日、伊那食品工業(本社・西春近)では、社員40人が土石流被害のあった柳沢地区の復旧作業にあたった。
市内でも深刻な被害があった柳沢地区には、伊那食品工業の社員が住んでおり、うち3人宅の敷地には土砂や流木が流れ込み、周辺の水田や畑もほぼ壊滅状態となった。それを受け伊那食品工業では、工場の稼動に影響がでない営業、間接部門の男性社員ら40人と会社の重機などを同地区に動員。被害にあった社員宅を中心に、土砂の撤去、土嚢(どのう)積み、道路整備などに1日係りで取り組んだ。
伊那食品工業の関係者は「すべてを元通りというわけにはいかないが、生活するのに必要な部分は確保できた。従来から社員同士の助け合いを大切にしてきたのが今回の災害で役に立った。改めてお互いに助け合うことの大切さを実感した」と話す。
20日も引き続き15人が復旧作業に当たった。 -
はら美術で伊那市の池上信子さんが書展
伊那市旭町のはら美術で20日から、伊那市日影の池上信子さん(74)の書展「くらしの中に書を」が開かれている。かなの美しさを伝える作品約65点が、訪れた多くの人を楽しませている=写真。
主に公民館などで教室を開いている池上さんが、はら美術での個展は2回目。文字離れしつつある今、書をやっていない多くの人にも文字の良さに触れてほしいという思いから、仮名を取り入れた作品も多く並べた。
書のテーマは、四季折々の情景が浮かぶという井月の句をはじめ、近年話題となったドロシー・ロー・ノルトの「子は親の鏡」や、37歳の若さで無くなった井村清さんの詩などを取り上げた。池上さんは「今の世の中にかけていること考えさせるような内容。書を見た人にこうしたことをもう一度考えてもらえれば」と話す。
また、今は使われなくなった古いざるやふるいを使って展示した作品などもある。 -
二極化する集落営農組織の立ち上げ(2)
水田面積の占める割合が大きい地区は比較的迅速に集落営農組織の発足準備を進めている一方、畑作面積の占める割合が大きい西箕輪地区、伊那地区などは、協議が難航している。これらの地区は、畑作農家が参加しなければ面積要件を満たす担い手組織がつくれない。しかし、新しい経営所得安定化対策の恩恵が少ない畑作農家には、組織に参加することにメリットを見出せない人も多く、地区の合意形成が図れずにいる。
伊那地区では、耕作面積の約4割が牧草地と畑。地区で一つの組織立ち上げることを目指してきたが、畑作、牧畜農家の反応が鈍い。
土地の相続税を危惧する人もいる。農地の相続については、細分化防止などの目的で相続税を猶予する制度があり、猶予された個人は、その土地を原則として20年、農業用地で使用した場合に免除される。しかし、組織に参加した場合、土地の所有権が個人から団体へと移るため「その後、相続税は猶予されるのか」と懸念する。
西箕輪地区の場合、遊休農地の管理方法も課題となっている。
同地区は、高齢化、若手農業者の減少に伴い、約7%以上の農地が荒廃している。任意組織は、これら遊休農地も面積集積する予定だが、現在地区で農業を営む人のほとんどが、自分自身の農地を耕作するのに手一杯で、荒廃地を耕作する余裕がないのが現状。まして、何の助成もない畑を耕作していく余裕もないという。
しかし、JA職員は「組織に参加しなかった人たちが今後高齢化した時、その人たちの農地を耕す後継者がおらず、一層荒廃が進んでしまう事態を招きかねない」と危惧する。
畑作面積が大きいわりに、比較的スムーズに協議を進めてきたのが西春近地区。約4割が畑作で占める同地区は、地区で一つの組織を発足し、法律の位置付ける「特定農業団体」としする。すでに85%の基本合意を得ており、加入申し込みに向けた準備が進んでいる。発足は9月を目途としている。
西春近の場合、地域の実情に熟知した関係者が中心となり、3年間かけて組織のあり方を検討してきた。地区で一つとしたのは、認定農業者を除いても任意組織が担い手の面積要件を満たせるため。また、特定農業団体とすることで土地の利活用を円滑に図れるようにした。関係者は「個人で担い手となれる大規模農家だけでなく、小規模にやっている人も一緒に地域で農業を続けていけるような組織にしようとみんなで話し合ってきたんだよ」と経緯を話す。
西春近には、すでに田植えや刈り取りを共に行う協業組織があるが、これらは全て任意組織に統合していく。 -
箕輪町 大雨の影響
天竜川護岸補強工事続く
2カ所で避難生活箕輪町松島北島地籍の天竜川右岸の堤防が決壊した現場では、19日から夜を徹して護岸の補強工事が続いている。
決壊は長さ400メートル、幅50メートル。堤内地側への浸水被害はない。決壊した場所全面に大型の土のうと、重さ5トンのテトラポットを積む作業をしている。153号バイパスの戸沢線から沢までの区間は通行止め。
町は、「安全確認ができれば避難指示を勧告にしたい」としているが、北島地区は避難指示が続いている。避難対象は99戸210人。松島コミュニティセンターには20日も、28人が避難している。
土石流が発生した箕輪町北小河内中村地区は、町建設業組合が土石や流木などの除去作業を続けているが、復旧には最低1週間かかる見込みという。
中村地区の80戸300人は、北小河内公民館と南小河内公民館に避難していたが、18日午後3時に避難指示が勧告に変わり、20日午前10時に南小河内公民館の避難所を閉鎖。北小河内公民館に合流し、60人が避難生活を続けている。
被害は床上浸水14戸、床下浸水17戸。中村と久保南部で約90戸が断水している。町は、20日中に復旧できるよう対応を急いでいる。
松島コミュニティセンターと北小河内公民館の避難住民に対し町は、ながた荘の入浴券を配布。北小河内の住民は個々に、松島の住民は町のバスでながた荘に行き、1日ぶりに入浴した。
町内は下古田で浸水、河川の護岸崩落、法面の崩落、土砂流出など各地で被害が出ており、応急復旧作業が続いている。 -
浸水、土石流など南箕輪村被害小規模
南箕輪村は20日、19日の大雨災害の被害状況をまとめた。床上、床下浸水、沢の土石流発生、林道の土砂流出などがあったが、小規模災害にとどまった。
村は18日午後3時、北殿・南殿・田畑・神子柴の4地域の避難支持を避難勧告に切り替え、久保、塩ノ井の2地域の避難勧告を解除。午後10時に4地区の避難勧告を解除し、全避難が解除になった。
浸水被害は、伊那市境の大清水川と天竜川の合流地点周辺に集中。床上浸水は、北殿の住宅1件、田畑と神子柴の事業所・工場3件、床下浸水は北殿と神子柴で住宅各1件、事業所5件(北殿1、田畑2、神子柴2)。
大泉ダム下の大泉所滝洗沢で土石流が発生し大泉川に達して村道の一部に押し出した。田畑大泉川の護岸は長さ4メートル、幅70センチ、深さ2・5メートルえぐられた。大泉所山線の林道は4カ所で陥没と土砂流出があった。
農作物はスイートコーンとピーマンの被害面積が2・6ヘクタールで、1割の減収の見込み。
村は初動対応が早く段階的に非難準備、勧告、指示を出した。北殿区の下段地域は、天竜川の水害を想定した訓練を昨年実施したばかりで、訓練が機能。各地区自主防災会などの対応も早かった。避難の最終確認は、職員と消防団員がローラー作戦で実施。避難を拒む人が少数いたり、企業が操業しており指示の難しさもあったが、「早め早めの対応ができた」としている。
南箕輪村は20日、19日の大雨災害の被害状況をまとめた。床上、床下浸水、沢の土石流発生、林道の土砂流出などがあったが、小規模災害にとどまった。
村は18日午後3時、北殿・南殿・田畑・神子柴の4地域の避難支持を避難勧告に切り替え、久保、塩ノ井の2地域の避難勧告を解除。午後10時に4地区の避難勧告を解除し、全避難が解除になった。
浸水被害は、伊那市境の大清水川と天竜川の合流地点周辺に集中。床上浸水は、北殿の住宅1件、田畑と神子柴の事業所・工場3件、床下浸水は北殿と神子柴で住宅各1件、事業所5件(北殿1、田畑2、神子柴2)。
大泉ダム下の大泉所滝洗沢で土石流が発生し大泉川に達して村道の一部に押し出した。田畑大泉川の護岸は長さ4メートル、幅70センチ、深さ2・5メートルえぐられた。大泉所山線の林道は4カ所で陥没と土砂流出があった。
農作物はスイートコーンとピーマンの被害面積が2・6ヘクタールで、1割の減収の見込み。
村は初動対応が早く段階的に非難準備、勧告、指示を出した。北殿区の下段地域は、天竜川の水害を想定した訓練を昨年実施したばかりで、訓練が機能。各地区自主防災会などの対応も早かった。避難の最終確認は、職員と消防団員がローラー作戦で実施。避難を拒む人が少数いたり、企業が操業しており指示の難しさもあったが、「早め早めの対応ができた」としている。 -
箕輪町とジャスコ箕輪店が災害時の協定締結
ジャスコ箕輪店と箕輪町は20日、災害時の生活物資供給協力と、大規模災害時の駐車場の一部開放の協定を締結した。
イオンの今年の方針で、地域の災害時への支援のため全店舗が地域との災害協定締結に取り組んでいる。箕輪店が町に申し入れた。
応援生活物資の供給は食品、日用品、衣類など59品目。町の要請に応じて供給する。駐車場は、一時的な避難所として南側駐車場の約半分、160台分の広さを開放する。
18日からの梅雨前線豪雨による災害で、ジャスコ箕輪店は19、20日に飲料500ミリリットルのペットボトル325本、パン220個、おにぎり60個を供給。町が避難所に配った。
平沢豊満町長は締結前の協力に感謝し、「万一の時に供給いただける調印ができ大変心強い。広い駐車場も借りられる。大変うれしい」とし、ジャスコ箕輪店の沖剛一店長は「食品や生活面での物資しか協力できないが、スピードと的確な判断でサポートさせていただきたい」と話した。
民間企業との生活物資供給協定締結はコープながのに続き2件目。駐車場使用は初。 -
【記者室】大雨の被害、今後も注意を
天竜川決壊、土石流発生、橋落下、床上・床下浸水…。15日からの梅雨前線豪雨により上伊那の各地でも被害が拡大している。今なお避難生活をしている住民も多く、疲労も増し、不安な日々が続いている▼災害発生直後は、「天竜川が決壊するとは思わなかった」「土石流が来て、もう慌てて逃げた」と、住民も恐怖や不安の色を隠せない様子だった。災害対策本部の設置が続く自治体では、被害を最小限に食い止めようと、災害場所の応急復旧作業、避難住民への対応、情報収集など対策に追われている▼大雨により地盤がゆるんでいるため、土砂災害発生の危険性も高まっている。とにかく被害が拡大しないことを祈るばかり。土砂災害には十分警戒を。(村上記者)
-
大わらじ3基を補修
第34回伊那まつりのオープニングパレードで担ぐ大わらじの補修が20日、旧青果市場で始まった。伊那市高齢者クラブ連合会伊那地域の役員約20人が交代で補修に当たる。
わらじは長さ6メートルが1基、2メートルが2基。傷みは少なく、わらじを乗せる台座の紅白ひもの巻き直したり、たわらをすえ直した。当初、3日間の作業日程を組んだが、2日間で終了する見込み。
久保田泰男会長(79)は「紅白ひもを巻き変えると、見違える。いよいよまつりが近づいてきたという感じ」と話した。
小わらじ1基は20日、市役所の市民ロビーで開いている伊那まつりのグッズ展に展示する。
「伊那まつり」のオープニングパレードは5日午後4時半から。市職員が担ぐ予定で、春日公園下交差点縲怦ノ那北駅前交差点を練り歩く。 -
歩行者用の殿島橋の橋脚が落下
梅雨前線の影響で、通行止めになっていた伊那市の殿島橋(歩行者専用)の橋脚が20日、一部落下した。
殿島橋は天竜川にかかる橋で、61(昭和36)年に建設。東春近と西春近を結ぶ延長約220メートルで、幅員6メートル。91(平成3)年、上流に春近大橋を架け、歩行者専用として使っていた。
近くに住む女性(74)は「橋げたまで水が来ていて、びっくりした。いくら古いとはいえ、壊れるなんて」と話した。
県は7月上旬から、老朽化に伴い、殿島橋の架け替えについて検討するワークショップを開いたばかりだった。
殿島橋は春富中学校生徒らが通学するほか、橋上イベント「春近どんぴちゃ祭り」にも使っていた。 -
上伊那の交通情報(20日午後4時半現在)
伊那市役所に20日朝、道路の通行止めなどの交通情報の問い合わせが相次いだ。
中央道や農道が通行止めで、国道153号線などにう回。出勤時間を中心に、渋滞した。
市役所には午前6時縲・時、出勤時間に合わせてか、通行止めの個所を確認する電話がひっきりなしにかかった。
伊那市は、市ホームページで「伊那市緊急災害情報」を提供している。20日朝、約7千件のアクセスがあった。
上伊那関係分の交通情報は次の通り。
【通行止め】
◇中央道▽駒ケ根インターチェンジ縲怏ェ谷ジャンクション
◇国道▽361号線(権兵衛トンネル)▽153号線(辰野宮所、うとお峠、箕輪バイパス)
◇県道▽中山松倉線▽伊那北殿線(ニシザワ双葉店縲怎}ルタ工業付近)▽殿島橋▽車屋大久保線
◇市町村道▽稲持大松河原線▽西部1号線(諏訪形付近)▽吹上大泉新田河原線(いずみ橋縲恍・R稔さん宅)▽棚沢川南線【片側通行】
◇国道▽361号線(高遠駅前)
◇県道▽下諏訪辰野線▽諏訪辰野線(有賀峠)▽伊那辰野線
◇市町村道▽野底手良線(野底公民館縲恂枕L箕輪線交差点)
【JR飯田線運休】
◇伊那新町縲怏ェ谷間
【高速バス運休】
◇飯田・駒ケ根・高遠縲恊V宿◇飯田縲怏。浜◇飯田縲恍キ野
中央道通行の無料措置
諏訪IC縲怏ェ谷IC
中央道諏訪インターチェンジ(IC)縲恍キ野自動車道岡谷ICの区間で20日午前11時から、通行料金の無料措置がとられている。期間は当分の間。
諏訪湖の水位が上昇し、諏訪湖周辺が冠水したことで、国道20号の諏訪市の上諏訪駅前付近が全面通行止めとなった。そのため、中央道、長野自動車道をう回する車両に対して通行料金の無料措置をとった。
対象車両は諏訪IC縲怏ェ谷IC間の通行で、当該区間を越えた場合は適用にならない。
問い合わせは、国交省関東地方整備局長野国道事務所(TEL026・264・7001)へ。 -
伊那消防組合議会
伊那市など4市町村でつくる伊那消防組合議会の臨時会が18日、伊那市役所であり、議長に小林信氏=同市議会員=を選任。そのほか、消防ポンプ自動車の取得など5議案を原案通り可決、承認した
06年度一般会計第1回補正予算は206万円を追加し、歳入歳出予算の総額は、それぞれ12億115万。組合構成市町村議員のソフトボール大会中止に伴う予算の減額や、救急救命士の薬剤投与講習などにかかわる負担金の増額などの内容とした。
監査委員の辞職に伴い、井上富男氏=アルプス中央信用金庫常務理事総務部長=を選任。任期は4年。
箕輪消防署に消防ポンプ自動車1台を更新。価格は2698万円で、12月に配備予定。 -
「おいしいが量は多め」
中川村の中川西小学校で18日、1年生(17人)の保護者を対象に、給食試食会を開いた。児童と同じ物を食べ、給食の内容や量、味付けを舌で感じ、食べている時の様子を観察した。
この日の献立はご飯、ビビンバ、中華スープ、笹かまチーズ、牛乳、プラム。
児童らはきびきびと、給食室からご飯や牛乳を運び、お母さんたちに手伝ってもらいながら、手早く配膳した。
配膳し終わったところで、当番の児童が「手を合わせて、ご一緒にいただます」とあいさつ、一斉に食べ始めた。
保護者らは「おいしい、味付けもちょうどいい」「おいしいが、1年生にはちょっと量が多いのでは」などの感想を述べていた。 -
国道152号線 崩落が車を直撃
18日午後8時10分、伊那市高遠町片倉の国道152号線で、土砂崩落が発生したとの通報が高遠総合支所にあった。この災害で通行中の軽自動車1台が土砂に押し流されたが、運転手の男性(28)=同市=にけがはなかった。
現場は杖突峠から同市へ2キロの地点。崩落は茅野市方面へ向かって左側の斜面で、長さ100メートル、幅20メートルが崩れ、道路幅員7メートルを埋めた。
国道は全面通行止めとなり、19日午後12時35分、交通規制を解除した。 -
上伊那教育会講演会で働かない若者支援について考える
06年度上伊那教育会講演会が15日、伊那市駅前ビル「いなっせ」であり、フリーター問題の専門家として数々の著書を出版している長須正明さんが「日常生活から考えるキャリア・デザイン縲恂「来を担う若者を地域・社会で育てる支援のあり方縲怐vについて講演した=写真。県教職員組合上伊那支部、上伊那PTA連合会主催。
長須さんは、若者が働かない理由で最も多いのが「病気、けが」であることを示し「精神的な病気などで働きたくても働けないのが実情。メディアが伝える『働けるけど働かない』という若者は一部」と語った。また、こうした精神的な問題を抱える若者には「就労」という形で地域とのつながりを持たせていくことが社会の役割と指摘。
現代は何らかのハンディキャップを持つ者が生きにくさを感じることも多いが、どんな状況でもそれぞれができることはあり、日常のさまざまな活動を「仕事」や「生きること」としてとらえなおすことがキャリア教育であるとした。 -
【郷土史研究家 田中清文さん】
『駒ケ根の貞治仏』『郷土の石工竏樗・・・Z』『高遠石工石匠列伝』など著書は6冊にもなる。現在は『邪馬台国への旅路』と『伊那谷の石工I』『同II』の続編を構想中。
「書きたいことは頭の中にたくさん詰まっているが、ここのところ古道の研究に忙しくてね。なかなか手がつかずにいるところなんですよ」
◇ ◇
「郷土史の研究に携わるようになったのは小学生時代の土器拾いがルーツ」という。
小学校4年生の時、国語の教科書に上野原遺跡で子どもたちが石器や土器を拾う話があって興味を引かれた。同級生が「うちの畑からも土器が出た」と言うので見に行くと見事な文様の土器を見せられた。
「縄文中期の物でしょうね。素晴らしい文様に魅せられた」
それからというもの、あちこちで土器を探し出してはせっせと博物館に持って行き、学芸員らに見てもらった。
「横穴を掘って行くいわゆる『たぬき掘り』だけど、どんどん続いて出てくるから面白くてね。郷土研究会とはそのころからの縁です」
20歳代のころ農業構造改善事業による工事が各地で行われ、土器などが次々に発見されるようになると「田中に聞けば分かるだろう」と多くの緊急発掘調査に駆り出された。
◇ ◇
卑弥呼の墓と邪馬台国についても深く興味を持ち、足掛け8年間九州に通って調べた結果、邪馬台国は考えられているほどスケールの小さな国ではなく、博多湾沿岸から卑弥呼の宮殿があったと思われる現在の都城市にかけての広大な地域である竏窒ニする「九州縦貫広域説」を打ち出した。
「机上の研究者は地図だけを見て考えるから判断を誤る。現地に足を運んでみなければ分からないこともあるんですよ」
一昨年からは郷土研究会で三州街道、古東山道と令制東山道、春日街道などの研究に取り組んできた。現地調査がほぼ終わり、研究成果をまとめて「私たちが探索した伊那谷の古道」として9月縲・0月に駒ケ根市立博物館で展示することにしている。
「道というのは大切なもの。古道を調べていくことによって当時の暮らしの様子までが分かる。本当ならもっともっと時間をかけて調べたい。道とはいかなるものか竏秩B現代と比較して追及できれば最高ですね」
「光前寺や大御食神社には研究課題が詰まっている。まだまだこれから調べることがたくさんあります。研究は本当に面白くてやめられないですね」
(白鳥文男) -
宮田村も豪雨被害で浄水場に土砂流入
18日から19日の梅雨前線による豪雨は、宮田村にも甚大な影響を及ぼした。村内各所で水があふれ、5つの小河川が氾濫(はんらん)して土砂が流出。新田区の上の宮浄水場、天竜川漁協の養魚場に被害が出た。北割区では1人が自主避難。土石流警戒の体制も続き、消防団、村職員らが徹夜で監視した。中越区下河原では9・5ヘクタールが冠水し、水田が水没。幸い家屋、人的被害はないが、住民は眠れぬ夜を過ごした。
唐松沢の増水により19日午前5時ころ、村内約3割の水をまかなう上の宮浄水場は大量の石や泥で埋まった。
同日午後3時過ぎには現場で鉄砲水が発生。当時10人ほどが復旧作業にあたっていたが、危うく難を逃れた。
他の水源に切り替えて住民生活への支障はないが、広域水道に増量供給を要請。水が引くまでは復旧は難しいと担当者は話した。
伊那市境の中越区下河原は、天竜川に流れ込む堂沢川が逆流し、同日午前7時頃には一帯が完全に水没。
関係者は「この状態では稲はダメだろう」、様子を見にきた女性は「こんな状態になるなんて」と絶句した。
大久保区前河原でも0・2ヘクタールの水田が冠水した。
長坂沢、真米沢、全昌寺沢と3つの河川で土砂が流出した北割区は、18日夜から区集落センターに対策本部を設置。土石流の危険が高い源ケ洞沢の警戒にもあたった。
避難勧告が出た場合に備えて、同日午後8時40分過ぎに各班長を召集。早めの準備を徹底した。
長坂沢の氾濫が激しくなったのは19日午前7時半頃。人家の前の道路が完全に泥の川となった。
「それまでも水は流れていたが、ゴォーゴォーと音がして、急に泥水になった」と集落センターに自主避難した男性は話した。
桐ノ木沢から流出した土砂は、天竜川漁協のマス養魚場を直撃。18日午後7時頃には施設入口付近の通路が冠水。養殖池にも泥や石が入り、復旧作業は19日午後も続いた。
マスは9月からの採卵に向け、体力をつけている時期。「これだけ濁りが入ったら、被害は出るだろう」と職員は腕を組んだ。
宮田村は18日午後7時に警戒対策本部を設置し、係長以上を召集。午後11時に班体制を組み、消防団とともに夜通し警戒した。 -
駒ケ根市上赤須で道路冠水
大雨で天竜川の水位が警戒水位の2メートル40センチを超えたため、駒ケ根市は19日午前1時、災害対策本部を設置した。午後になって雨は上がったものの、引き続き土砂災害の恐れがあるとして市民に警戒を呼び掛けている。
大雨の影響で19日午前6時25分ごろ、駒ケ根市赤穂上赤須の天竜川吉瀬橋下流約50メートル地点で水が堤防を越えてあふれ出し、右岸の市道I竏・96号線が約50メートルにわたって冠水した=写真。深さは約50センチで、ガードレール上端がかろうじて水面からのぞく程度。市は緊急措置として道路を通行止めにしている。
吉瀬橋下流の蟹沢地区の3世帯7人は1軒の家に集まり、警戒のため訪れた市職員と消防団員らとともに水位の変化や堤防の様子を見守っている。
下平の丸塚公園一帯も全体が冠水した。 -
駒ケ根市幼児幼年教育研究会
駒ケ根市内の幼稚園、保育園、小学校、教育委員会の担当者らでつくる幼児幼年教育研究会は18日、赤穂公民館で06年度研究会を開いた。会員約60人が参加し、赤穂南小学校教頭の塩野入幸隆さんの講演「南小における教育相談について」と聞いたほか、6グループに分かれて意見交換をした。
支援が必要な新入学児童を自律学級でなく通常学級に入れたい竏窒ニいう保護者の意向を受けてどんな話し合いをしてきたかについて塩野入さんは「自律学級に対する偏見などもあるが、学校側の意見の押し付けでなく、保護者と長い期間にわたって辛抱強く話し合うことが、子どもにとって一番良い環境を用意できる道ではないか」と静かに訴えた=写真。参加者は時折メモを取りながら熱心に発表に聞き入っていた。 -
浴衣が当たるクイズ抽選
駒ケ根市の夏祭り「KOMA夏!&ゆかたまつり」のイベントで8日に銀座通りで行われた「浴衣が当たるクイズ」(ゆかたまつり実行委員会主催)の当選者を選ぶ抽選会が19日、商工会館で行われた。応募総数202通のうち正解だった200通の中から、エコーシティー駒ケ岳の社員など報道関係者が当選者5人を選び出した=写真。当選者には浴衣1着がそれぞれ贈られる。当選者の発表は22日に開かれる「KOMA夏!&ゆかたまつり」の特設ステージで午後8時45分に行われる。
クイズの問題は「スピード太郎の肩にある星(☆)マークは右肩? 左肩?」だった。正解は「右肩」竏秩B -
北小河内中村地区で土石流災害
箕輪町北小河内中村地区で19日午前3時30分ころ、土石流が発生し、竹の腰グラウンドから中村の集落を通る町道を大木や土砂が号音を響かせて流れ落ち、土砂は県道伊那辰野線と東西線の交差点まで到達して町道をふさいだ。
18日午後11時35分ころ出水。19日未明に再び出水し、箕輪消防署員、町消防団員、町役場職員が出動。住民の安否確認をしていたところ、水が川のように流れ、続いて土砂が流れ出した。
消防団員2人が打撲程度のけが、78歳と44歳の住民が気分が悪くなり、4人とも病院に収容された。
町は発生と同時に、中村地区の住民に北小河内公民館または南箕輪公民館へ避難指示。地区内の女性は、「こんなの初めて。すごい音がして怖かった」と話し、家族と避難所に向かった。80世帯300人が避難。午前5時50分に全員の避難が完了した。
東西線交差点から集落入り口までの町道11号は、重機やチェーンソーで流木や土砂を片付けたが、住宅から公園までは手のつけようがない状態。被害状況はまとまっていない。 -
前沢川の土砂災害
伊那市西春近の前沢川では、土石流が発生し、川周辺にある柳沢集落に、土砂が流れ込んだ。
土砂災害の発生を予期した市は、事前に自主避難を要請。柳沢公民館への避難を誘導したが、午後3時20分に土砂災害が発生したことを受け、6戸に避難勧告を発令し、西春近南小学校への避難を促した。
床上・床下被害があった人家が数戸あり、土砂が流入した農地が冠水。給水ポンプの故障による一部断水があり、給水ポンプを出動させた。
また、前沢川の上を通っている中央道のぼり線には、前沢川上流の土砂や倒木が流入。通行止めとなり、中央道を通ろうとしていた車が一般道へ降りたため、国道153号は上下線とも大渋滞となった。
そのほかにも、猪沢川の氾濫により一帯の水田が冠水した。 -
北小河内避難所の様子
土石流災害に見舞われた北小河内では、宮下、中村などから約12世帯37人が北小河内公民館へ避難。最も被害が大きかった中村集落は、区で全戸避難を促した。
土石流が流れた道沿いに住んでいた50代の男性は「うちの前を自動車が流れ、床上浸水する家や傾く家もあった。ここ何十年もこんなことは無かった。集落全体が避難するのも初めて」と土石流の様子を語った。
また、別の30代女性は「土石流の被害はなかったが、家の横の用水路があふれそうだった。小さい子もいるので避難してきた」と話していた。
中村集落の根橋政幸区会議員は「道がうまく通れない分、それぞれに別れて避難した。寝たきりの人は手分けして連れ出すなど、比較的スムーズに避難できた」と、今回の避難を振り返った。